Interview

wacci ポップスに対する飽くなき探究心が結実したアルバム。“感情百景”に込めた15曲の情熱

wacci ポップスに対する飽くなき探究心が結実したアルバム。“感情百景”に込めた15曲の情熱

今年5月に東京・赤坂BLITZで初日を迎えたwacciのワンマンライブ「あっち、こっち、そっち、わっちツアー2017〜感情百景〜」のMCで、ほぼ全ての楽曲のソングライティングを務めるヴォーカル&ギターの橋口洋平が「過去最高傑作のアルバムができました。自信作なので楽しみに待っていてください!」と力強く語っていたニューアルバム『感情百景』がついにリリースされた。メジャーデビューから3年9ヶ月かけてリリースした前作『日常ドラマチック』から、たった1年という短いタームで制作された本作は、全15曲が収録された大ボリュームの充実作。ディスコやロック、AOR、シティポップ、ボサノヴァとバラエティに富んだサウンドながら、聴き手の日常に優しく寄り添うポップスであるという一切ブレてない。ポップスに対する飽くなき探究心と絶対にこの歌を届けるんだという執念にも似た情熱を感じる1枚となっている。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 森崎純子


wacciの現時点での1つの答えが出せた(橋口)

橋口君が「過去最高傑作」と言い切っていたアルバムがリリースされました。

橋口 フルアルバム2枚しか出してないので、1/2なんですけどね(笑)。でも、デビューから3年9ヶ月経って初めて出したフルアルバムは、どうしてもシングルコレクション的なところがあって。3年9ヶ月活動したら自然にできた1枚みたいな感じだったんですね。でも、そこから1年経って、今回のアルバムは、wacciを結成して、デビューして、いろんなことを学んで、お客さんにもいろんなことを教えてもらって。wacciというバンドがここまで活動してきたからこそできた1枚だと思うし、この先も続いてくwacciの現時点での1つの答えが出せたというか。wacciというバンドが本気を出してアルバムを作ったら、こんなにいいアルバムになるんだぜ! っていうことを表せたんじゃないかと思います。王道ポップスを、みんなで前を向いてやってるバンドってそんなにいないと思うし、そこを一生懸命に突き詰めた結果できたアルバムかなと思ってますね。

小野 大半が新曲なんですけど、前作から打って変わって、僕らが今やりたいことをやって、すぐに出せるっていうスピードがいいなと思ってて。僕は前回のツアーから、「バンドがいい状態にいる」と思っていて。その状態のまま曲作りに臨めて、一気にリリースまで駆け抜けられたことが嬉しいですね。

因幡 僕らの強みの1つって、曲の振り幅だったりするのかなと思っていて。今作もアレンジを考えるにあたり、そこをちょっと意識したところがあって。個人的に「ちょっとやり過ぎちゃったかな?」って思った瞬間もあったんですけど、蓋を開けてみたら、橋口の歌詞と歌唱があればちゃんと一本、筋が通るんだなって感じて。そういう意味では、自分の想像を超えた、いい振り幅の、バランスのあるアルバムになって、すごく嬉しかったですね。

村中 いいアルバムができたなっていうのは大前提として、その中でもギタリストとしての自分を遺憾なく出し切った感があって。今回は自分のエゴも入れつつ、「wacciってこうじゃなきゃいけないよね」っていう枠を、1回、無視しちゃえって思ったんですね。僕、ギターを始めて20年になるんですけど、20年間やったことを入れられたのかなっていうアルバムになったと思います。

横山 前作で3年9ヶ月間で出したシングルや配信の楽曲を集めても、十分アルバムとして成り立つんだっていう、僕らの中で一貫性が出せた実感があったので、今回はよりバリエーションが豊かになりましたし、1つのアルバムとして綺麗にまとまったとも思ってます。あと、<感情>の歌入れの後、一人で聞きながら帰っていたときに、「あ、この曲を作るためにこのバンドやってるんだな」って思ったくらいの手応えがあって。アルバム全体を通しても同じというか、「このアルバムを出すためにwacciをやってるんだな」って思えるような仕上がりになったと思ってます。

ラブソングという意味では、この歌を書くためにここまで曲を書いてきたのかなと思える1曲(橋口)

リード曲になっているバラード「感情」はどんなところから生まれた曲でした?

橋口 ここまでまっすぐなラブソングを書いてなかったなって、ずっと思ってたんですよね。音楽を始めたばかりの頃、<愛してる>とか<抱きしめたい>っていう言葉を使うことに抵抗があって。歌として軽はずみになってしまうんじゃないかって思っていたんですよね。高校生の路上時代の僕は、「うまくいかないことがあったけど、明日から頑張ろう」っていう歌から始まっているので。でも、いつかまっすぐに<愛してる>っていうことをちゃんと言える日が来るのかなって思いながらいて。そういう意味では、今までずっと描きたくてもなかなか書けずにいたものが、このタイミングでやっと書けたのかなって思って。横やんが言ったように、ラブソングという意味では、この歌を書くためにここまで曲を書いてきたのかなと思える1曲になったなと思います。

完璧じゃない二人を描いてるからリアリティーがあるし、ぐっと来ちゃいますね(村中)

これはウエディングソングですよね。として捉えていいですか?

橋口 そういう風にもとれますね。お互いの関係を遡りながら、綺麗事じゃないものもたくさん入ってて。よりリアルに伝える歌なのかな。今しか書けない曲かなと思います。アレンジははじめちゃんがやってて。

因幡 歌詞が強くて、畳み掛けるように言葉が来るので、今まで以上に、言葉を前面に押し出したほうがいいと思って。本当に手抜きじゃなく、スーパーシンプルに行けたらいいなっていう思いで作りましたね。みんなで練習してるときからハマった感じがあったし、レコーディングする前から、名曲の予感がプンプンしておりました。

小野 シンプルの極みみたいなことをしていて。橋口君の弾き語りのデモからそんなに変わってない。はじめちゃんが持ってきてくれたベーシックのアイデアにもシンプルなベースが入っていて。やっぱりこれなんだなって思って、自信を持って、何もしない演奏を心がけました。

村中 「感情」は誰かのことが思い浮かぶ曲なので、弾いてる僕自身も昔好きだった女の子とかが出て来たりするんですよね。完璧じゃない二人を描いてるからリアリティーがあるし、ぐっと来ちゃいますね。

横山 ライブではこれまでずっと、「東京」を待ってるお客さんというのがいて。今、ツアーを12本やってたところなんですけど、違う角度で「感情」を待ってるお客さんがいるなって感じてて。何より、「東京」よりも、場の全員が橋口に集中して聴いてるんですよね。それこそ、一語一句を聴き逃さないようにしようっていう集中力が出てる曲で、そういう意味での一体感も出てるなと思いながら、大変なハモリをやってます。

「東京」と並ぶ名曲になってますよね。また、アルバムのタイトルにも“感情”という言葉が入ってますね。

橋口 このアルバムは「感情」が柱になるだろうなと思ったし、人って、日常生活でいろんな感情を持つと思っていて。まずは、このアルバムの中に入ってる曲を聴いて、自分が過去に抱いたことのある感情を思い返せるような1枚になったらいいなと思って。さらに、この曲たちを聴いて、新しい感情に出会えるような1枚になって欲しいと思ってます。人の感情って細分化したら、「百景」どころじゃなく、いろんな場面でいろんな感情があると思うんですけど、そういう感情と素直に向きあえる1枚になったらいいなと思います。

1 2 >