LIVE SHUTTLE  vol. 182

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ゴスペラーズ 原点回帰とラブソングへのプライドに溢れた、純度の高いツアー

ゴスペラーズ 原点回帰とラブソングへのプライドに溢れた、純度の高いツアー

ゴスペラーズ坂ツアー2017 “Soul Renaissance
2017年7月8日 東京国際フォーラム ホールA

今回のツアーのテーマであるニューアルバム『Soul Renaissance』は、かつてゴスペラーズが2000年にリリースしたアルバム『Soul Serenade』に表われていた1990年代のブラック・ミュージックを、2017年型に進化させてみようという意図の元に制作された。今、ラブソング全盛のJ-POPシーンだが、そのほとんどは“精神的ラブソング”で、90年代にあった“肉体的ラブソング”や“情熱的ラブソング”が少なくなっている。そう感じたゴスペラーズは、その復権を目指してアルバム『Soul Renaissance』を作り、ツアーに出たのだった。

ツアーの終盤戦を東京国際フォーラム ホールAで観た。ライブが生々しいのは当たり前だが、今回のゴスペラーズのステージには実に生々しい“ラブソング表現”があふれていた。それはラブソングのスペシャリストとしてのプライドと、自分たちの原点を再確認しようというメンバーのエナジーが交錯する、純度の高いライブだった。

ステージの中央には大きな額縁が設置され、その中にメンバー5人のルネッサンス風の絵画がセットされている。ラジオ・ボイスのイントロから「ようこそ“Soul Renaissance”ツアーへ」というメンバーの声とともに軽快なバンド演奏がスタート、一瞬暗転になりステージが明るくなると、絵画が振り落とされ額縁の中に本物のメンバーがいた。もちろん会場はドカーンと盛り上がる。

オープニングの「GOSWING」からメンバーは歌い、踊りまくる。迷いなく飛ばす。ドラムの短いフィルインでつないで、「PRINCESS☆HUG」へ。キーボード佐藤雄大のイントロのシンセの音色が、90年代の音楽シーンを彷彿とさせる。ギタリスト田中“TAK”拓也のギターのコード・カッティングも、小気味よく、鋭い。メンバーを一新したバンドは、軽い音色でへヴィーなグルーヴを繰り出す。僕は神奈川県民ホールでこのツアーの序盤を観たが、その時とは比較にならないほどサウンドがまとまっていて、新バンドに変えた意図がはっきりと伝わってくる。ゴスぺラーズの追求する21世紀のリアルなラブソングを包むのは、この音なのだ。

その意図は次の「暁」で、さらにはっきりした。イントロのコーラスの後、村上てつやが客席にハンドクラップを求めながら、「カモーン!」と叫ぶ。ニューソウルの乾いたエモーションで貫かれているこの曲は、盛り上がるポイントが非常に難しい。荻野哲史のグルーヴィーなベースと、ピンポイントで鳴る杉野寿之のスネアドラムの組み合わせが絶大な効果を発揮して、ジワジワとリズムが熱くなっていく。そこに5人の洗練されたボーカル・ハーモニーが加わって、クール&ホットな“矛盾が魅力のサウンド”が生み出されていた。このテイストはゴスペラーズ史上初めてといっていいもので、このツアーの大きな収穫だろう。このテイストを拡大したシークエンスがこの後に待っているが、それはまたその時にレポートすることにしよう。

4曲目は一転して、『Soul Renaissance』からのスウィートなバラード「Dream Girl」。低音の効いたピアノに乗って歌い上げる黒沢 薫、転調後にきっちり盛り上げる村上のボーカルが、見事な正統派のソウル・マナーを演出していた。

「こんばんは、ゴスペラーズです。満員御礼、ありがとうございます。まずは自己紹介を」と村上が言って、酒井雄二からひと言ずつ挨拶する。

ここからはツアーのメインテーマである生々しいラブソングの連発コーナーで、ステージ左側の椅子に安岡 優が座り、右側の椅子に北山が座る。セクシーなリリックの「All night & every night」が始まった。オーディエンスも「angel tree」、「星降る夜のシンフォニー」など、座ってじっくり聴き入ったのだった。

一度、落ち着いた会場に、今度は最新型のゴスペラーズがプレゼンされる。酒井がステージ中央に“ルーパー”という機材をセットして、次に行なうパフォーマンスの紹介をする。ルーパーは楽器や声をループさせるエフェクトで、まずは実演してみせる。酒井のボイス・パーカッション、黒沢と安岡のタイプの違うギター・フレーズ、北山のベースなど、5人が次々にリズムのフレーズを録音し、それをループさせてインスタント・トラックが出来上がる。

いわば“音楽の遊び”と言えるこの作業に、酒井は機材をよく知らないオーディエンスを笑わせながら巻き込んでいく。その軽妙な運びは、天下一品だった。これだけ音楽的なネタでエンターテインメントできるアーティストは滅多にいない。しかも、このループを使って始まった「侍ゴスペラーズ」で、完全に“ルーパーの世界”を会場の隅々にまで行き渡らせる。

もともと「侍ゴスペラーズ」は初期の代表曲で、DJとゴスペラーズの5人で演奏するのは90年代当時の最新のライブ・スタイルだった。まだアカペラも馴染みのない時期に、DJを投入する大胆不敵。それを今の最新機材のルーパーでやってみせるのも、同じく大胆不敵な試みだ。彼らが今回、掲げた「原点を振り返る」というテーマにも沿った構成は、さすがだった。

そしてルーパーを使って今回、レコーディングされた「Recycle Love」が、さらに素晴らしかった。様々な資源が枯渇する現代で、 “愛”までも枯れてしまうことがわかった世界を歌った、ブッ飛んだ歌詞を持つこの曲は、5人の声を“デザイン”するという実験的なことをやりながら、新しいラブソングとして機能させる驚きの名曲。まさにゴスペラーズにしかできないナンバーだ。まるでレコーディングの過程をステージ上に再現したようなパフォーマンスに、会場から大きな感動の拍手が巻き起こったのだった。この大胆なサウンド実験の後に、「永遠(とわ)に」と「ひとり」という大ヒット・アカペラを配する演出が、本当に心憎かった。

次は『Soul Serenade』からの「MIDNITE SUN」から始まるメロウなナンバーによるメドレーだ。先の「暁」でのクール&ホットなニュアンスと同じ味わいのある過去のナンバーに、この新しいバンドで改めてチャレンジするコーナーだ。長いキャリアの中で、ある意味“やり残したこと”はいやおうなく生まれる。それをアップデートするチャンスがあればトライするのは、自分たちの音楽に対する愛情の発露だ。今回のゴスペラーズのこのトライは、バンドマスター本間将人のサックスなどによって、かつての“やり残したナンバー”が新たな形で聴こえてきたのだった。

さてここから終盤の盛り上がりに突入する。ニューアルバムでは盟友RHYMESTERをフィーチャーした「Hide and Seek feat. RHYMESTER」は、『Soul Renaissance』で最もスピード感のあるナンバー。「Unlimited」~「Get me on」、「FRENZY」などライブで人気のアップなナンバーを立て続けに歌って、会場はいよいよ熱くなっていく。

「ツアーは2年ぶり、アルバムは2年半ぶり。その間、次のステップを考えてました。もっと音楽を作りたいという気持ちのままに、アルバムを作り、ツアーに出ました。それが皆さんにとって、何かしらの力になれば嬉しいです」と村上。

ゴスペラーズのライブの構成に大きな影響を与えたシアトリカルツアーのひとつ“アカペラ街”から生まれた名バラード「星屑の街」が歌われる。オーディエンスは、まるで吸い込まれるように、精緻な5人の歌声に耳を傾ける。アップチューンとスローチューンのバランスが非常にいい。続く「Liquid Sky」の途中からバンドが入り、最後は天井のミラーボールが回って、再びダンスチューンの「Fly me to the disco boll」で締めた。

アンコールは村上が「心を込めて歌わせてください」と言い決意を込めて「reborn」を歌う。ラストの「誓い」を歌って、メンバーは額縁の中へと去っていった。

キャリアを踏まえた手堅さと、ベテランにして身に付けた大胆さが拮抗して、大成功のライブとなった。ゴスペラーズはボーカルグループとして前人未到の道を、これからも進んでいく。

文 / 平山雄一
撮影 / ©水島大介

ゴスペラーズ坂ツアー2017 “Soul Renaissance
2017年7月8日 東京国際フォーラム ホールA

セットリスト

1.GOSWING
2.PRINCESS☆HUG
3.暁
4.Dream Girl
5.All night & every night
6.Silent Blue
7.angel tree
8.星降る夜のシンフォニー
9.侍ゴスペラーズ
10.Recycle Love
11.永遠(とわ)に – a cappella ‐
12.ひとり
13.Mellow Medley 2017
(MIDNITE SUN~ t.4.2.
~ I LOVE YOU,BABY ~ Body Calling)
14.Deja Vu
15.Let it shine
16.Hide and Seek feat. RHYMESTER
17.Unlimited ~ Get me on
18.FRENZY
19.星屑の街
20.Liquid Sky
21.Fly me to the disco ball
EN1.reborn
EN2.誓い

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ゴスペラーズ

北山陽一、村上てつや、黒沢 薫、酒井雄二、安岡 優。
1991年、早稲田大学のアカペラ・サークル<Street Corner Symphony>で結成。1994年8月15日、ファイルレコードよりミニアルバム『Down To Street』をリリース。メンバーチェンジを経て、1994年12月21日、キューンレコードよりシングル「Promise」でメジャーデビュー。2000年8月リリースのシングル「永遠(とわ)に」、10月12日リリースのアルバム『Soul Serenade』が、記憶に残るロングセールスを記録しブレイク。2001年3月7日リリースのシングル「ひとり」が、アカペラ作品としては日本音楽史上初のベスト3入りとなる。
2001年6月6日にリリースされたラヴ・バラードのコレクション・アルバム『Love Notes』が大ヒット。ミリオン・セールスを記録する。以降、「星屑の街」「ミモザ」など多数のヒット曲を送り出す。
2004年11月17日には、デビュー10周年を記念した初のベスト・アルバム『G10』をリリース。また、他アーティストへの楽曲提供、プロデュースをはじめ、ソロ活動など多才な活動を展開。日本のヴォーカル・グループのパイオニアとして、アジア各国でも作品がリリースされている。
2014 年12 月17 日には、デビュー20 周年を記念したベスト・アルバム『G20』をリリース。オリコン初登場2 位を獲得。全66公演ゴスペラーズ史上最多公演数の全都道府県ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2014~2015 “G20”」を大成功におさめた。

オフィシャルサイトhttp://www.5studio.net

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