Interview

大原櫻子が秦 基博との化学反応を語る「マイ フェイバリット ジュエル」

大原櫻子が秦 基博との化学反応を語る「マイ フェイバリット ジュエル」

大原櫻子が前作「ひらり」から5ヵ月ぶりとなる通算7枚目のシングル「マイ フェイバリット ジュエル」をリリースする。今曲で作詞・作曲・プロデュースを手がけたのは、シンガーソングライターの秦 基博。大原にとってはアーティストのプロデュースを受けるのは今回が初めて。2014年の『FNS歌謡祭』で秦の代表曲「ひまわりの約束」で共演して以降、ライブに足を運ぶなど、交流を深めてきた2人は、どんな化学反応を見せたのか──。今年の5月に上演された初の主演舞台『Little Voice(リトル・ヴォイス)』の公演中から制作に取りかかっていたという彼女に、最終日に秦が駆けつけたレコーディングの裏話を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 冨田望


微妙なニュアンスを表現できたら、秦さんと私らしさの両方が出るんじゃないかなと

初の主演舞台『Little Voice(リトル・ヴォイス)』を終えた感想から聞かせてください。ジュディ・ガーランドやマリリン・モンローの名曲を本人そっくりにマネて歌える主人公として、毎日、舞台に上がって歌う日々が2週間続いたわけですよね。

いろいろハプニングもありましたし、喉の負担も大きかったんですけど、あの2週間を乗り越えられたことは自信にも繋がっていて。本当にいい経験をさせていただいたし、自分の人生のキーポイントになったなと思います。

どんなポイントになってますか?

音楽に対する価値観が変わったと言いますか……往年のスターの曲を歌わせていただくことで、音楽の深さもより知ったし、もっともっと自分も勉強していかなきゃいけないなと思ったし、意識はすごく高まりました。特に、内面ですかね。例えば、エディット・ピアフの「水に流して(Non, je ne regrette rien)」は本当に何もかも失ったときに出てきた歌ですが、自分にはそういう経験はないので、あくまでも想像でしかないんですけど、どういう感情だったのかという想像を詰めていくという過程は、ちょっと言葉では言い表しにくいんですが、本当にすごく、いい経験になったなと思っています。

じゃあ、シンガー大原櫻子としても大きく変わっていきそうですね。

そうですね。ただ、今回のシングルは舞台が始まる前からやりとりしていたものなので、具体的な変化はきっと次のシングル以降で出るんじゃないかな、と思います。リトル・ヴォイスを完全に演じ切ったあとに出る作品で、自分としてはどんな色に変化しているのかが楽しみです。

でも、秦 基博さんが作詞・作曲・プロデュースを手がけた「マイ フェイバリット ジュエル」からすでに変化は感じるんですよね。とても地に足が着いた大人っぽい表情になっています。

それは、秦さんのおかげだと思います。秦さんは私の歌声にある「ポジティブで明朗な響きと、憂いや寂しさの滲む情感をイメージした」と言ってくださっていて。リトル・ヴォイスはまさにそんな女の子でしたし、大原櫻子の人間的な部分まで見てくださっていたのがすごく嬉しかったです。

もともとはどんな経緯でコラボすることになったんですか?

音楽番組でご一緒する機会が何度かあって。もともと秦さんの曲のファンでもあったんですけど、『FNS歌謡祭』で「ひまわりの約束」をコラボさせていただいて、ご縁があるなって感じていたとき、ちょうど1年前くらいですかね、秦さんが曲を書いてくださるかもという話になって。半年前くらいに曲が出来て聴かせていただいたんですが、「秦さんぽいな」という第一印象で、「私が歌ったらどうなるのか?」という想像がなかなかつかなくて。ただ、いい化学反応が生まれるんじゃないかというワクワクも同時にあって。最初は作曲だけという話だったんですけど、私から「秦さんが書かれる、人の想像力を掻き立てるような歌詞が好きなので、もしよかったら書いていただけないですか?」とお願いしたら、引き受けてくださって。そんな流れで、1年前の話がようやっと今に繋がった感じです。

曲をお願いするときは何かリクエストはしました?

秦さんに染まりたいと思っていたので、お任せ状態でしたね。そのあとで、歌詞付きのデモをいただいて。いつもは突き上げる系というか、爽快に、弾けるように歌い上げる曲が多かったなかで、しっとりというか、微笑んで寄り添う感じの楽曲だなって感じました。落ち着いている雰囲気というか、余裕のある感じが私にとっては初めてに近い感覚だったので、「新しい引き出しを開けてくださったな」って思って嬉しかったです。

秦さんが書かれる、人の想像力を掻き立てるような歌詞が好き

痛みや悲しみも歌ってますよね。

そういうところもすごくいいなと思いましたし、そういう音楽をどんどん届けていきたいなと思ってもいて。個人的にはAメロの「散歩している犬」というワードが好きで。小さい幸せをたくさん挙げている中に、まさか、散歩しているワンちゃんを取り入れるとは思わず、可愛いらしいなって胸を打たれました。あと、最後の「よろこびの中に/悲しみの先に/わたしだけの幸せがあるから」という歌詞も共感できる。いままでに自分が経験してきたなかにもあったなと振り返られる一文だなって思いました。

どんな経験を思い起こしました?

ツアーですね。ツアーって、一回一回のステージでそれまで積み上げてきたものを発表して、最後には必ず終わりがくるじゃないですか? そのセットリストで歌うのはこの日が最後っていうファイナル公演には、終わっちゃうんだっていう悲しみと、これが最後だっていう達成感と幸福感もあって。まさにそのとおりだな!と思いましたし、仲間と一定期間一緒に過ごす映像の仕事や舞台のことも思い出したりしました。

歌入れはどうでした?

メロディーが、ザッツハッピー!というよりも、憂いのあるメロディーなので、ニュアンスが難しかったんですけど、その微妙なニュアンスを表現できたら、秦さんと私らしさの両方が出るんじゃないかなと思って。だから、細かく表情をつけることを意識しましたし、例えば、すごく笑顔で歌ってみたり、逆に全然笑わずに歌ってみたり、いろいろ試しながらレコーディングに臨みました。

プロデュースも務めた秦さんからはどんなディレクションがありました?

レコーディングに来てくださったんですけど、まず、「Aメロで一行ずつ景色が変わっているから、聴いている人にわかるように表情を変えて歌って欲しい」と言われて。

そんなに細かいんですね。もっと全体の雰囲気とか歌詞の意味を説明するくらいかと思ってました。

秦さん、実はすごく細かいですよ(笑)。例えば、「サビの『日射しを集めて』の“あ”が強いから優しく歌って」とか。本当に一言一言というよりは、一文字一文字を丁寧に指摘してくださいました。

“いい”の先に“もっといい”があるっていうことも新しい発見

アーティストからのプロデュースも初ですもんね。

音楽を通してわかり合えることもあったのかなと思います。アーティストの方ならではの細かいオーダーや絶妙なニュアンスのアドバイスもいただいたので、すごく楽しかったです。面白かったんですけど、秦さんは強敵でしたよ(笑)。

あはは。そうなんですね。

雰囲気がすごくふんわりしている方だから、「いいんじゃない」と軽く言ってくださると思ったら、結構、スパルタでもありました(笑)。私が歌い終えると、「完璧。天才」って言ったあとに、「記念にもう一本」っておっしゃるんです。で、もう一回歌うと、「いいねー。じゃあ、記念にもう一本」みたいな(笑)。何回、記念テイクを録るんだって思いつつ(笑)、記念テイクを録るたびに、自分の力がどんどん抜けていって、いいテイクが録れたりしたので、“いい”の先に“もっといい”があるっていうことも新しい発見でしたし、力を抜いて歌ったからこそ生まれる聴きやすさも、すごく大事だなって思いました。