マンガを掘りつくせ!Manga Diggin’  vol. 18

Column

ヤクザが性転換してアイドルに転生!?『Back Street Girls』に抱腹絶倒!

ヤクザが性転換してアイドルに転生!?『Back Street Girls』に抱腹絶倒!

メジャーからアンダーグラウンドまで様々なアイドルグループが活躍し、世はまさに“アイドル戦国時代”を迎えている――。そんななか、実在のアイドルをはるかに凌駕する圧倒的な個性を持ったアイドルグループが爆誕!! 

物語の主人公は、3人組の美少女アイドルユニット「ゴクドルズ」。かわいらしいコスチュームに身を包んでステージに立つ彼女たちには、口が裂けても言えないヤバイ秘密が……。2015年よりヤングマガジンで連載を開始し、アイドルファンの度肝を抜いた話題作『Back Street Girls』をご紹介♪


『Back Street Girls 1巻』

ジャスミン・ギュ(著)
講談社

【STORY/ストーリー】

性転換×全身整形手術で、強面ヤクザが美少女アイドルに大変身!!

大失態を犯してしまった犬金組の若手構成員・山本健太郎(通称:兄貴)、立花リョウ(通称:リョウ)、杉原和彦(通称:カズ)。どんな仕打ちも覚悟していた3人だったが、極悪でドSな犬金組長から言い渡されたのは、性転換&全身整形手術をして「アイドルやれよ」という予測不可能な無茶苦茶なケジメ……。泣く泣くタイへと旅立った彼らは、1年後、アイドルグループ『ゴクドルズ』としてステージの上に立っていた。
リーダーの山本アイリ、お姉さんキャラの立花マリ、妹キャラの杉原チカ……。ゴクドルズのメンバーとして生まれ変わった彼らは、本人たちの思惑とは裏腹に大成功してしまう。
しかし、見た目は美少女だが、中身はいかついヤクザのお兄さん。ひとたび楽屋に戻れば、タバコを吸うのも当たり前なら、一升瓶を抱えてゴクゴクと酒を飲む始末。しかし、犬金組長の洗脳教育の効果もあり、少しずつ元メンズたちに乙女心が芽生え始めてしまう。ふとした瞬間に出る自身の女性らしい振る舞いや、周囲の男たちの反応や変化に3人は困惑の色を隠しきれない。なんとか“男の中の男”である極道に戻ることを願うゴクドルズのメンバーたちだったが、アイドルビジネスにノリノリな犬金組長はあらゆる方法で3人を追い込んでいき……。

【CHARACTER/キャラクター】

♯001
山本アイリ

(山本健太郎/兄貴)
28歳。ゴクドルズをまとめるリーダー。初期メンバー3人の兄貴分で、弟分の面倒見がいい。あん肝やスッポンなど、おっさん臭い食べ物が好物。

♯002
立花マリ

(立花リョウ/リョウ)
25歳。ゴクドルズの「姉の美人の友達キャラ」担当。かつては犬金組若手最強の潰し屋と呼ばれていたが、弟分のチカの人気に嫉妬するなど女性化が著しい。

♯003
杉原チカ

(杉原和彦/カズ)
23歳。ゴクドルズの「かわいい妹キャラ」担当。「ラブラブピョンピョン」がキャッチフレーズのぶりっ子キャラだが、極道時代はパンチパーマの強面。

♯004
リナ

(ジョージ)
ゴクドルズの第1期研究生。NYの貧民外出身。イタリアンマフィアだったが、失態が原因で犬金組に送られ、
性転換&全身整形を施されてゴクドルズ入り。(コミック3巻より登場)

♯005
ゆい

(中村結衣)
17歳。ゴクドルズの第2期研究生。正真正銘の女性で堅気。ゴクドルズに憧れて青森から上京し、研究生になる。
犬金組長を名プロデューサーと信じきっている。(コミック5巻より登場)

♯006
犬金組長

犬金組の組長にして、犬金企画の社長兼プロデューサー兼作詞家。思いつきやその場の気分で超極悪な命令を下す冷血無比な男。アイドル業に夢中で、自身を「先生」と呼ばせる。

♯007
マンダリン木下

ゴクドルズのマネージャー。数多くのトップアイドルを育てたマネージャー界の生きる伝説。ゴクドルズの正体を知らず、彼らの行動や言動に困惑する。

♯008
木村

ゴクドルズの付き人で、彼らの弟分にあたる犬金組の若い衆。実は、かつての兄貴分であるチカの大ファン。

♯009
ゴクドルズ被害者の会

ゴクドルズによって人生を狂わされた人々の集まり(主に犬金組長の悪行が原因)。ストーリーが進むごとに、メンバーが増えていく。

【CHECK POINT/見どころ】

ヤクザ時代の出来事が絶妙に交錯するストーリー

アイドル生活の中、たびたびヤクザ時代とリンクする場面に出くわすゴクドルズ。例えば、マネージャーの助言が憧れの極道であるカシラ(若頭)の言葉とダブってしまったり……。まったく異なるはずの「極道」の世界をアイドルと結びつけることでゴクドルズのメンバーたちは、とんでもない勘違い行動を連発したりと大暴れ。ヤクザ時代に関わった人々とも意外な形で再会し、かつてのイメージを崩壊させるような意外な素顔を知ってしまったり、好意を持って近づいたことが裏目に出てしまうことも。 過去と現在がリンクし、男性だった頃とのギャップが生み出す、ハチャメチャな展開が本作の醍醐味。過去の思い出がデジャヴのように重なっても、今の彼らはアイドル。美しきヤクザ時代の思い出は清清しいまでにキレイに崩れ去っていく。その瞬間こそが、本作最大の笑いの仕掛けになっているのだ。

“男らしさ”と“アイドルらしさ”のギャップに爆笑!

男らしい“任侠道”に憧れて、ヤクザの世界に入ったゴクドルズのメンバーたちだが、今では女子の道を極める“アイドル”という正反対の職業に。“男らしさ”こそが彼らの求める道だったはずが、犬金組長やマネージャーのマンダリン木下はもちろん、世の中が今の彼らに求めるものは“女の子らしさ”でしかない。アイドルとしての活動時以外は、素のままの自分で過ごすメンバーたちだが、ふとした瞬間にどうしても“女子”が出てしまう。なんとか男でいようとするゴクドルズのメンバーだったが、犬金組長の洗脳教育や追い込みの効果は絶大。なんだかんだで、すっかりトップアイドルを目指してしまう姿はほほえましい。しかし、中身はこってりしたオッサンなだけに勘違いや思い込みから爆笑必死の痴態を披露してばかり。そんな彼らの見た目とのギャップ満載の言動や行動に爆笑すること間違いナシ!

極悪な組長の鬼畜っぷりが生み出す、超カオスな展開!

ゴクドルズのメンバーを半ば強制的に性転換させたうえに、ハードすぎる洗脳教育まで施し、すっかりアイドルに仕立て上げてしまった犬金組長。その鬼畜ぶりはゴクドルズ相手だけにとどまらず、その他の組員や周囲の関係者にまで飛び火する。読者も思わず、「そ、そんな無茶な……」と思ってしまうような仕打ちが毎話のように繰り広げられるのが本作の定番の展開になっている。常人の考えをはるかに超える突飛な組長の行動や言動は、残酷で冷酷無比なものばかりだが物語をおもしろくするのに欠かすことができない最重要のエッセンス。本作の設定自体が犬金組長ありきであり、作中で最も強い個性を持つのもこの男。狂言回しとして主人公たちをジャイアントスイングするかのようにぶんぶんと振り回す極悪ぶりが次第に病み付きになる!?

実は、名プロデューサー?組長の作詞センスがヤバイ!!

デビュー曲の「恋のサカズキ」を筆頭に、ゴクドルズの楽曲のすべての作詞を手掛けるのが犬金組長。ところどころに極道ネタが散りばめられた楽曲にまったく気がつかず、純真無垢なゴクドルズのファンたちはコールで応える。すべてを知っている読者から見ると、「あー、なるほど」と感心してしまうような歌詞も多く、ストーリーとの絶妙なリンクも秀逸。破天荒すぎる犬金組長だが、実はプロデューサーや作詞家としての腕前はたしかな物なのかもしれない。ゴクドルズが新曲を披露するときは、必ずといっていいほど事件が巻き起こる(もしくは現在進行形で起こっている)ので、犬金組長が作る歌詞にもぜひ注目してほしい。

【“深堀り”解説】

引き継がれるヤングマガジンの不良マンガの系譜

社会現象まで巻き起こした不良マンガの金字塔『BE-BOP-HIGHSCHOOL(ビー・バップ・ハイスクール)』、タイムスリップしたヤクザの大逆転劇『代紋TAKE2(エンブレム テイク ツー)』、23年もシリーズが連載されたエロスも満載の『工業哀歌(こうぎょうあいか)バレーボーイズ』など、これまで数多くの名作不良マンガを世に送り出してきたヤングマガジン。いつの世も男性読者の胸を熱くさせてきた同誌のこのジャンルは、もはや「名門」の域に達している。
アイドルをテーマにしながらも、コミカルに不良の世界を描く本作『Back Street Girls』は、その系譜の最先端に存在している存在だ。あくまでも私の個人的な見解ではあるが……、ヤンマガの不良マンガの中でもっとも類似点を感じた作品は『エリートヤンキー三郎』。この作品の準主役的な役割でいつも狂言回しを務める問題児・河井星矢(かわいせいや)のキャラクターと犬金組長が見事にシンクロしているのだ。この2人のキャラクターは、共に利己主義で排他的、極悪非道で無慈悲、金儲けのためなら手段を選ばない悪行ぶりが魅力。主人公たちを喰ってしまう勢いで強烈な個性を放つ悪役が登場する点は、近年のヤンマガ不良マンガの十八番(おはこ)と言えるのかもしれない。河井星矢と犬金組長の鬼畜ぶりを比べてみるのもおもしろい。

エリートヤンキー三郎 1巻

阿部秀司(著)
ヤングマガジン

不良マンガのトレンドは、いまや“女装”と“女体化”?

ヤクザがアイドルになる斬新な設定で注目を集めた『Back Street Girls』だが、実はヤンキーやヤクザの女体化・女装モノは近年のマンガシーンで1つのトレンドになっている。その皮切りとなったのも、なんとマガジン系のコミック誌だったりするのだ。
2014年初頭、伝説のヤンキーマンガ『カメレオン』(週刊マガジン)の続編に当たる、『くろアゲハ』の連載が月刊マガジンで始まった。前作は正統派不良コメディだったが、続編の主人公は女装して“都市伝説のレディース”として活躍。ギャグセンスはもちろん、加瀬あつし先生が描くヤンキー女が妙にセクシーでエロイという魅力も健在で、往年のファンだけでなく新規の読者層まで巻き込む話題作になっている。その後、青年誌のヤングマガジンで本作が登場するわけだが、このブームはそれだけでは終わらなかった。なんと女性向けのアダルトジャンルのTLでも、女体化モノやヤクザモノが2015年頃に大ヒット(笑)。携帯配信のマンガ業界では、数字が取れる鉄板のトレンドになった(きっかけを作った作品は、『女体化ヤンキー学園☆オレのハジメテ、狙われてます。』)。さらに、集英社のとなりのヤングジャンプでも、女の子のパンティが好きすぎるあまりパンティを履くようになってしまったヤンキー男子が主人公のBL作品『パンティトラップ』の連載が開始。
上述のように男性読者だけでなく、女性層にもウケるネタとして、「不良の女体化・女装化」という組み合わせはマンガシーンを席巻しているのだ。

くろアゲハ 1巻

加瀬あつし(著)
月刊少年マガジン

コンシェルジュ・プロフィール
ヒメゴト~十九歳の制服~ 1巻 書影

野本和義

さすらいのフリーライター&編集者。幼少期より不良マンガをこよなく愛する、大人になりきれない腐ったみかん。好きな不良キャラは、「特攻の拓」の武丸くん。彼のようにバス停で人を殴るのが少年時代の夢。長らく音羽の編プロで過ごしたため、講談社、とくにマガジンへの愛は絶大! 護国寺の隣にある中華料理店・栃尾のとん汁ラーメンが大好物。

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