LIVE SHUTTLE  vol. 184

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SPYAIR オーディエンスと豪雨が味方。エンターテイナーとしての高い資質を示した夏の恒例野外ライブ

SPYAIR オーディエンスと豪雨が味方。エンターテイナーとしての高い資質を示した夏の恒例野外ライブ

SPYAIR JUST LIKE THIS 2017
2017年7月29日 富士急ハイランド・コニファーフォレスト

SPYAIRの夏の恒例ライブ『JUST LIKE THIS 2017』は、富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催3年目にして完全ソールドアウト。15,000人のファンが詰めかけた。

ステージからは長いランウェイがアリーナ中央を貫いて、正面スタンドのギリギリまで伸びている。その途中に円形のミニステージが設置されている。楽しいライブになりそうだ。が、天候は余談を許さない。厚い雲が上空を覆っている。それでも少し晴れ間がのぞいたところで、開演時間の17時になった。

爆音でSEが流れる中、ステージ左右から現われた2台の改造車がアリーナに入ってくる。左のトロッコにはKENTA(dr)とMOMIKEN(b)、右のトロッコにはIKE(vo)とUZ(g)が乗っている。それだけで場内は大騒ぎだ。そんなオーディエンスたちのエネルギーを受けて、車の上のメンバーの表情には、歓喜と興奮がみなぎっている。ついに超満員になった会場を見渡して、これから始まるライブに武者震いをしているのかもしれない。

ゆっくりとスタンドに向かって進んできた2台の改造車が、中央に向けてカーブを切る。ランウェイの先端あたりで合流することがわかると、会場の歓声がさらに高くなった。そのランウェイを見ると、ヨロイに身を固めたSPYAIRダンサーズ12人が、大きなフラッグを振りながら行進してくる。メンバー4人とダンサーズが合流し、ランウェイを今度はステージに向かって進み始めると、いよいよライブのスタート間近の大歓声が上がったのだった。

オープニングは、この会場限定シングル(注:用意されていた数量は完売)の「THE WORLD IS MINE」だ。MOMIKENのベースがリードする、ハードなブギーのリズムが会場を揺らす。新曲なのに、オーディエンスは爆発的に盛り上がる。

続く「LIAR」は、KENTAがタイトに刻むドラムがリードする番だ。そのビートにのって、♪君の涙 拭えるなら 嘘つきにもなる♪というサビでIKEとUZがスリリングにハモる。たった2曲で4人のテンションの高さが伝わってきて、始まってからまだ7分も経たないのに、バンドのパワーが全開になった。

それを確かめるように、歌い終わったIKEは「ようこそ! SPYAIRのライブへ!」と15,000人に挨拶する。すかさずUZがギターのストロークを開始して、「イマジネーション」へ。息をもつかせぬ展開だ。IKEはさっき行進してきたランウェイの先端まで駆けて行って歌っている。この広い会場で、IKEは確実に歌詞を届けることに成功している。特に「GLORY」では、大人になることを楽しみにしていた悪ガキたちの気持ちを、しっかりオーディエンスに伝え、共感を呼んでいた。

「みんな、来てくれてアリガト! いい天気ですね。テンション、上がります」と、今にも降り出しそうな空を見上げて、笑いながら叫ぶ。「何があっても一緒にやりとげましょう」と、IKEは予言者のように言い放ったのだった。

このスピード感たっぷりの序盤をはじめ、この日のライブは見せどころ、聴かせどころがはっきりしていて、非常に優れたエンターテイメントになっていた。

次のシークエンスでは、ハードでへヴィーなSPYAIRをアピールする。UZが低音弦を目いっぱい使ってリフを弾く「ファイアスターター」もよかったが、続く「RAGE OF DUST」が僕にとってのこの日のベストだった。激しいバック・サウンドに美しいメロディを載せる手法はSPYAIRの得意とするところだが、それをライブの中でメンバーがそれぞれの役割を果たすのはとても難しい。だが、それを楽々とやってのけたのが、この「RAGE OF DUST」だった。MOMIKENの短くてワイルドなベースのソロ・ピックアップから、メロディアスなUZのギター・ソロへの流れが痛快だ。それらを支えるKENTAの安定したドラムを足掛かりに、IKEは思い切り力を振り絞って歌い、オーディエンスの耳を釘付けにしていた。その様子を映そうと、撮影用ドローンが急上昇していく。その光景がとても野外らしくて、最高の瞬間になった。

続くシークエンスで、今度はじっくり聴かせる曲が並ぶ。「ライブでやって来なかった曲だから緊張する」とIKEが言って「Come on」を歌い始めようとしたら、歌詞が飛んでしまい、「もっかい、やらしてもらっていいですか?」。場内から大爆笑が起こる。だが、それで大なしになるどころか、かえって盛り上がり、メンバーの集中力が増していい演奏になった。

ランウェイの真ん中のミニステージに、SPYAIR流アコースティック・セット“キャンプファイヤー”が登場する。これは、SPYAIRの楽曲をアコーステックでカバーするバンドという設定で、「I want a place」を披露。その後、“SPYAIRの”IKEとUZで「Stand by me」を普段とは違ったテイストで聴かせる。このあたりから、雨は激しさを増す。

お楽しみシークエンスでは、メンバーがIKE&MOMIKENの「ファッション・チーム」とUZ&KENTAの「マッスル・チーム」に分かれて対決するスペシャル映像が流され、その後、スーツでビシッと決めたファッション・チームと、上半身裸のマッスル・チームがステージ上でリアルに対峙。「BRING IT ON~Battle of Rap~」でラップ勝負に雪崩れ込むと、オーディエンスは両チームを大歓声を上げて応援したのだった。

かと思うと、「ROCKIN’ OUT」では再びダンサーが登場してポップなパフォーマンスを披露したり、UZ、MOMIKEN、KENTAが横一列に並んでスクリーンの映像とシンクロしながらパーカッションを連打したり、SPYAIRはコンセプトの異なる場面を次々に繰り出して、びしょ濡れのオーディエンスを鼓舞する。

終盤は、もちろんエキサイティングなシークエンスだ。「ジャパニケーション」や「サムライハート(Some Like It Hot!!)」など、キラーチューンを立て続けにぶちまける。オーディエンスは水しぶきを上げながらタオルを回して、メンバーのホットなパフォーマンスに応える。

さらに強くなった雨のせいで、IKEのマイクがトラブルに見舞われた。それでも、オーディエンスがIKEの代わりに歌って、曲が止まらなかったのはさすがだった。そんなバンドへの愛情に応えるように、メンバーはひたすらステージ狭しと走りまわり、熱い演奏を繰り広げる。この一体感は会場を襲った豪雨によるところが大きいが、“伝説のライブ”とはこうしたことから生まれる。『JUST LIKE THIS 2017』が、伝説に一歩、また一歩と近づいていく。バンドと一緒に歌うオーディエンスの声が、ますます大きくなっていく。

「絶対、忘れないライブを一緒に作れてる気がします。こんな雨の中だけど、ずっと音を鳴らし続けていたい。そんな気持ちを込めて歌いたいと思います」とIKEが言って歌ったのは、このライブのタイトルチューン「JUST LIKE THIS」だった。オーディエンスたちが雨に打たれながら、IKEと一緒に歌い出した瞬間、このライブは“伝説”となった。そして本編を、超攻撃的な「現状ディストラクション」で締めくくったのだった。

オーディエンスは、全身ズブ濡れになりながら、アンコールを求める声を上げる。その熱気に、再び現われたSPYAIRは新曲「MIDNIGHT」のライブ初披露で応える。この曲はドラマ『ウツボカズラの夢』の主題歌で、バンドの特長を活かしながら“大人”の雰囲気を漂わせる作りになっている。SPYAIRはロックバンドとしてのコアな魅力と同時に、メロディメーカーとしての幅広い音楽ファンに愛される側面を持っている。その強みが発揮されているのが「MIDNIGHT」だろう。

そしてラストチューンを歌う前にIKEが会場に嬉しい報告をする。「俺たちの5枚目のアルバム『KINGDOM』が出ます。やっと大切な人の前で、堂々と『アルバム、できたよ』って言えるときが来ました。楽しみにしててね」と言うと、待ちかねていたファンから喜びの声が上がった。

ラストチューンは「SINGING」。最後にシンガロングするには、うってつけの曲だ。ようやく弱まってきた雨の中、2時間半のライブはとても自然な流れの中で幕を閉じた。「何があっても一緒にやりとげましょう」というIKEの予言は、現実のものになった。

メンバーが去った後、スクリーンに『KINGDOM』の発売日(10月11日)に続いて、来年1月からスタートする全国ホールツアーのスケジュールが映し出される。各地の会場が明らかになるたびに歓声が上がることで、ここコニファーフォレストに全国いろいろな場所からオーディエンスが集まってきたことがわかる。

SPYAIRはこの日、エンターテイナーとしての高い資質と、その輝く近未来を、見事に示したのだった。

文 / 平山雄一 撮影 / 鳥居洋介、三浦知也、中島未来

SPYAIR JUST LIKE THIS 2017
2017年7月29日 富士急ハイランド・コニファーフォレスト

セットリスト

01. THE WORLD IS MINE
02. LIAR
03. イマジネーション
04. GLORY
05. COME IN SUMMER
06. Blowing
07. ファイアスターター
08. RAGE OF DUST
09. Come on
10. No where, Now here
11. Be with
12. I want a place
13. Stand by me
14. BRING IT ON 〜Battle of Rap〜
15. ROCKIN’ OUT
16. Turning Point
17. THIS IS HOW WE ROCK
18. JUST ONE LIFE
19. ジャパニケーション
20. サムライハート(Some Like It Hot!!)
21. JUST LIKE THIS
22. 現状ディストラクション
《アンコール》
01. MIDNIGHT
02. My Friend
03. SINGING

その他のSPYAIRの作品はこちらへ

ライブ情報

5th Album『KINGDOM』発売&全国ホールツアー決定!

http://www.spyair.net/kingdom2018/

SPYAIR (スパイエアー)

IKE (Vocal) / UZ (Guitar & Programming) / MOMIKEN(Bass) / KENTA (Drums)の4人から成る愛知県出身4人組ロックバンド。
2005年結成。2010年メジャーデビュー。デビュー以降、積極的なリリースと圧倒的なライブパフォーマンスで人気を博す。
東京ドームでのステージをバンドの次なる目標に掲げ、夢の実現に向けて邁進中!
8月30日にはニューシングル「MIDNIGHT」を、10月11日には2年ぶりとなる5thアルバム『KINGDOM』を発売。
この作品を携え、2018年1月26日東京・中野サンプラザを皮切りに全国ホールツアー『SPYAIR TOUR 2018 -KINGDOM-』を開催する(全国21都市22公演)。
また国内だけではなく海外でのリリースはもちろん、韓国、台湾、中国、フランスでの単独公演を成功に収めるなど世界での活躍にも期待が高まる。

オフィシャルサイトhttp://www.spyair.net

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