Interview

MISIA 新作『MISIA SOUL JAZZ SESSION』から見えてくる彼女の今と視線の先(後編)

MISIA 新作『MISIA SOUL JAZZ SESSION』から見えてくる彼女の今と視線の先(後編)

MISIAは「R&Bやヒップホップが一種の流行からクラシックになる過程を生きていると思う」と、自らのキャリアを冷静に振り返る。それは20年目に入ろうとしているアーティストとしての覚悟でもある。
さらに新しい自分に出会おうとしている彼女の“今”を聞いてみることにしよう。

取材・文 / 平山雄一


インタビュー前編はこちら
MISIA 新作『MISIA SOUL JAZZ SESSION』から見えてくる…

MISIA 新作『MISIA SOUL JAZZ SESSION』から見えてくる…

2017.08.08


「奇跡待ちでええんちゃう?」って言われて「ええっ!? 奇跡待ちでいいの!?」って言って(笑)

それで黒田くんとアルバムを作って、ライヴをやってみたわけなんですけど、久しぶりに毎回ライヴが怖かったですね。

ああ、楽しみもあるけど(笑)

楽しかった――でも何が怖かったかって言うと、ライヴをすると、毎回、ベストなんですよ。1日目から良くて、2日目はもっといい。ベスト・オブ・ザ・ベストが来るので、「こんなにベストが来て、明日どうするんだろう」っていう(笑)「あそこをこうしたいから、こうだな」みたいなのが残っていると、「明日はもっとこうしてみよう」ていうのがあるんですけど、「あ、ベスト来ちゃったな」っていう(笑)

ははは!

ツアー“MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2017”の初日の名古屋で「ベスト、来た!」って思ったので、黒田くんにも「怖い!もう怖い!もう私、明日からどうすればいいんだろう」とか言ってました(笑) 終わったあと、ダブル・アンコールまで来て、しかもすごいダブル・アンコールで。お客さんの拍手が10分ぐらいずっと止まらない。私たち、一回楽屋に戻って話して、それでドアを開けたらまだ拍手が鳴っているから、「あれっ?」って言って慌ててステージに戻って、ダブル・アンコールに応えたっていう。そのダブル・アンコールで歌ったのは「キスして抱きしめて」だったんですけど、エンディングをあんまり細かく決めてなかったんですよ(苦笑)、「どうしようか?」みたいな。で、目の合図でお互い心を合わせて終わったって感じだったんです。

でもそれが毎回続くのかなあと心配になるよね。

そう。奇跡的にすごく上手く行って、っていうのが1日目だった。意図的に終わったものは、奇跡的に終わるテイクには勝てないっていう気持ちがあるんですよね。で、次の日にまた「キスして抱きしめて」をやってみようって話になったときに、黒田くんに「ねえ、この前、奇跡的にうまく終わったんだけど、次はどうしようか、どうやって終わる?」って言ったら、「ああ、“奇跡待ち”でええんちゃう?」って(笑)

ははは!奇跡待ち!(笑)

「奇跡待ちでええんちゃう?」って言われて「ええっ!? 奇跡待ちでいいの!?」って言って(笑) 本当に奇跡待ちでしたね。ははは!

ははは!

それが、毎っ回面白くて。しかもあの曲だけなんですよね、黒田くんと掛け合っているの は。でも、音楽をやっている上で、知らないうちに自分で「こうやんなきゃ」って決めてたものが、気付かなかったけどあったんだなあって思いましたね、今回のライヴをやってみて。

やっているうちに、「ああ、風が吹いたらいいなあ」とか、「向こうまで見える草原があったらいいなあ」とか「砂漠があったらいいな」とか思っちゃって

今回のライヴを見せてもらって思ったのは、あのセッション・スタイルで音楽をやるとしたら、相手は2000人までで、1万人には伝わらないだろうなっていうふうには思ったんだけど。

あー。でもね、たぶん野外だと違うと思います。だって最初にこのバンドでライヴをやったブルーノートは野外でしたから。

そうかあ! ごめんなさい(苦笑)

野外は違うと思いますね。いろんな常識が自分の中で崩れる瞬間があると思うんですよね、これから。私もちょっと思ったんです、今回のスタイルは、Zeppっていうところが特に合っていたんだろうなって思ったんですけど、やっているうちに、「ああ、風が吹いたらいいなあ」とか、「向こうまで見える草原があったらいいなあ」とか「砂漠があったらいいな」とか思っちゃって。だってトランペット自体が遠くに届かせるための楽器だから。ドラムもそうだし。

大会場でやるほうが、かえってナチュラルなのかもね。

そこはプロデューサーにお任せしようと思っていますけど。ただ、いろんな人に聴いてほしいなあ、いろんな人にライヴを観てほしいなあと思っています。このアルバムが作りたかったのも「グローバルなものを作りたい」っていう思いがあってのことなので、日本に限らず、いろんな場所で、いろんな人に聴いてもらいたいです。