LIVE SHUTTLE  vol. 183

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マオ from SID マオのルーツミュージックが垣間見えたカヴァー選曲と親近感あふれたプレミアムなステージ

マオ from SID マオのルーツミュージックが垣間見えたカヴァー選曲と親近感あふれたプレミアムなステージ

マオ from SID Acoustic Tour 2017 「箸休めNight」
7月22日 恵比寿 The Garden Hall

“マオ from SID”とは、ロックバンド・シドのヴォーカリストであるマオがソロアーティストとして活動するプロジェクトの名前だ。

今年3月14日に東京・TSUTAYA O-EASTにて2部制で開催した<Whiteday Acoustic Live 「箸休めNight」>のチケットが即完。追加公演を求める声を受けて、急遽開催を決定したソロ初のアコースティックツアー<Acoustic Tour 2017 「箸休めNight」>。8都市16公演(2部制)を巡ったこのツアーが、7月28日、宮城・仙台Rensaにて無事千秋楽を迎えた。こちらのツアーのなかから7月22日に東京・恵比寿 The Garden Hallで開催された「箸休めNight」の“1st SHOW”の模様をお届けしよう。

今回のツアーは、ステージと客席が近いコンパクトな会場に椅子を入れ、シッティングスタイルでオリジナル楽曲に加えて、マオのルーツが垣間見られるようなカヴァー曲たちをメインに、マオ from SIDのアコースティックアレンジでオーディエンスに届けていくというものだった。ツアーのなかでもっとも大きな会場となった東京公演。

場内が暗くなると、ヴァイオリンの門脇大輔、ギターの木島靖夫、キーボードのnishi-kenに続いてマオが姿を現すと「マオー!」と呼ぶ声があちこちから上がる。「こんにちは。マオです! ようこそいらっしゃいました。最後まで楽しんでいってね」と挨拶をする間にも「こんにちはー!」、「はーい!」と元気な声で応答していく観客たちにまず驚かされた。アコースティック、シッティングだからといってかしこまったムードではなく、場内はのっけからアットホームな雰囲気に包まれていたのだ。マオがステージ中央に置かれたソファーチェアに腰掛け、ライブはミニアルバム『Maison de M』収録の「マニキュア」で幕を開けた。艶のあるマオのヴォーカルが、より気怠くしっとりとした質感で届いてくる。“薄明かり〜”と歌う場面では自分に当たるライトを手で遮ったり、“耳元預けてみた”と歌う場面では左手を耳元に添えてみたり。肉眼でマオのそんなほんのちょっとした仕草が見えるだけも、歌詞がより生々しい描写となって浮き彫りになっていく。

続けてBUCK-TICKの星野英彦曲として圧倒的人気を誇る「JUPITER」。この曲は“どんなに人を傷つけた、今夜は優しくなれるから?”と歌うマオの主旋律にヴァイオリンが副旋律を重ね、声と楽器のアンサンブルで美しく儚い和声音を生み出していったのが印象的だった。この後のトークでは「今日は“マオ!”とかいってくれるんだね」とオーディエンスのテンションをちゃんと届いていることを伝え、さらに今回この会場に初めて来たのが自分だけではないことが分かると「わ〜!“一緒”がいっぱいいてよかった」と笑顔をこぼす。こうしてトークが始まると、途端に場内に友達と会話をしているような打ち解けた空気感が広がっていくところも、このツアーならではの特徴だろう。

薄暗かった照明がオレンジに色づいて、次に歌いだしたのはバラード「頬づえ」だ。スパニッシュなギターの間奏が始まると、マオは体を左右に揺らし、右足でリズムをとって音を楽しんでいることを体で表現していった。ラブソングの後は『花より男子』のトークで大盛り上がりするシーンもあった。
会場がある恵比寿ガーデンプレイスはドラマ“花男”のロケ地として有名な場所。マオは「“花男”が大好きで」と語りはじめ、そこからまさかの「まーきのっ!」というあのフレーズを口にして、「あー、これはモノマネでもなんでもない俺の“まーきのっ!”だから」といって客席をわかせた。
盛り上がるお客さんたちを見て、気をよくしたマオは「次はモノマネで」といって得意げに“おばたのお兄さん”のモノマネで「まーきのっ!」を披露。すると、場内からは歓声が上がる。そんな観客に「F4のなかで誰が好き?」とマオが質問すると、お客さんに「マオは?」と聞かれマオは道明寺と静が好きなことが判明。その勢いで“花男”の主題歌を歌う嵐をふり付きで歌い(←客席から手拍子が起きた!)、次は井上陽水のモノマネから「この曲は俺の心に残ってる曲。みなさんの夏の思い出を重ねて聴いてください」と陽水の「少年時代」をカヴァー。
学校の教科書にも載るほど万人が郷愁にかられるメロディーを持ちながら、造語で夏を感じさせるというトリッキー曲の側面を持ったこの曲を、マオは声を緩やかに鳴る楽器として扱いながら、フェイクを入れて耳心地のいいメロディーとして丁寧に歌っていった。

この後用意されていたメンバー紹介のコーナーでは、福岡公演の後に食べたとんこつラーメンの話題で持ちきりになり「最初は目も合わせられなかったんだけど、最近はこうしてラーメンを一緒に食べられるぐらいの仲になった」と、このツアーを通してメンバーと仲良くなれたことをマオが嬉しそうにファンに報告した。そして、次はDREAMS COME TRUEの「やさしいキスをして」をカヴァー。
昔から女性目線の楽曲を得意とするマオは、ドリカムの片思いソングの中でもずっしりと響いてくるこの曲を、この上なくせつなく、愛おしそうに歌い上げ観客を感動させていった。
しかし、ここでみんなが感動に包まれているなか、「「帰れない2人」でした」とマオがタイトルをいい間違えるというハプニングを起こす。すぐさま、いろいろといい訳をしだしたのだが、最後には「このツアーのなかで一番ヤバかった」と悔しそうに猛反省。そうして、JUDY AND MARYのカヴァー「帰れない2人」をパフォーマンス。歌い終わった後は「今度こそ「帰れない2人」でした。
原曲とぜひ聴き比べてみてね」と言葉を添えた。そうして、やっとホッとしたような表情を浮かべたマオは、自身の最新曲「違う果実」を張りのある歌唱法を使って自信たっぷりに歌い、曲の後半パートはソファから立ち上がって届けていった。

この後はマオの提案で“ウェーブ”をやることになった。アニメ『ドラゴンボール』の「かめはめ波」をマオがパフォーマンスしながら客席に飛ばすも、観客は数人しか立たなかったので、すぐに「もうやめるわ」(微笑)とマオ。そして、マオが自らのスマホで動画撮影した本番も波がバラバラになり、それを見て「もう1回」とお願いする観客に「動画はさっきのを上げるけど」といいながら、今度は自ら客席の一番前へと降りていって、一緒にかめはめ波を受けてウェーブに参加するマオ。
すると、一体感あるウェーブが生まれた。「なに上手になってんの! 成長だね。みんなは脅しが効くタイプなんだ。酷いわ〜。でも大好きッ!」とナンパな発言が飛びしたところでライブは終盤へ突入。小沢健二の「いちょう並木のセレナーデ」が始まると、客席からはハンドクラップが沸き起こる。
観客を見渡しながら、こんな日々も“いつかは遠くへ飛び去る”ことが分かっていながらも、こうして“過ぎて行く日々をふみしめて僕らはゆく”と歌うマオの歌声が、泣きたくなるぐらいやさしく胸に響く。そして、ヴァイオリンが主題を奏でると場内が大いに湧き上がたL’Arc〜en〜Cielのカヴァー「Vivid Colors」は、予想通りの凄まじい破壊力で場内一丸の盛り上がりを作っていったのだった。

このツアーを通してシッティングスタイルでもスタンディングに引け目を感じることなく「みんなと気持ちが通じ合って盛り上がれるのが分かりました」と話したマオ。最後に「またやるときはお誘いするので、遊びに来てください」と挨拶し、「俺の大事な曲です」といってソロ第1作目のバラード「月」を情感をたっぷり込めて歌い、ライブは終了。「ありがとう。楽しかった。いいでしょ? たまにはこういうのも。このツアーで一番広い会場だったけど、楽しかったです。また会おうね!」と名残惜しそうに手をふり、マオはステージを後にした。

文 / 東條祥恵

マオ from SID Acoustic Tour 2017 「箸休めNight」
7月22日 恵比寿 The Garden Hall

セットリスト

<1st SHOW>
01. マニキュア
02. JUPITER
03. 頬づえ
04. 少年時代
05. やさしいキスをして
06. 帰れない2人
07. 違う果実
08. いちょう並木のセレナーデ
09. Vivid Colors
10. 月

マオ

福岡県出身。10月23日生まれ。
2003年に結成されたロックバンド「シド」のヴォーカリスト。
2008年メジャーデビュー。バンドとしてこれまで「モノクロのキス」、「嘘」、「ANNIVERSARY」などで映画・テレビアニメテーマ曲を担当。
数多くのヒット曲を世に放ち、2010年には東京ドーム公演を行うなど常に音楽シーンを牽引する存在に。
活動13年を迎える中、新たな挑戦としてキャリア初のソロプロジェクト「マオ from SID」をスタートさせる。

http://www.maofromsid.com

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