Interview

ドラマ『黒革の手帖』で確かな存在感を見せた内藤理沙ー「悪女極めたい!」

ドラマ『黒革の手帖』で確かな存在感を見せた内藤理沙ー「悪女極めたい!」

視聴率二桁キープを続ける話題のドラマ「黒革の手帖」の第4話で料亭<梅村>の仲居から銀座のクラブ<カルネ>のホステスに転身する島崎すみ江を演じた内藤理沙。初の悪女役でありながら、派遣社員として勤めていた銀行から1億8000万円を横領し、銀座のクラブのママとなった原口元子(武井咲)や医科進学ゼミナールの橋田理事長(高嶋政伸)らを相手に見事な悪女ぶりを見せてくれた彼女に、かねてより熱望していた同ドラマへの出演を果たし、初の悪女役に挑んだ心境を訊いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / キセキミチコ/KISEKI inck


銀座のクラブに連れて行っていただいて勉強させていただきました。

ドラマ「黒革の手帖」への出演が決まった時の心境から教えてください。

すごく嬉しかったんですけど、その反面、『大丈夫かなぁ』っていう緊張感と不安がありました。他の出演者の方々もすごい方ばかりなので、その中に自分が入ってやっていけるかなとか、歴史ある作品を汚さないようにしないとっていうのはあって……。でも、私としては、憧れの米倉(涼子)さんの作品の中で一番好きなドラマだったので、その作品に出られるっていう嬉しさはやっぱりありましたね。

米倉さんが主演を務めていたドラマ「黒革の手帖」にどんな魅力を感じてました?

カッコ良さですね。私がこの世界に入ったばかりの時期だったので、会社から『いろんなドラマを見て勉強するように』っていう指示を受けていて。それまではあまりドラマとかを見ていなかった私が見て、すごく印象に残っているのがこのドラマだったんです。子どもながらに大人の世界の話だなと感じたし、しかも、先輩である米倉さんらしい、女性としてカッコよさが出てるので、すごく好きな作品なんです。

では、そんな憧れのドラマの撮影に入るにあたって何かリサーチされたりしましたか?

銀座のクラブに連れて行っていただいて勉強させていただきました。

ドラマでもおなじみの「お勉強させていただきました」が出ましたね!!

ふふふ。でも、お客さんとして行っただけなので、普通に他のお客さんもいる中で、ホステスの方たちにお話を聞いたりとか、他のお客さんの……じーっと見ちゃダメなんでしょうけど見ちゃったりして(笑)。どうやって楽しまれてるのかなっていう部分とか、雰囲気を感じたりしてきました。行ってみないとわからない空気感っていうのはあるので。

初めての銀座のクラブで何を感じました?

お店に入った瞬間は、すごくキラキラした世界だなって。私自身も憧れてしまうなって思うくらいだったんですけど、ホステスの方にお話を聞いてると、楽しいだけじゃなくて。表向きはキラキラしてるけど、やっぱり大変なこともある。ホステスさんたちは『大変だ』とは言わないんですけど、お話を聞くかぎり、本当に努力されていて、精神的にも体力的にも大変なお仕事なんだなって。元子じゃないですけど、それなりの覚悟がないと、このお仕事でやっていくのは大変なことなんだなっていうのはすごく感じましたね。

楽しめました?

いや、緊張しちゃって、楽しむっていうよりも見てお勉強させていただくっていう感じでした。でも、ホステスの方も、私が同性でも全然気にせずに気さくに、たくさん話しかけてくださって。銀座のクラブってちょっとお高いイメージがあるけど、いざ行ってみたら、ホステスの方たちはお客さんに合わせて会話してくれるので、緊張してるなと思えばあえて気さくに話しかけてくださったりする。素敵な方たちだなって思いましたね。

すみ江の良さとして残しつつ、人間の弱いところも出すようにしました。

ご自身が演じるすみ江役についてはどうとらえましたか?

最初は仲居として料亭<梅村>で働いていて、そんなに目立つ子でもないんですね。でも、梅村が売られてしまうことになり、働き口がなくなったら困るということで、<カルネ>に行く。ホステスになったら、仲居の時とはまったく環境が変わるじゃないですか。料亭に来ていたお客さんが<カルネ>にも呑みに来られるんですけど、仲居とホステスとではお客さんの接し方が全然違ってて。そこで、すみ江自身も女としての喜びも感じますし、変わりたくない、流されちゃいけないって思っても、目の前に大金を出されたら、人間の弱い部分が出て、変わってしまうところもでてくる。すみ江もそんな弱い部分を持ってたんだなっていうのを感じたので、仲居の時とホステスの時での変化がちゃんと演じられればいいなと思ってました。

それぞれどんなアプローチで撮影に臨みました?

仲居の時は本当に目立たず、お客様をご案内する所作を大事にっていうのを一番にしていました。ホステスになってからもその部分は基本ベースにしないとすみ江じゃなくなってしまうので、ホステスになって、いきなり派手にガサツになるのは違うと思って。
だから、すみ江の良さとして残しつつ、人間の弱いところも出すようにしました。仲里依紗さん演じる波子は、ママと思いきり喧嘩してましたけど、すみ江自身は一度も声を張り上げたことがなくて。信頼してもらっているにもかかわらず、ひそかに裏切るという、また違う悪女なので、これもまた怖い部分なんじゃないのかなって。迫力っていうよりも表裏がすごくある人なのかなって。

©テレビ朝日

仲居からホステスへと環境が変わったことで、まるで性格も別人のように変わってしまいますよね。そこは理解できました?

理解はしたくないけど……でも、いざ自分がその立場になったら、あれだけの大金を目の前に出されたら揺れてしまう部分も出て来てしまうんじゃないのかな、とは思いますね。もちろん、絶対にそうなりたくないっていう気持ちもありますけど、難しいところですよね(笑)。それまで地道に仲居として働いていて、クラブに来るお客さんとも料亭で接していたのに、ホステスになったとたん、同じお客さんから違う扱いをされる。女としては、喜べるものもあると思うんですよね。特別扱いされる上に、お金……怖いなって思いました(笑)。

(笑)女の幸せっていうのもこのドラマのひとつのテーマになってますよね。

そうですね。このドラマに出て来る人たちは誰のことも信用してない。その悲しい部分をきっとみんな、お金で埋めてて。私は<幸せとは?>と聞かれたら、家族が笑って暮らせるのが一番ですね。喧嘩したとしても、健康で病気なく生活できているのが一番じゃないかなと思いますね。一人っ子で、母と友達同士みたいな感覚なので、よく些細なことで喧嘩するし、よくぶつかりもするんですけど、時間が解決して、なかったことになってたりしてて。もしも母が病気になったら、あの喧嘩すらできないんだと思うと、悲しくなるんです。お金がなかったら、辛い部分もあると思うんですけど、なかったらなかったなりに頑張ってどうにか家族3人で力を合わせてやっていくんじゃないかなって思いますね。

すみ江も最初はそうだったかもしれないですよね。家族のために働くんだって。

絶対にそうですよね。すみ江は長野の田舎出身で、実家に仕送りをしてるから働かなきゃいけない。守るべきものがあるし、そういう優しさも持ってる子なんですよね。でも、だからこそ、やっぱりお金は必要で。最初は地道にやっていこうって思ったけど、いざ、銀座のクラブの世界に飛び込んだら、簡単にお金って手に入るんだっていうことを知ってしま+ったっていう。そこが、人間の弱さかなって思います。

ママとの関係性についてはどう考えてました? 

まずは信用してもらえるようにと思ってました。ガツガツ行きすぎても引かれてしまうし、引きすぎても信頼してもらえないし。そういう距離感はちょっと難しかったんですけど、咲ちゃん自身が現場でママとしてしっかりと引っ張るように演じてくれてたので、私はついていくのみでした。年齢は私のほうが上ですけど、ママとしての存在感がすごかったので、私はホステスをやりたいからママのところに来ましたっていうそのままでいればいい感じで、やりやすかったです。

武井さんとはこれまでにも何度か共演されてますが、どんな関係ですか?

役柄上はいつも、あんまり仲いい役ではないですよね(笑)。普段は、役柄的にはすごく大人な役をされるんですけど、ふとしたときの笑顔とかはやっぱりまだ23歳の女の子なので、かわいいなって思うこともあって。撮影の合間とかは、食べ物の話ばかりしてますね(笑)。

内面が悪い女なので、そこを出すっていうのは本当に難しいなと思いました。

(笑)劇中ではそんな表情を全く見せないですけどね。

このドラマに出てる人は全員が悪人なんですけど、実際はやさしい方ばかりなので、撮影がすごく楽しいんですよ。私は咲ちゃんと高嶋さんと一緒になることがほとんどなんですよ。伊東さんや江口さんがいらした時もあったんですけど、仲居の時にご案内するシーンくらいで、カルネではほとんど絡みがなくて。高嶋さんとご一緒することがとても多かったんですけど、高嶋さんのアドリブは素晴らしいですよね。面白くて笑いをこらえるのが大変だったこともあるんですけど(笑)。私のことを考えてのアドリブですし、とても楽しくやらせていただきました。

高嶋さんとの関係性はどう考えてました?

最初はママを信用していたので、高嶋さんのところには、女としての覚悟を決めて行くんですけど、そこで、心をへし折られるんですよね。そこからまた高嶋さんの救いの手が出て来て、お金を積まれ、乗っかるっていう(笑)。出会ってからけっこう短期間なんですけどね。