映画『銀魂』  vol. 4

Interview

原作の世界観との親和性。「銀魂」の監督が 福田雄一でなければならなかった理由(わけ)

原作の世界観との親和性。「銀魂」の監督が 福田雄一でなければならなかった理由(わけ)

ギャグやパロディのセンスが極めて近い──空知英秋と福田雄一それぞれのファンは、ずいぶん前からそのことに気づいていた。ゆえに、中々叶わずにきた実写化企画も、福田が手がけるのであれば実現するかもしれない、と希望を託していた人も多かった。その願いが通じて、晴れて両者のカップリングが成立する。今回は「銀魂」と〝福田ワールド〟が、まるで運命の糸にたぐり寄せられるようにして邂逅を果たすまでと、豪華なキャスティングにまつわるエピソードを、福田監督と松橋真三プロデューサーに聞いた。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 荻原大志


幸せな偶然が連続して起こって、実写化が現実になった

「銀魂」をご覧になった佐藤二朗さんから福田監督に「面白かった」というメールが来たそうですが、初めてのことだと聞きました。

福田雄一 そうなんですよ! ずっと観ながら、「これ、福田が撮ってないんじゃないか?」と思っていたって言うんです。「二朗さん、現場にいたでしょう?」と返したら、「ギャグパートは福田が撮って、ほかのところは別の監督に任せたんじゃないか?」って(笑)。

二朗さんがそうおっしゃったのも、監督をはじめ関わった方々が原作の世界観を大切になさったからではないか、と感じました。

福田 本当に「銀魂」の大ファンになっちゃったんですよね、僕自身が。何しろ、僕の好きな要素が詰まりまくっていますから。銀ちゃんという主人公像も大好きだったりするので、ちょっと(配給の)ワーナーさんには……夏の風物詩としてですね、お正月に「寅さん」や「釣りバカ日誌」の新作が毎年公開されたように、夏が来ると「銀魂」が──くらいの感覚でどうでしょうひとつ、くらいのお話をしたいですね、松橋さん!

松橋真三 まぁ、原作の尺を考えると、いくらでも続編はつくれるでしょうけれども……私が何か言うとアレですので(笑)。

福田 もちろん、メリハリはつけます。たとえば「銀魂2」はこれでもかってくらいにフザけて、「銀魂3」は心を入れ替えてシリアスなものをつくって、また翌年には怒られるくらいバカバカしいのを、というように1年おきにですね、奇数回はマジメな話で偶数回は低予算でフザけるというシリーズにしたらどうかな、なんて(笑)。

©空知英秋/集英社 ©2017映画「銀魂」製作委員会

それはちょっと新機軸ですね。

福田 僕ね、「銀魂」のファンの方々にひとこと言わせていただきたいんですよ。実写版をヒットさせないと、「銀魂」の新作を観られなくなりますよ、と。原作の完結もそう遠くないですし、ということはアニメも終わってしまうというわけで、あなた方は「銀魂」ロスになってしまいますよ、と。そうならないためにも実写版「銀魂」がソフトとして残るようにですね、映画館へ行きましょうよ、と声を大にして言いたいです! ここ太字にしてくださいね(笑)。

松橋 でも、どうします? 「俺たちの観たい『銀魂』はこれじゃない」という反応だったら……。

福田 いやいやいや! これだけは自信をもって言っちゃいますけど、僕は「銀魂」ファンのツボを絶対にはずさないですから。それは(原作の)空知さんと話していて確証を得たんです。

あらためて言うまでもないですけど、「銀魂」の世界観と〝福田ワールド〟の親和性の高さは、誰もが認めるところだと思います。

松橋 それは紛れもないですよね。

福田 もともと、お互いの作品を全然知らなくて、でも恥ずかしいくらい似ているんですよ! ただ、それはすごく幸せな出会いだったなと思います。

松橋 まだ映画化の話が上がるずっと前から、福田さんのファンの方がツイッターで福田さんのアカウントに「銀魂」を撮ってほしいというリプライを送っていたんですよね。

福田 松橋さんからのオファーは「ワーナーで何か撮りませんか?」という、実にフワッとしたものだったんですよ(笑)。ただ、僕はマンガも本も読まないもので、「この原作なんてどうですか?」っていう提案ができなくて。それで、ふとツイッターのことを思い出して、「なんか『銀魂』というマンガを実写化するなら、僕がやるのがいいらしいです」と、ものすごいカーブをかけながら松橋さんに投げたのが始まりだったんです。

松橋 そうそう、カーブかかってました(笑)。

左:福田雄一監督 右:松橋真三プロデューサー

福田 で、最初に松橋さんから「ちょっと連載が完結するまで実写化は難しいみたいです」という答えが返ってきたわけですけど、代案がまったく浮かばなくて。「うわ〜、ちょっと何か考えます」って言って悩んでいる間に、なぜか許可が下りたんですよ。

松橋 私たちの前にも実写化のオファーは何度かあったようですが実現せず、集英社さん的にも「難しいでしょう」という見立てだったんです。ただ、私の持っていった企画書を預かっていただいて、担当の方が空知先生のところに持っていってくださったんですね。そのとき、先生が「実写化できるのは福田雄一ならできるかも」と、おっしゃったそうで。そしたら、私の書いた企画書に福田さんの名前があって……「この話は可能性ありかもしれません」という第一報が返ってきたんです。そこから急いで準備しましょうと態勢を整えて、福田さんに準備稿を書いてもらったわけです。

福田 これはあとから聞いたんですけど、「勇者ヨシヒコ」が始まる時、空知さんと担当編集の方は鼻で笑っていたそうなんですよ。
「なんだ、このコスプレ丸出しな感じは(笑)」って。ところが、見てもらううちに「この人だったら『銀魂』もいけるかもね」と評価してくれたと聞いて……うれしかったですね。

お互いに呼び寄せた、みたいなところがありそうですよね。

福田 今となっては運命としか思えないんですけど、実は僕もちゃんと見るまでは「銀魂」を敬遠していたんですよね。僕のオリジナルである「ヨシヒコ」と“作風が似てる”と言われるのは心外だぞ、と。だから、意地でも見ねえぞと思っていたんですよ。
ところが、(CSチャンネルの)「キッズステーション」を点けておくとご機嫌になる次男が、ある日寝落ちしちゃって。そしたら、始まってしまったんですよ、「銀魂」の5話連続一挙放送が! それまで頑なに遠ざけてきたのに不可抗力で見てしまったんですけど、確かに作風が近いと言われても仕方ないなと。それが面白くなかったら噴飯ものですけど、まぁ面白いわけです。これでもまだ「いや『ヨシヒコ』の方が面白いし〜」なんて言ってたら、だいぶ大人げないなと思って(笑)。そんなふうに受け入れたら、松橋さんからのお話がきたという……いま思うと幸せな偶然が連続して起こって、実写化が実現したというわけです。

©空知英秋/集英社 ©2017映画「銀魂」製作委員会

まさに運命的だったわけですね。

福田 そこからアニメを1話から全部見直していったんですけど、パロディとするもののターゲットが笑っちゃうくらい空知さんと同じなんですよ。ある小ネタがあって「あ、これ俺すでに『ヨシヒコ』でやってるし〜」って思ったりもしたんですけど、よくよく考えてみたら、「銀魂」の方が全然早いんですよ。「うわ〜! これ『ヨシヒコ』がパクったって見られてたんだろうな〜」って、汗かきました(笑)。
そのくらい、目の付け所が同じなんです。だから、実写版で僕のオリジナルのパロディーとかネタを足すことに、何の違和感もなかったんですよね。僕俺が面白いと思うものは絶対に空知さんも面白いと思うはずだし、空知さんのファンも面白いと思うはずだと。そこはまったく躊躇がなかったです。

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