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【追悼】チェスター・ベニントン 世界的人気のロック・バンド、リンキン・パークのヴォーカリスト逝く

【追悼】チェスター・ベニントン 世界的人気のロック・バンド、リンキン・パークのヴォーカリスト逝く

世界的な人気を誇ったロック・バンド、リンキン・パークのヴォーカリスト、チェスター・ベニントンが7月20日、カリフォルニア州ロサンゼルスの自宅で死亡しているのが発見された。41歳、首吊り自殺だった。一時期リンキン・パークと活動を並行し自らが後任のヴォーカリストとなったストーン・テンプル・パイロッツ。その元ヴォーカリスト、スコット・ウェイランドの急死(2015年12月)、同じく90sグランジ・ムーヴメントの立役者であり親友だったサウンドガーデンのクリス・コーネルの直前自殺(2017年5月)。相次ぐ死を背負いながら、21世紀最高のロック・バンドとうたわれたリンキン・パークのフロントマンとして歌い続けることは精神的にも限界だったのかもしれない。またもや「声」を失ったアメリカン・ロック界の打撃は計り知れないが、いまはまだその「声」を辿ることでチェスターへの最大敬意を表したい。

チェスター急逝後、ラジオでの放送回数、ダウンロード&ストリーミング回数の集計が反映された8月12日付Billboard「Hot Rock Songs」チャートTOP50内に、リンキン・パークの楽曲が23曲ランクインした。1年半前にデヴィッド・ボウイが残した21曲同時ランクインの最多記録を更新したことになる。「イン・ジ・エンド」「クローリング」「ワン・ステップ・クローサー」「ナム」「サムホエア・アイ・ビロング」「ブレイキング・ザ・ハビット」「フェイント」と上位にはリンキン初期アンセムがズラり。“初期衝動”を追い求めるリスナーが多いことが如実となった興味深いチャートだったが、数字の向こうにリンキン・パークがロック・シーンのフロントで展開した飽くなき音楽探求史が透けてみえる。

リンキン・パークは、スクリーム&クリームの二面性を備えたチェスター・ベニントン、ラップを軸とするマイク・シノダという2人のシンガーを軸に、ギター、ベース、ドラム、DJというバンド編成でシーンに登場。1stアルバム『ハイブリッド・セオリー』(2000年)で、ヘヴィかつメロウ、そこにラップが乗るという所謂“ニューメタル”を展開し、オルタナを経た21世紀の幕開けをHybridに飾った。新時代と共鳴しながら600万枚のセールスを突破し2001年最も売れたロック・アルバムとなった同作は、4thシングル「イン・ジ・エンド」が2002年3月に全米チャート最高2位到達時に1000万枚を突破、リンキンはシーンの旗手となっていた。世界中のチャートを席巻した次作『メテオラ』(2003年)では、全13曲シングルカット可能と言われた30分台の濃縮&高質なロックを誇示しもはや追随を許さない孤高の存在に。期待に応えることができない若者の無力感を歌った名曲「ナム」もここから生まれている。初期2作がリンキンのベースと考えているリスナーは今でも多いが、巨大バンドとなったリンキン・パーク自身はその場に居座ることを拒絶。ここから更なる飛躍を目指し始めることで、結果的に多難の時代を迎えることになる。

1stアルバム『ハイブリッド・セオリー』(2000年)

2ndアルバム『メテオラ』(2003年)

3rdアルバム『ミニッツ・トゥ・ミッドナイト』(2007年)で “ニューメタル”を封印しストレートなスタジアム・ロックを展開。4thアルバム『ア・サウザンド・サンズ』(2010年)では打ち込み主体の楽曲が増えエレクトロな様相を露呈。5thアルバム『リヴィング・シングス』(2012年)は前作延長上で初期アプローチを復活。6thアルバム『ザ・ハンティング・パーティー』(2014年)ではハードロック/ヘヴィメタル色を強めた。アルバムごとに新しい方向性を模索し革新的歩みを続けてきたリンキン・パークだが、常に発売直前から「リンキンが再びニューメタルに帰還したらしい!」という切望に近い声があがっていただけに、蓋を開けた熱烈ファンからも「今回も違った…」が繰り返される年月が続くことになる。ここ10年は“最高傑作”を届けるメンバーと “期待はずれ”の往年ファンの応酬が続く不幸な時代だったとも言える。それでも軒並み全米アルバム・チャートは初登場1位。オリコン総合チャートでも常にTOP10入り。厳しいファンの視線を横目に彼らの人気が落ちることがなかったのは、やはりチェスターの存在が大きかった。政治や個人など時に矛先を変えながらも非凡な歌唱力に裏打ちされた力強いメッセージは、新しいリスナーのハートを鷲掴みするほどの圧倒的な力を備えていた。メインライティングを担っていた盟友マイク・シノダがそのことを一番理解していたように思う。サウンドやラップよりもチェスターの「声」を前面に出すことこそがリンキン・パーク、強いてはアメリカン・ロックの未来を照らすLightになることを信じていたように思えるのだ。そして迎えた運命の2017年。

最新7thアルバム『ワン・モア・ライト』(2017年)は、ニューメタル、ロック、EDM、ポップスと言葉に出来るジャンルを軽々と超えたリンキン史上最も美しいアルバムとなった。何かをこじ開けようとする強引さは皆無に等しく、優しさとぬくもりさえ漂う。ロックか否かの問いかけよりも純粋なまでに好きな音楽だけを吸収していた頃を想い出してみようよ。そんな囁きさえ聞こえてきそうな全10曲。もしかしたらジャケットで陽を浴びる6人の子供は、大海原に向かうまえの無垢なメンバーの後ろ姿なのかもしれない……。

初めて収録曲名からアルバム名と引用となったタイトル曲「ワン・モア・ライト」。メンバーの関係者が亡くなった時に書かれた曲で本来ならばクリス・コーネルに捧げる曲だったはずだが、今となってはチェスター自身の葬送曲に聞こえてしまうのは、もはや仕方がないことだろう。抑揚を押さえた歌声だけが今は耳に残る。Who cares when someone’s time runs out(誰かの時が尽きたことをいったい誰が気にかけてくれるのだろう?)/If a moment is all we are(もし僕らの全てがほんの一瞬のことならば)/We’re quicker, quicker(僕らはより早く生き急ぐだけ)。R.I.P.

文 / 安川達也

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