Interview

『関ヶ原』で〈小早川秀秋〉を演じる東出昌大、「リアリティと迫力のある映像表現に歓喜にも似た驚きがありました」

『関ヶ原』で〈小早川秀秋〉を演じる東出昌大、「リアリティと迫力のある映像表現に歓喜にも似た驚きがありました」

歴史から人間ドラマをそこに見て、目をキラキラさせることが好きなんです

本作は合戦のシーンも非常に見応えのあるものになっています。戦の非道さや残虐性もしっかりと再現されたリアリティのある描写になっていますが、何か特別な準備をされたりしましたか?

東出 今回は『日本のいちばん長い日』(15年/原田眞人監督)で、旧日本軍の軍事指導に入っていらっしゃった方々による“全体演習”がクランクイン前にあったんです。時代は違いますが、旧日本軍の所作や号令などを実際に体験してみることで、戦の雰囲気がわかるのではないかという提案のもと、役者もエキストラの方も演習に参加しました。まずは直立不動で「〈小早川秀秋〉役、東出昌大です!」という挨拶から始まって、少しでも声が小さいと「腹から声出せ!」と怒号が飛んでくるので、10回くらいやり直しさせられたり(笑)。別の日は富士山の裾野へ行って騎馬の練習をしたりと、西軍も東軍も一丸となって、事前準備の段階から戦の様相を呈していました。

京都・東本願寺をはじめとする重要文化財での撮影というのもストーリーに説得力や重厚感を与えていますね。

東出 場の力をお借りできました。そこに滝藤(賢一)さん演じる〈豊臣秀吉〉が鎮座しているだけで、荘厳な空気が流れていて、まさに歴史の一幕に立ち会っている気持ちになりました。ああいうロケーションで撮影させていただく際は、絶対に傷をつけたり汚したりするわけにはいかないので、繊細な動きを求められる雰囲気の現場になるんですけど、良い意味で張り詰めた空気があって。柱の一本一本に時代や歴史が染み付いているのが感じられて、とても素晴らしい経験になりました。

司馬遼太郎の代表作の映像化となりますが、原作から改変されたシーンも本作にはありますよね。そのことに対して東出さんはどう思われますか?

東出 僕はそれも歴史の楽しみ方の一つだと思っています。司馬史観は独創的だからと切り捨てる考え方もありますし、たとえば司馬先生の『坂の上の雲』では、ロシアのバルチック艦隊のロジェストヴェンスキーという人物がネガティブに描かれているのですが、最近の研究者の間では、ロジェストヴェンスキーはめちゃくちゃ良い人だったみたいな発見があって。それすらも歴史ファンは楽しいんですよ。何かを学ぶとか、これが正解というばかりではなく、人間ドラマをそこに見て、目をキラキラさせることが僕は好きなんです。いろいろな見方で、賛も否も含めて楽しんでいただければ、と思います。

本作は“関ヶ原の戦い”を中心に、〈石田三成〉、〈豊臣秀吉〉などの人物をよりドラマチックに描いており、東出さんを始め、歴史好きの方にとっては新しい発見もたくさんあるのかなと思いますが、一方で歴史に詳しくない方にオススメするとしたら、どんな風に楽しむのが良いでしょう?

東出 役所広司さん演じる〈徳川家康〉という悪い人がいて、そいつが嫌な性格なんですよ(笑)。その〈家康〉を、〈三成〉という正義の心を持った若者がぎゃふんと言わせようとする映画です。それが成功するのかどうかを楽しみながら観ていただければと思います。〈家康〉は、本当に嫌なタヌキ親父で(笑)。でっぷり太っていて腹も出ていて、計算高くて悪巧みをしているときに、すっごく素直に嬉しそうな顔をしたりするんですよ。それが余計に腹が立つんです(笑)。役所さんのお芝居のスケールのコントラストが見事で、見入ってしまいました。

監督の世界に没入することが役者としての最初のステップ

東出さんは、6月まで放送されていたドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS)のストーカー気質の夫役のように、爽やかな好青年というパブリックイメージから逸脱したような役にも果敢にチャレンジしておられます。幅広い役柄にチャレンジしたいというお気持ちがあるんでしょうか?

東出 僕はあくまで一役者であって、「こういう風に見せたらおもしろいでしょ」って決めるのは監督なんです。だからセリフを覚えて、現場で監督の指示に従いつつ、自分で思った通りにお芝居をするだけで、やっていることは地味だと思っています。役に入るための第一段階として、クランクイン前に、その監督が以前に撮っていらっしゃったドラマや映画を観てから現場に入るようにしていて。この監督だったらこういう演出があるのかな、こういう撮り方をされるのかな、と楽しみや期待を持ってから、監督の世界に没入するっていうことが最初のステップです。あまり自分で演じ分けているとか、「あの作品ではこうやったから、この作品では別のやり方をやろう」とか、作品同士を比較するようなことは全然してないんです。自分の出ている作品はどんな手法で観ても、自分では冷静に評価ができないのですが、僕自身が丸ごと監督の材料になっていると、自然にお芝居の仕方や見え方が変わってくるのかなと思います。

それでは最後に、映画『関ヶ原』をより深く楽しむためのアドバイスをいただけますか?

東出 “関ヶ原の戦い”は、誰もが知る大きな合戦ながら、これまでなかなか映像化されてこなかったと思うんです。それが今回、こういう形であれだけダイナミックな映像で表現することができた。それだけでもとても意義のあることだと思います。合戦のシーンは僕が役柄上、参加できていなかったこともあり、歴史好きの一観客として楽しんだのですが、あまりのリアリティと迫力のある映像表現に、歓喜にも似た驚きがありました。歴史に詳しい方はもちろん、そうでない方にも、必ずや楽しんでいただけるはずです。

〈石田三成〉役の岡田准一のインタビュー記事は近日公開

東出昌大

1988年生まれ、埼玉県出身。モデルとして活躍後、2012年の映画『桐島、部活やめるってよ』(吉田大八 監督)で俳優デビュー。同作にて、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞など数々の新人賞を獲得した。2013年にはNHK連続テレビ小説『あまちゃん』『ごちそうさん』と2作連続で出演、最近ではTBSドラマ「あなたのことはそれほど」に主人公・美都の夫である渡辺涼太役で出演し、話題になる。2014年の映画『クローズ EXPLODE』(豊田利晃 監督)で映画初主演を飾り、その後も【映画】『寄生獣』(14/山崎貴 監督)、『GONIN サーガ』(15/石井隆 監督)、『聖の青春』(16/森義隆 監督)と話題作に次々と出演。今後の公開待機作に『散歩する侵略者』(9月9日公開/黒沢清 監督)、2018年公開予定の『菊とギロチン -女相撲とアナキスト-』(瀬々敬久 監督)、『寝ても覚めても』(濱口竜介 監督)、『OVER DRIVE』(羽住英一郎 監督)がある。また9月18日より、『散歩する侵略者』のスピンオフドラマ『予兆 散歩する侵略者』がWOWOWで放送される。

オフィシャルサイトhttp://www.humanite.co.jp/actor.html?id=28

東出昌大さん画像ギャラリー

映画『関ヶ原』

2017年8月26日公開

混乱を極めた戦乱の世。“官僚派”の代表格〈石田三成〉(岡田准一)と“武断派”の武将たちは、〈豊臣秀吉〉(滝藤賢一)が命じた“朝鮮出兵”をきっかけに対立を深めていった。豊臣家への忠義から立ちあがる〈三成〉と、天下取りの野望を抱く〈徳川家康〉(役所広司)。やがて名だたる大名が、〈三成〉率いる“西軍”と、〈家康〉率いる“東軍”に分かれ、後の世で“天下分け目の関ヶ原”と語られる通り、関ヶ原で歴史的節目の戦いに臨むこととなる。〈三成〉と〈家康〉は、いかにして世紀の合戦に向かうのか? そして、命を懸けて〈三成〉を守る忍び〈初芽〉(有村架純)との密やかな恋の行方は……? 権謀渦巻く中、愛と正義を貫き通した“純粋すぎる武将”〈三成〉の戦いが幕を開ける。

【原作】司馬遼太郎『関ケ原』(新潮文庫刊)
【監督・脚本】原田眞人
【出演】
岡田准一 有村架純 平岳大 東出昌大 / 役所広司
北村有起哉 伊藤歩 中嶋しゅう 音尾琢真 松角洋平 和田正人 キムラ緑子
滝藤賢一 大場泰正 中越典子 壇蜜 西岡德馬 松山ケンイチ
麿赤兒 久保酎吉 春海四方 堀部圭亮 三浦誠己 たかお鷹 橋本じゅん 山村憲之介 宮本裕子 永岡佑 辻萬長

【配給】東宝=アスミック・エース

オフィシャルサイトhttp://wwwsp.sekigahara-movie.com/

©2017「関ヶ原」製作委員会

【関ケ原 原作本】

関ケ原(上)

司馬遼太郎(著)
新潮文庫

関ケ原(中)

司馬遼太郎(著)
新潮文庫

関ケ原(下)

司馬遼太郎(著)
新潮文庫

関ケ原(上中下) 合本版

司馬遼太郎(著)
新潮文庫

坂の上の雲(一)

司馬遼太郎

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