LIVE SHUTTLE  vol. 180

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トライセラトップス 仲井戸“CHABO”麗市、小田和正が登場したバンド20周年ツアーの締めくくり

トライセラトップス 仲井戸“CHABO”麗市、小田和正が登場したバンド20周年ツアーの締めくくり

TRICERATOPS ROAR×20 -AFTER PARTY-
7⽉23⽇ 日比谷野外音楽堂

怪しかった雲行きも開演間際には解消して、少し蒸し暑くはあるがアニバーサリー・ツアー TRICERATOPS“ROAR × 20 -AFTER PARTY-”にはもってこいの夏空になった。

前々日の7月21日が、20年前にトライセラトップスが「Raspberry」でメジャー・デビューを果たした記念日で、その日にツアーは無事終了した。それを受けての、ここ、日比谷野外音楽堂でのアフターパーティは、ツアーの“打ち上げ”といった位置付けなのか。と思っていたら、にこやかに登場した和田唱(vo&g,pf)は「パーティなんだけど、本気でいきます」と宣言。何やら期するところがあるらしい。並んで立つ吉田佳史(dr&cho)と林幸治(b&cho)の面構えを見ている限り、2日前のツアー・ファイナルとは違った意味で、バンドの20周年を締めくくる心づもりらしい。和やかな中にも緊張感のあるライブの幕開けとなった。

ロックの殿堂と言える日比谷野音のステージには、ドラムセットとギターアンプ、ベースアンプのみが置かれている。バンドとしては最もシンプルなセットだ。そこにスーツをビシッとまとった3人が立つ。バンドシーンで一目置かれるリズムセクションと、早熟の天才・和田を擁するトライセラトップスは、20年かけてこのステージにふさわしいバンドになった。そのことを自ら確かめるように、アフターパーティはミディアム・テンポのロック「KING OF THE JUNGLE」からスタートしたのだった。

歯切れのいい吉田のドラム、グルーヴィーな林のベース、そして包容力を身に付けた和田のギターのアンサンブルは、堂々と流れる川のようだ。ぶつかり合っては変化し、自由自在に形を変える。キラキラした水しぶきは和田のボーカルとギターで、川底の起伏やごつごつした岩を吉田と林が表わす。「Shout!」、「SECOND COMING」と序盤はゆったりとしたロックナンバーが続く。まだ明るい会場をジワジワと温めていく。そこに焦りは微塵もない。

スマッシュヒット「トランスフォーマー」でガツンと盛り上げた後、吉田と林がいったんステージから去って、和田がアコ―スティック・ギターを弾き始める。インスト・ナンバーはスタンダードの「Over The Rainbow」だ。主旋律に入る前のバース(前唄)もきちんと弾いて、名曲をフルコーラス演奏して拍手を浴びる。間違いなく和田は、テクニックも表現力も兼ね備えた、今のバンドシーンのトップ・ギタリストだ。しかも技術をひけらかすことなく、音楽を楽しみ、ワンフレーズごとにオーディエンスの方を向いて、「一緒に楽しもう」と誘う姿が頼もしい。

続く「Fly Away」は♪虹の向こう側まで♪というラインを持つ曲で、和田が先ほど「Over The RAINBOW」を演奏した意味が明らかになる。心憎いセットリストだ。リズムの2人が戻ってくると、今度は和田がエレピの前に座って、再びトリオで「if」と「ラストバラード」を歌う。めったにライブで取り上げないナンバーを演奏するのは、ファンに対する感謝の気持ちからだろう。

R&Bのリズムに乗って、和田がギターを弾きながらしゃべっていると、ギターの音がもう1本聴こえてきた。だが、ステージに他のギタリストの姿はない。すかさず和田が「最高のゲストが、来てくれてます。大人になったら、こんな人になりたいなと思ってました。仲井戸“CHABO”麗市!」。呼ばれてステージに入ってきたのは、伝説のギタリストCHABOその人だった。そのままCHABOの代表曲「GIBSON」に雪崩れ込む。

ギブソンのギターを手に入れて、あの娘にブルースを聞かせようという痛快なリリックを、和田とCHABOが分け合って歌い、ハモる。和田の英国風の華麗なギター・フレーズと、CHABOの米国風のアーシーなフレーズが、野外ステージで響き合う。

CHABOはRCサクセションのメンバーとして、この野外音楽堂のステージに数々の伝説を刻んできた男だ。「秘密は嫌いだからよ、一緒にやるって周りに言いたいのを、我慢してたんだぜ!」と叫んで、シークレット・ゲストとしての歓びをギターと歌に込めて爆発させる。

「前にCHABOさんとやったとき、CHABOさんが俺達の曲をアレンジして歌ってくれました。何て粋なんだろうと思って嬉しかった。今夜は全員でその曲をやります」と少年のような表情で和田はCHABOにリスペクトを贈る。始まった「NEW WORLD」に、トライセラ・ファンは大喜びだ。吉田も林も遠慮なくロック魂を発火させる。もちろん和田は偉大なブルースマンCHABOと背中を合わせて、思う存分歌い、弾きまくったのだった。

吉田と林のエネルギッシュなリズム・セッションを挟んで、和田がまた一人でステージに立つ。

「俺達の音楽は、J-POP、J-ROCKの王道を行ってないわけで、その音楽を好きになってライブに来てくれるって、凄いことです。俺達が信じたことをやってきて、ここにみんながいる。深い絆を感じます。せっかく20周年なんで、僕のルーツの洋楽をここでやろうと思います。一人でやるのも何なんで、友達を紹介します。“冬”が似合う友達です。誰だかわかるかな?」と和田はいたずらっ子のようにオーディエンスに問いかける。「友達なんて言っちゃった。ほんとは大先輩です」呼び込まれたのは、何と小田和正だった。

年末の名物テレビ番組「クリスマスの約束」で、急速に距離を縮めた小田と和田は、2人してアコギを抱え、一昨年、番組で一緒に歌ったマイケル・ジャクソンのメドレー「HEAL THE WORLD~THE GIRL IS MINE」をライブで再現する。途中で吉田と林が合流して、音楽が豊かに膨らんでいく。

和田が先のMCで言いたかったのは、このことだ。J-POPやJ-ROCKは独自の進化を遂げてきたが、日本的な歌詞やダンスビートを強調するあまり、洋楽の持っている優れた和音感覚やグルーヴを忘れている部分がある。そんな音楽シーンにあって、トライセラトップスは我が道を歩んで来た。和田はそれを「王道ではない」と言うが、世界基準で言えば、トライセラこそが王道なのだ。その点において和田と小田は共鳴し、“友達”になり、小田はアニバーサリーのお祝いに駆けつけてくれた。

「野音でライブをやるのは、40年ぶりかな。いろんなアーティストの出るイベントに出て以来で、確かそのイベントにはCHABOも出てたな。トリはGAROっていうグループでね」と、小田が貴重なエピソードを披露すると、和田が続ける。

「それ以来の野音に、俺達が引っ張り出してしまったという(笑)。次は小田さんが俺達の曲に新しいメロディを考えてくれました」と「FEVER」が始まった。

和田の歌うメインのメロディに対して、小田は感じたままにカウンター・メロディを歌う。元のメロディをよく知っているオーディエンスだからこそ、その素晴らしさと小田の愛情を感じ取って、セッション中にリアルタイムで拍手を贈る。この奇跡のハーモニーもまた“野音伝説”のひとつとして、今後、語り継がれていくことだろう。

「小田さんとCHABOさんを、同じステージに立たせてしまったぜ」と和田が叫ぶ。トライセラの倍以上のキャリアを持つ大先輩2人が、この夜のステージに立った意味は大きい。“静”と“動”というステレオタイプの対比では語れない。ワイルドとリリカル、パッションとハーモニーなど、音楽の多様な魅力をシーンに示してきた2人が祝福にやって来たトライセラは、その両方を受け継ぐ存在なのだ。彼らの孤高と、オリジナリティの高さを具現化した、驚くべきゲスト陣のパフォーマンスだった。その意義を良く知っている和田は、だからこそオープニングの挨拶で「本気で行きます」とピリッとした緊張を伝えたのだった。

「オーケー、まだ踊る体力、残ってますか?」と和田が訊くと、もちろんオーディエンスは大歓声を上げる。ここからトライセラはアップなロックナンバーでたたみ掛ける。ラストは「GOING TO THE MOON」で、オーディエンスたちとアニバーサリーの喜びを分かち合った。

アンコールで和田が語り出す。

「すっかり夜になりました。今日はいろんな景色を味わえたよ。この40年間のJ-POPやJ-ROCKを引っ張ってきたお2人が、駆けつけてくれたことを誇りに思います。変わらない3人のメンバーでやってこれたことも誇りです。そして、それを好きになってくれたみんなも、俺達の誇りです。これから先も見守ってください。最後に、俺達の歴史の始まりの曲をやります」。

トライセラトップスは、記念すべきデビュー曲「Raspberry」でパーティを締めくくった。J-POPやJ-ROCKにおもねることなく、独自の道を来たことが間違っていなかったことを確信したバンドの未来は、これからもずっと続いていくことだろう。

文 / 平山雄一 写真 / 山本倫子

TRICERATOPS ROAR×20 -AFTER PARTY-
7⽉23⽇ 日比谷野外音楽堂

セットリスト

1.KING OF THE JUNGLE
2.Shout!
3.SECOND COMING
4.GOTHIC RING
5.GROOVE WALK
6.トランスフォーマー
7.【SHO’S SOLO】 Over The Rainbow
8.【SHO’S SOLO】 Fly Away
9.if  
10.ラストバラード 
11.GIBSON w/CHABOさん
12.NEW WORLD
13.SMOKE
14.ロケットに乗って
15.HAYASHI&YOSHIFUMI GROOVE
16.HEAL THE WORLD〜THE GIRL IS MINE
17.FEVER
18.スターライト スターライト
19.⾚いゴーカート
20.GOING TO THE MOON
ENCORE
21.Believe The Light
22.Raspberry

トライセラトップス

和田唱(Vo&G)、林幸治(B)、吉田佳史(Dr)により結成。1997 年、シングル「Raspberry」でメジャーデビュー。胸を締め付けるラヴソング、ロックの苦悩に刃向かうようなポジティブなリリック、そしてたった 3人で演奏しているとは思えないサウンドと、リフを基調とした楽曲は、良質なメロディセンスとライブで培った演奏力により、唯一無二の存在感で新たな可能性を拡げ続けている。多くのミュージシャンにもリスペクトされている国内屈指の3ピース・ロックバンドである。また Vo&G の和田唱は、SMAP、藤井フミヤ、松たか子、Kis-My-Ft2、SCANDAL などへの作品提供も多数あり、ソングライターとしても評価を集めている。2017 年、メジャーデビュー 20 周年を迎えた。
オフィシャルサイトhttp://triceratops.net

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