Interview

『関ヶ原』で〈小早川秀秋〉を演じる東出昌大、「リアリティと迫力のある映像表現に歓喜にも似た驚きがありました」

『関ヶ原』で〈小早川秀秋〉を演じる東出昌大、「リアリティと迫力のある映像表現に歓喜にも似た驚きがありました」

どんなに歴史に疎くても、誰もが一度は学校の授業で触れたことがあるであろう“関ヶ原の戦い”。日本の未来を決した、かの有名な合戦を舞台にした司馬遼太郎のベストセラーが、主演に岡田准一を迎え、原田眞人監督によって映画化された。
映画『関ヶ原』では、“関ヶ原の戦い”において“西軍”と“東軍”に分かれて激突する〈石田三成〉と〈徳川家康〉との関係性、それを取り巻く〈豊臣秀吉〉や〈前田利家〉をはじめとする武将たちの人間ドラマ、そして関ヶ原の合戦を、新たな解釈を交えながら、重厚かつダイナミックな映像で表現している。
本作のインタビュー第一弾では、“関ヶ原の戦い”におけるキーマン〈小早川秀秋〉を演じた東出昌大に、初参加となる原田組でのエピソードや、裏切り者のイメージの強い〈小早川〉を演じるにあたっての工夫や葛藤などの率直な気持ちを語ってもらった。

取材・文 / 篠崎葉 撮影 / 三橋優美子
ヘアメイク / HIROKI(W)
スタイリスト / 檜垣健太郎(little friends)


〈三成〉と会話を交わすシーンの撮影日は「朝からとてつもない緊張感に包まれていました」

今回、東出さんが演じた〈小早川秀秋〉は、“関ヶ原の戦い”において戦いのカギを握る役目を負っています。〈小早川〉役のオファーがあったときはどんなお気持ちでしたか?

東出 もともと『関ケ原』は好きな作品だったので、オファーをいただいたときには戸惑いがありました。というのも、従来の〈小早川〉像って、身長も低く、病弱で愚鈍で臆病者のイメージで、タッパのある僕にお話が来たこと自体が意外だったんです。だけど原田(眞人)監督とお話をした際に、「〈小早川〉は“関ヶ原の戦い”においては裏切り者としてのイメージが強いけど、それ以前に不遇の時代があったことにフォーカスを当てれば、これまでの〈小早川〉とは違う描き方ができる」とおっしゃっていて。それを聞いたことで迷いがなくなったし、僕自身も〈小早川〉を演じきることができたと思っています。

原田組での撮影はかなり独特だという話を聞きますが、初参加されてみての感想は?

東出 原田組に参加経験のある役者さんから「一度、原田組を経験すると、また原田組に戻りたくなる」という話を聞いたことがあって、とても楽しみにしていました。他の出演者の方のコメントを見たら、みなさん一様に“緊張感”という言葉を出されていましたが(笑)、本当に、とても緊張感のある現場で。まさにそれを象徴するようなエピソードが一つあるんですけど、現場に入った初日、原田監督に「おはようございます」と挨拶をしたら返事がなかったんです。他の出演者の方やスタッフさんに対しても、同様に返さないんです。そしたら監督が「現場は戦場なんだから、『おはようございます』と言って入ってくるのは違うんじゃないか」という趣旨のことをおっしゃって。それ以降は、ロケ地のホテルから出た瞬間からもう撮影が始まっているんだという意識で臨んでいました。今の日本で映画を一本撮るためには、時間や予算などの制約がたくさんあるということは嫌でも耳に入ってくるのですが、そういう制約がある中でこれだけスケールの大きい作品が撮れたのは、原田監督だからこそなんじゃないかな、と完成した作品を観て思いました。

〈小早川〉役に対して、監督から具体的なアドバイスや指示などは受けましたか?

東出 あまりなかったのですが、印象的なのは、クランクイン前日に監督が冗談のように「全国の“小早川さん”が胸を張れるような〈小早川秀秋〉であってほしい」とおっしゃっていたんです。現場ではその思いが僕にとっての大きな背骨となって、従来のなよなよして、蒼白でどっちつかずの情けない〈小早川〉ではなく、武士として、未熟かもしれないけど気概を持って背筋を伸ばしている人物像になればいいな、という一心で演じていました。

日本史をあまりよく知らない方に簡単に説明するとしたら、〈小早川秀秋〉は、“関ヶ原の戦い”で〈石田三成〉を裏切って東軍に寝返り、〈徳川家康〉率いる東軍を勝利に導くきっかけとなった人物ですよね。

東出 はい。血筋的には〈豊臣秀吉〉の奥さん〈北政所〉のお兄さん〈木下家定〉の五男で、〈秀吉〉の養子になるんです。わかりやすく例えると、一族経営の会社で急に御曹司扱いになり、プレッシャーの中でなんとかその役目を果たしていたんですが、〈秀吉〉に実子〈秀頼〉が生まれたからといって僻地に飛ばされてしまうという、まさに権力構造に翻弄された人生を送っていて。実際の〈小早川〉は若いうちから酒に溺れ、“関ヶ原の戦い”のあとは心を病んで21歳という若さで亡くなってしまうのですが、彼は生まれてからずっと、自分の不遇と闘って来た人なんです。この映画の終盤に、〈石田三成〉(岡田准一)と〈小早川〉が言葉を交わすシーンがあるのですが、〈三成〉の“義”に触れたことでああいう一面を出すことができたのかな、と思います。それは原田監督の手腕によるものですが、監督が〈小早川〉をただの不遇な青年ではなく、彼の持つ葛藤や、その先にある希望といったものを描いてくださったからこそのように思います。

今のお話にもありましたけれど、合戦後に〈三成〉と言葉を交わすシーンは、原作と大きく異なる解釈となっていますが、そのシーンの撮影に挑まれたときのお気持ちは?

東出 あのシーンがクランクアップだったのですが、撮影日の朝からとてつもない緊張感に包まれていました。原作からは離れていますが、あのシーンで初めて、〈小早川〉は武将になれたと思うんです。血縁の力でずっと持ち上げられて来たけれど、〈三成〉だけが自分を武将として認めてくれた。そこに誠実に向き合おうとした結果、ああいうシーンになったのではないでしょうか。岡田さんが器の大きい〈三成〉だったからこそ、僕の芝居も受け止めてくださったのかなと思います。