Interview

MISIA 新作『MISIA SOUL JAZZ SESSION』から見えてくる彼女の今と視線の先(前編)

MISIA 新作『MISIA SOUL JAZZ SESSION』から見えてくる彼女の今と視線の先(前編)

メロディを聴いた瞬間に「あ、これ絶対、私に合うと思います」って

ちょうどいいタイミングで、ドラマ主題歌として「最後の夜汽車」をカヴァーするオファーが来たんですね。

はい。

「最後の夜汽車」を初めて聴いたときの感想は?

もう、一発で「歌いたい!」って思いました。「じゃあ、アレンジはどうしようか」ってなったときに、私は「今までの感じではやりたくないなあ」とちょっと思っていて。いい意味で“いなたく”したかった。ただ、普通の人が想像する“いなたく”ではイヤだと思っていました。そのとき、プロデューサーから「アレンジを黒田くんに頼もうよ」って言われて、「ああ! それはいい!」と。もうそれで、「最後の夜汽車」をどう歌うか見えました。

昭和の大阪の感じが出てくるといいなあ」って言ったら、黒田くんがそういうトラックをニューヨークから送ってきたんです

イントロのピアノのフレーズが、凄くいい!

黒田くんが、「大林武司くんが弾くと思ってあのフレーズを考えた」って言っていたので、「それはすごいわかるな」と思って。大林くんのピアノって、水面を妖精か何かが飛んだ時にできる小さくて美しい波紋みたいな音だなって思うんですけど・・・。そのピアノにメロディアスなベースとドラムが、すごい絡み方をしている。「ああ、いい形になったなあ」と思って。ドラマ自体も舞台が昭和の時代なので、アレンジをオーダーするときに、「昭和のセピア色みたいな感じが出てくるといいなあ」って言ったら、黒田くんがそういうトラックをニューヨークから送ってきたんです。

驚いた?

はい。私はレコーディングにまったく立ち会ってない。あと、デモもなかったですから、いきなり本番。黒田くんが「これで歌をレコーディングして」って。実は今回の『MISIA SOUL JAZZ SESSION』は、全曲、そうなんです。デモ段階がまったくない。ほとんどブルーノートのライヴでやっていた曲っていうのは大きいですけど、それでも1回だけだし、新曲に関してはもうゼロですから。

不安はなかった?

なかったですね。前回、ライヴやったときの信頼感で、「絶対大丈夫」って。彼も、自分の中でアレンジが見えてるときは「任せとけ!」って言っていて。

「絶対、良くなるから大丈夫」と。

うん。「やってみてから感想をもらえる?」っていうのは一切なかった(笑)。だから逆に「ああ、そこまで見えているんだったら任せよう」って。

新しいアルバムが新曲ばかりである必要性があるのかって(笑)ちょこっと思い始めている部分があって

滅多にないプロジェクトだね。相手のオーダーに沿って作るっていうスタイルではなかったんだ。

はい。私としても、今回求めていることっていうのは、そうじゃなかったんですよね。「ここをこう直して」って感想を言えるくらいなら、「だったら自分でアレンジするし」って話になってしまうので(笑)

ははは(笑)

自分が見えているんだったら、自分でアレンジすればいい話ですからねえ。そうじゃなくて化学反応で、いわゆるセッションをやりたいってことがあってのレコーディングだったので、すごく面白かったです。

それでタイトルが『MISIA SOUL JAZZ SESSION』なんだ。その“セッション”っていうニュアンスは、“星空のライヴ”などで生バンドをバックに歌ってきたキャリアと関係があるのかな?

あると思います。その面白さを知っているからこそ、やってみたかった。バックのコードやフレージングによって、アドリブも変わるし、歌い方も変わるし、歌のリズムも変わる。やっぱり歌っていうのは言葉があるっていうのが、最大の特徴だと思っていて。メッセージっていうものが大きいと思っているんですけど、ひとりの人間から出されるメッセージって、どこか普遍的なものがある。変わらないものがあるんですよね。で、その変わらないものを、新曲の度に形を変えて言葉にする作業をやっていますけど、……新しいアルバムが新曲ばかりである必要性があるのかって(笑)ちょこっと思い始めていた部分があって。なぜかというと、私のメッセージは変わらないから、歌詞は同じでメロディが変わってもいいんじゃないかという。

『MISIA SOUL JAZZ SESSION』を、皆さんは“セルフカヴァー”って言うんですけど、私は新曲のつもりでやっているんですよ(笑)

極端に言えばね。

そう、極端に言えば。たとえばローリン・ヒルは、2、3枚しかアルバムを出してないのに、毎回“新しいライヴ”をやっている……これって、すごいことですよね。ははは!

過去の楽曲を、違うやり方で聴かせたりしているよね。

それもひとつの音楽の形だと思っています。今はクラシックって言われている音楽でも、昔はいわゆる流行曲だったわけですから。

私たちはR&Bやヒップホップが、一種の流行からクラシックになる過程を生きていると思うんですよね。クラシック化していく音楽を、この時代の中で歌っていくっていうのは、必要な過程のような気がしていて。だから今回の『MISIA SOUL JAZZ SESSION』を、皆さんは“セルフカヴァー”って言うんですけど、私は新曲のつもりでやっているんですよ(笑)

そういう意識はいつごろからあったの?

いわゆるジャズだったり、そういうものを意識し始めたのは、2013年か2014年くらい。思い返してみると、「15周年から、今回の方向は決まっていたな」とは思いますね(笑)

そこから5年ぐらい掛かって、次のステップに行こうっていう。

そうなんです。あのときに蒔いた種が、ここに来て芽吹いたっていうのがすごく面白かったです。

(後編へ続く)


インタビュー後編はこちら
MISIA 新作『MISIA SOUL JAZZ SESSION』から見えてくる彼女の今と視線の先(後編)

MISIA 新作『MISIA SOUL JAZZ SESSION』から見えてくる彼女の今と視線の先(後編)

2017.08.09


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ライヴ情報

Misia Candle Night

8月26日 (土) 河口湖ステラシアター
8月27日 (日) 河口湖ステラシアター

MISIA

長崎県出身。その小さな体から発する5オクターブの音域を誇る圧倒的な歌唱力を持ち、「Queen of Soul」と呼ばれる日本を代表する女性歌手。
1998年のデビュー曲「つつみ込むように…」は日本の音楽シーンに強い影響を与え、ジャパニーズR&Bの先駆者と言われる。その後発表された1stアルバム「Mother Father Brother Sister」は新人ながら、300万枚の異例のセールスを記録。
以降、「Everything」「逢いたくていま」等、R&Bというジャンルにとらわれず、バラードの女王の名も確立された。その実力は日本国内のみならず、アジア敷いては世界からも認められる。
デビュー19年目を迎えてなお、年々音楽に対する追及心はとどまることを知らず、世界を舞台に様々な作品を発表。来年のデビュー20周年に向けて、さらなる期待が高まる。また、音楽活動のみならず社会貢献活動にも注力し、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)名誉大使などを歴任。

オフィシャルサイトhttp://www.misia.jp/

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