Interview

例えようのない不思議な音楽、フレデリックらしさとは? アニメ『恋と嘘』OPテーマ「かなしいうれしい」

例えようのない不思議な音楽、フレデリックらしさとは? アニメ『恋と嘘』OPテーマ「かなしいうれしい」

2ndシングル「かなしいうれしい」をリリースしたフレデリック。音源ごとに様々な試みを施している彼ららしく、今回も強烈にオリジナリティの高い作品が完成した。さらに、今回からドラムの高橋武が正式メンバーとなり、4人体制での活動がスタート。昨年リリースしたアルバム『フレデリズム』の手ごたえをもとに、新たなチャレンジを取り入れながら前進する彼らの充実ぶりが伝わるシングルだ。

取材・文 / 岡本明


ただ悲しいだけじゃなく、悲しいと思った先で小さな喜びに気づく。そういう内面的なものに辿り着く作品作りをしたかった

今回のシングル「かなしいうれしい」ですけど、TVアニメ『恋と嘘』からオファーがあって作られたんですか?

三原康司 そうです、お話があってから書き下ろしました。これまでにも楽曲提供はあったんですけど、書き下ろしというのは初めてで。漫画の原作者の方(ムサヲ)と話をしたんですけど、モノを作る志は同じなのでそこは刺激になりました。話していくうちに、漫画の中の感情をどう伝えていくかということに対しての努力と、僕らが音楽で伝えていく努力とは同じ感じだなと思えて。そういう新しい発見があって、一歩進めた作品になりました。

ただ、アニメ側に寄せるだけでなく、フレデリックの曲としても成立するようにしないといけないですね。

康司 そこは悩みました。そのぶんの時間はかかってます。

どのあたりに時間をかけたんですか?

康司 『恋と嘘』という作品の中で僕が共感したのは、“嘘”という言葉ですね。嘘って聞くとネガティブなイメージが強いですけど、この作品自体、人を守るための嘘が多いんです。人を守るために自分が犠牲になり、盾になって守ろうとする気持ちで嘘をつく、そういう表現があって。人をだますために嘘を使うのではなくて、人の幸せのためにどう嘘を使うかが大切なので。「かなしいうれしい」は、ただ悲しいだけじゃなく、悲しいと思った先で小さな喜びに気づけて、そこをどんどん大きくしていける、そういう内面的なものに辿り着く作品作りをしたかったのでこだわりました。

喜怒哀楽という言葉だけでは表現できない。その言葉の隙間にある感情を表現する

曲そのものはスムーズに作ることができたんですか?

康司 曲の風景として“儚い”っていう言葉が似合う楽曲だと思っていて、そこへの向き合い方として、音のコード感とか表情をすごく考えました。

独特の感じですよね、イントロからして。不思議な感じで、例えようがないというか。

康司 そこがフレデリックらしさだと思います(笑)。

三原健司 メジャーデビューする前からすごくいろんな楽曲をリリースしていて、50曲以上あるんですけど、その中でもまた新しい扉を開いたという印象があって。しかも、新しい扉を開いたけど、いままでを踏まえたうえでの扉だなと。それが進化だと思うんです。

赤頭隆児 ギターとしては、歌の表現を壮大にしたくて。ベースがニュアンスの付いた弾き方なので、僕はどちらかというと無機質寄りに弾きました。服で言うと、柄と柄がぶつからないような感じで。でもただの無機質だけでなく、感情的な部分に寄せたところもあって、その加減は意識して弾きました。

高橋武 その加減という部分に通じますけど、フレデリックの曲って過去の楽曲を踏まえても、喜怒哀楽という言葉だけでは表現できないものがあって。その4つの言葉の隙間にある感情を表現するのが得意なバンドで、それは邦楽ならではだと僕は思っているんです。この「かなしいうれしい」でも、健司くんの歌にそういう部分が非常によく出ていて。悲しいとか、嬉しいとか、寂しいとか、ひと言で表すのはもったいない歌の魅力があるんです。だから、楽器の演奏においても単純なものにはしたくなくて。それはフレーズが単純という意味ではなく、音楽的表現という意味なんですけど。歌をしっかり活かす、踊れる部分は踊れる、各楽器の聴こえ方を考える、といったトータルバランスとして各々の意識が高まっていたと思います。

どう声で表現するか……悲しすぎず、嬉しすぎず、ちょうど間のものを

歌も難しいですよね。メロディーラインも独特なんですけど、“かなしい”、“うれしい”といった感情をどちらにも振り切れない歌い方をしていて。

健司 タイトルがそうですから(笑)、どちらにも寄りすぎないようにしようと思いました。悲しく歌ったらすごく悲しい曲になるし、でも、嬉しく歌って楽しい曲にもしたくないという想いがあって。『恋と嘘』の漫画を読んでみて、自分なりに言葉にするにはもったいないぐらい難しい感情だなと思ったんです。恋することとか、恋ということ自体、ひとつにくくれない言葉じゃないですか。恋しているときのもどかしい気持ちを言葉にするのはすごく難しい。『恋と嘘』に出てくる嘘自体、人を傷つける嘘じゃなくて、人のことを想ってつく嘘なので。もどかしいとか、ちょっと自分が抑えているときの気持ちとか、それをどう声で表現するか苦労しましたね。どう聴こえるのか何度も歌ってみて、悲しすぎず、嬉しすぎず、ちょうど間のものを自分の中で作るようにいろいろ試しました。

そのボーダーは歌っている当人しかわからないですからね。

健司 そうですね、でも正解を出すのは自分なので。正解はないと思っているからこそ、自分がこれだと思ったものを出すしかないです。

ライヴで再現が難しそうですけど?

健司 ライヴではもっと濃く歌ってます。この曲自体、感情を出せば出すほど曲に反映されると思ったので。あまり曲に表現を入れすぎると、しつこいと思われがちですけど、これはやればやるほど伝わりやすい曲だなと思って。

ライヴの反応はどうですか?

健司 夏フェスからやり始めたんですけど、手拍子してくれたり、早くから浸透していましたね。

康司 フレデリックのいままで出してきたリード曲はテンポの速いものが多かったんですけど。これはミドルぐらいのテンポで、気持ちよく踊りながら聴いてくれているなと、ライヴをやりながら実感しています。これから聴いてくれる人がもっと増えていくと思うんですけど、一緒に成長していける曲だなと思います。

高橋 バンドに加入してから最初に出る音源なんです。サポートの頃から3人とも僕の意見を聞いてくれていて、僕もアイデアをいろいろ提案していたんですけど、正式メンバーになると提案じゃなくて一緒にどっちがいいかを決める、それが最終的に楽曲にもすごく活きていて。今回入っている「シンクロック」「まちがいさがしの国」もそうですけど、フレデリックとして新しい試みもできたし、音楽への向き合い方としても3人が3方向からだったのが、4人が4つの方向から向き合うようになったので、曲の幅が広がったと思います。一曲の中によりたくさんの要素を感じてもらえるような。「かなしいうれしい」を聴いた人が『oddloop』を聴いても納得できると思うし、スローな曲を聴いてもすんなり聴いてもらえると思うんです。そういうフレデリックの魅力が凝縮されていて、アルバム『フレデリズム』で作ったものがこの一曲に凝縮できたかなと思います。

それでいて、アルバムを作ったあとの充実感からさらに一歩先に進んだような?

高橋 そうですね、フェスでもその感じがちゃんと伝わっていて。ただお祭り騒ぎに来ているだけでもなく、体を動かしながら曲に入り込んで聴いてくれている感じが嬉しくて。今のこのタイミングでいちばん体現したいことができているなって感じてます。

赤頭 フェスのセットリストはテンポが速い曲を多めに選んで一緒に楽しもうというのを大事にしてたんですけど。この曲をセットリストに入れるようになって、楽しむだけじゃないところも見て欲しいと思うようになりました。