Interview

『関ヶ原』岡田准一が明かす、歴史好きならではの新たな〈三成〉像へのこだわり、名優から貰った役者としての“言葉”とは――?

『関ヶ原』岡田准一が明かす、歴史好きならではの新たな〈三成〉像へのこだわり、名優から貰った役者としての“言葉”とは――?

戦国史上最大の合戦“関ヶ原の戦い”を舞台にした司馬遼太郎の『関ケ原』。このベストセラーを真正面から映画化するという日本映画史上初の試みに、原田眞人監督が挑んだ。映画『関ヶ原』で主人公〈石田三成〉を演じるのは、岡田准一。今作では、これまで厄介者として描かれることが多かった〈三成〉を、“純粋すぎる武将”として描き、岡田は人間味溢れる新たな〈三成〉像を熱演している。
〈小早川秀秋〉を演じた東出昌大に続き、今回は主演の岡田准一が登場。「本音を言うと、7割は完成しないかもしれないと思っていたんです」と打ち明ける今作での撮影エピソードのほか、大好きだという役所広司(〈徳川家康〉役)とは敵役のため現場で話せず寂しかったと語る素顔、さらに大先輩である名優たちから貰った“言葉”について今だからこそ思うことなど、幅広く語ってもらった。

取材・文 / 吉田可奈


歴史好きだからこそのこだわり「自分でも想像していたような真っ直ぐで人間らしい〈三成〉像にしたかった」

映画『関ヶ原』の出演オファーが来たときの心境を教えてください。

岡田 最初に、「原田監督が、『関ケ原』を撮る」というお話を伺い、その時点でワクワクしましたし、僕自身、ずっと原田監督とお仕事をさせていただきたいと思っていたこともあり、ぜひともやらせていただきたいと思いました。とはいえ、司馬遼太郎さんが書いた『関ケ原』を実写映画化すると聞いて、本音を言うと7割ほどは「実現しないかもしれない」と思っていたんです(笑)。

7割もですか!?

岡田 はい(笑)。『関ケ原』は、大規模な戦争映画ですし、登場人物すべての様々な思惑が渦巻く、とても難しい題材だと思うんです。映像化するのはなかなか難しくて、36年前に一度、ドラマで実写化(『関ヶ原』81・TBS)されて以降、一度も映像化されていないんです。でも、僕は原田監督が描く『関ケ原』をぜひとも観たいと思いましたね。

実際に台本を読んで、どんなことを想いましたか?

岡田 原田監督が『関ケ原』を映画化するという構想を思いついてからの25年間、ずっと蓄えてきた知識量に圧倒されました。ここから生まれる『関ケ原』が実現するのであれば、きっとすごいものになるなと感じたんです。

そんな超大作である本作の撮影時と、クランクアップしときはどんな心境でしたか?

岡田 最後は、監督と「撮りきれましたね」って、安堵しました(笑)。この作品は“映画の神”に愛されていたと思います。映画って、なかなか揃うことのないキャストやスタッフがしっかりと揃ったとしても、天候や様々なことが重なって上手くいかないことも多いんです。でもこの映画は、生涯に一度、出来るかどうかわからない題材である『関ケ原』にみんなで挑戦して、戦いながら作っているという感覚が全員の心にあったのが良かったのか、すべてが上手くかみ合いながら、撮影することが出来たんです。

みなさんのモチベーションがすごく良い状態で撮影されていたんですね。

岡田 そうですね。現場は常にハードで、ある意味、戦場でしたけどね(笑)。でも、監督はその場を完璧に作ってくださる監督なので、キャラクターも作り上げられましたし、とても演じやすかったです。

今作で岡田さんが演じる〈石田三成〉は、これまでの時代劇で描かれたような、性格に難がある“厄介者”のタイプとは違った描かれ方をしていますよね。

岡田 僕は歴史が好きなので、これまで多くの作品で脇役として描かれてきた〈三成〉像に、「ちょっと違うんじゃないかな」と思ったこともあったんです。僕自身、これまで演じた役で〈石田三成〉を罵ったこともあるんですが(笑)、実際に“敗戦の将”なので、それは仕方ないことだと思うんです。でも、この映画では〈石田三成〉を軸に描くのであれば、自分でも想像していたような真っ直ぐで人間らしい〈三成〉像にしたかったんです。

確かに、今作の〈石田三成〉からは、人間らしさや人間臭さを強く感じました。

岡田 この映画を観て、「〈三成〉って、そういう人だったのか」と思っていただけるといいな、という想いで演じていたので、それを感じていただけたら嬉しいです。それに、〈初芽〉(有村架純)とのラブストーリーも入っているので、より感情移入しやすいのではないかと思っています。

今回、〈石田三成〉を演じるにあたり、何か特別なことはしましたか?

岡田 お墓参りに行きました。実際にはお墓は公開していないので、現地に連絡させていただき、「〈三成〉役を演じることになったので伺わせてください」とお願いをしたら、特別に許可をいただいたんです。そこでは、「過去に罵ってごめんなさい」と謝って(笑)、「〈三成〉公のイメージが少しでも変わるような役柄なので、喜んでもらえたら嬉しいです」とお伝えしました。

日本映画史に残る名優たちから受けた刺激、役者としての“言葉”

今作では、〈徳川家康〉役の役所広司さんとも共演されていますが、どんな印象を持たれましたか?

岡田 以前、映画『蜩ノ記』(14・小泉堯史監督)で共演させていただいてから役所さんのことが大好きになったのですが、今回は敵役なので、現場でもほとんど近づけなかったんです。岡田准一としては大好きなのに、〈石田三成〉としては大嫌いな〈徳川家康〉の役を演じられているので、「寂しいです」とだけメールを送りました(笑)。

あはは(笑)。とても仲が良いんですね。それにしても、役所さんが演じる〈家康〉はすごく印象的でしたね。

岡田 現場では、かなり自由に暴れていて、楽しそうでした。役作りのために口に綿を詰めるとお話されていたんですが、「喋りづらいからやめた」とおっしゃっていて(笑)。撮影に入る前はマウスピースを作って練習しているらしいと聞いていたので、すごいなと驚きました。以前から演じる役についてかなり勉強をされる姿をお見かけして驚いたのですが、今回もとても刺激を受けました。

岡田さんが劇中で乗っていた馬は、『軍師官兵衛』(14・NHK)の撮影時に乗っていた馬だとお聞きしました。

岡田 そうなんですよ。“バンカー”という馬なのですが、本当に良くできた子で、霧の中や雨の中など見づらくなる場所に入っていくとき以外は、100パーセント、言うことを聞いてくれるんです。ただ、あまりに優秀すぎて、爆破があっても動じないんですよ。なので、わざと手綱を引っ張って驚かせたりしていました。

そんな裏話があったんですね!

岡田 馬は驚いて暴れたら“役馬”としてのトップには立てないんです。なので、当たり前のことなんですけどね。僕とバンカーの相性は体重的にもいいようで、すごく乗りやすいんです。またいつか共演したいですね。

岡田さんは今作の次に木村大作監督の『散り椿』と、時代劇の大作が続きますね。

岡田 そうですね。実は若いときに、先輩方から、「時代劇のできる俳優になったほうがいい」と言われたんです。

その先輩方に、他にはどんなことを教えてもらったのでしょうか。

岡田 「ナチュラルに芝居するのだけが芝居じゃない」「時代劇で演じるときは、自分の強さを大きく演じないと負ける」ということを教えていただきました。そんな言葉をいただく度に「そうなんだな」と思いながら演じてきましたし、他にもたくさんの助言をいただきました。

実際に、時代劇のオファーが立て続けに来るというのは、その助言を具現化しているからなんでしょうね。

岡田 どうなんでしょう……。僕としては、現代劇にも挑戦したい気持ちもあるんですけどね。以前、先輩方に「若いときにいろんな役をやりなさい。年齢を重ねるとその役者についたイメージの役しか来なくなる」と教えていただいたんです。それに、「その芝居に自分が飽きたら終わりだよ」ともおっしゃっていて。その助言を考えると、僕がいろんな役にチャレンジするのは今だと思うのですが、なぜか“軍人”“侍”“社長”の役が多いんです(笑)。もちろん、それはこれまでの積み重ねが実を結んだ結果だと思うので、一つひとつ、取り組むことができて良かったと思っています。これからも、どんな役でも真摯に演じていきたいと思っています。

岡田准一

1980年生まれ、大阪府出身。1995年にV6のメンバーとしてCDデビュー。
ドラマ、映画、ラジオ、バラエティなど多岐に渡って活躍中。2002年のドラマ「木更津キャッツアイ」(TBS)が人気を集め、二度映画化される大ヒットを記録。その他、『SP 野望篇』『SP 革命篇』(10・11/波多野貴文 監督)、『天地明察』(12/滝田洋二郎 監督)、『図書館戦争』『図書館戦争 THE LAST MISSION』(13・15/佐藤信介 監督)などで主演を務める。『永遠の0』(13/山崎貴監督)では零戦搭乗員を熱演し、大ヒットを記録。
2014年には、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」で主演・黒田官兵衛を演じた。
2015年、第38回日本アカデミー賞で、『永遠の0』で最優秀主演男優賞、『蜩ノ記』(14/小泉堯史 監督)で最優秀助演男優賞と、男優として史上初となるダブル受賞を達成。その他の代表作に、『エヴェレスト 神々の山嶺』(16/平山秀幸 監督)、『海賊とよばれた男』(16/山崎貴 監督)、『追憶』(17/降旗康男 監督)など。
2018年公開の映画『散り椿』(18/木村大作 監督)が待機している。
オフィシャルサイト

映画『関ヶ原』

2017年8月26日公開

混乱を極めた戦乱の世。“官僚派”の代表格〈石田三成〉(岡田准一)と“武断派”の武将たちは、〈豊臣秀吉〉(滝藤賢一)が命じた“朝鮮出兵”をきっかけに対立を深めていった。豊臣家への忠義から立ちあがる〈三成〉と、天下取りの野望を抱く〈徳川家康〉(役所広司)。やがて名だたる大名が、〈三成〉率いる“西軍”と、〈家康〉率いる“東軍”に分かれ、後の世で“天下分け目の関ヶ原”と語られる通り、関ヶ原で歴史的節目の戦いに臨むこととなる。〈三成〉と〈家康〉は、いかにして世紀の合戦に向かうのか? そして、命を懸けて〈三成〉を守る忍び〈初芽〉(有村架純)との密やかな恋の行方は……? 権謀渦巻く中、愛と正義を貫き通した“純粋すぎる武将”〈三成〉の戦いが幕を開ける。

【原作】司馬遼太郎『関ケ原』(新潮文庫刊)
【監督・脚本】原田眞人
【出演】
岡田准一 有村架純 平岳大 東出昌大 / 役所広司
北村有起哉 伊藤歩 中嶋しゅう 音尾琢真 松角洋平 和田正人 キムラ緑子
滝藤賢一 大場泰正 中越典子 壇蜜 西岡德馬 松山ケンイチ
麿赤兒 久保酎吉 春海四方 堀部圭亮 三浦誠己 たかお鷹 橋本じゅん 山村憲之介 宮本裕子 永岡佑 辻萬長

【配給】東宝=アスミック・エース

オフィシャルサイトhttp://wwwsp.sekigahara-movie.com/

©2017「関ヶ原」製作委員会

【関ケ原 原作本】

関ケ原(上)

司馬遼太郎(著)
新潮文庫

関ケ原(中)

司馬遼太郎(著)
新潮文庫

関ケ原(下)

司馬遼太郎(著)
新潮文庫

関ケ原(上中下) 合本版

司馬遼太郎(著)
新潮文庫