Interview

伸びやかな歌声と端正なルックスで注目のビリー・タイ。ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』でマジック起こす

伸びやかな歌声と端正なルックスで注目のビリー・タイ。ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』でマジック起こす

今、ブロードウェイ・ミュージカルで最も注目される若手俳優といえば、ビリー・タイの名前が挙がるだろう。伸びやかな歌声と端正なルックスで日本のミュージカルファンのなかではすでに話題の人となっている。その彼がピーターパンの産みの親〈J.M.バリ〉を演じるブロードウェイ・ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』が、本場のアメリカ・カンパニーを引き連れ日本に初上陸する。ジョニー・デップ主演で2004年に公開された映画『ネバーランド』を下敷きに、〈バリ〉が伝説の物語「ピーターパン」を産み出す過程を描き、2015年にブロードウェイで公開されるや好評を博した感動作だ。
そのビリー・タイがプロモーションのため来日。9月より上演されるミュージカルについて熱く語ってもらった。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 相馬ミナ


ストーリーと〈バリ〉の想像力が化学反応を起こす――舞台でしか味わえないマジックです

2015年にブロードウェイで初演を迎え、600回を超えるロングランを果たした大ヒットミュージカル『ファインディング・ネバーランド』が待望の初来日を果たします。今の心境をお聞かせください。

日本で公演をしたことのあるキャストに「日本はこういう文化だよ」と教えてもらったし、昔から非常に興味を持っている国なので、アメリカのカンパニーと共に来日できるのは嬉しいですね。

演出は『タイム誌』で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれるほどのダイアン・パウルスさんです。主演の〈バリ〉役としてオファーされた時はどんなお気持ちでしたか?

私の演じる〈バリ〉は主演ですから、素晴らしい機会をもらえた感謝と、彼女の求める演技に答えられるかなという不安と、日々両方の気持ちと格闘しています。

ダイアンさんの演出の魅力はどこにあるとお考えですか。

2つあります。彼女は視覚的に物語を伝えることをマスターしている。例えば、ステージング、振付、ビジュアル、それらを綺麗につなげて、人間の奥底にあるディープな感情をクリアに伝えてくれるから、字幕がなくても感覚で物語が理解できると思います。もう1つは、役者の魅力を最大限に引き出してくれる。彼女からは演技よりも人間の本質を表現するように要求されます。役者としてではなく人としてチャレンジしながら成長することを常に望まれているところが魅力ですね。

そんなダイアンさんが演出される今作の見所を教えてください。

ストーリーと〈バリ〉の想像力が舞台上で化学反応を起こすんです。彼の頭に浮かんだことが舞台でビジュアル化されて、それをお客様が観ると感じたことのない感情を抱ける。それこそ舞台でしか味わえないマジック、つまり一回性の奇跡を体感できる作品です。

そんな感覚に観客を導くために、どのように役作りの努力をしましたか?

〈バリ〉は劇作家で私は俳優ですから、どちらもアーティストですね。自然と共鳴し合うものがあります。なので、できるだけ正直に自分自身の心情を〈バリ〉にぶつけながら、演技をリアルでシャープにすることを心がけています。

ミュージカルには欠かせないのが歌ですが、作曲は世界的に有名なイギリスのグループ、テイク・ザットのゲイリー・バーロウさんが担当されます。

初めて彼の曲を聞いたときは、設定が1904年のロンドンですから、少し違和感を覚えたんです。例えば、エド・シーランやコールドプレイなどのコンテンポラリーなUKポップなんです。ただ、この作品は〈バリ〉の主観の世界なので、聴いていくうちに物語にマッチして面白くなっていくんです。当時の〈バリ〉はとてもラディカルな人で有名でした。つまり、時代が彼に追いついていなかった。だから彼の頭に流れていた音楽は、時代を超越した音楽じゃないとダメなんだと納得できましたね。

高校生の頃、『アイーダ』に心を奪われて7回連続で観ました

なるほど。では、〈バリ〉を演じるビリーさんのお話も聞かせてください。幼少時代はどんなお子さんだったんですか。

弟たちとNINJAごっこをしているわんぱくボーイ(笑)。90年代は、『ニンジャ・タートルズ』や『パワーレンジャー』が大人気だったので影響を受けたんです。特に好きだったのは『3 Ninjas(邦題:クロオビキッズ)』という忍者映画。実際に忍者に感化されて体操を学んでいました。日本とも縁が深いでしょう?

(笑)。そんなお子さんが演劇に目覚めたきっかけはなんだったんでしょう。

ティーン・エイジャーの時、自分の居場所が見つけられなくて自信が無く悩んでいた時期がありました。悶々としながら、中学生のときは合唱団で歌は勉強していたのですが、高校に進学するときに、演劇学校の先生に出会ったんです。その方が、演劇の世界に誘ってくれて、初めてミュージカルを観ました。演技と歌で2時間は違う人間になれる。そこで自分自身の居場所、まさにネバーランドを見つけたような感動を覚えて演劇に目覚めました。

その時期に心を打たれたミュージカルは何だったのでしょう?

『アイーダ』です。ブロードウェイで観劇した時に心を奪われて、7回連続で観た記憶があります。高校の時に、日本でいう修学旅行のようにNYにみんなで行ったんです。ブロードウェイの劇場は、ボックス・オフィス(チケット販売所)が開店すると、最初の10人ほどは、20ドルの安値で一番前の座席に座れた時代でした。だから友達と朝5時ぐらいに起きて、ワクワクしながらボックス・オフィスの前に並んでいましたね。

そこからどのようにプロの俳優への道を歩まれたのでしょう。

アメリカではプロの役者、ギャランティーをもらえる俳優はユニオン(組合)に入らないといけないんです。19歳の時に、セントルイスのミズーリ州で舞台のオーディションを受けました。その舞台でキャスティングされたらユニオンに入れることになっていたんです。1年目に受けたオーディションは不合格でしたが、2年目に受けたら運よく合格。そこからがプロとしてのスタートですね。

先ほど居場所がない苦しい時期があったとおっしゃっていましたが、〈バリ〉のように困難にぶつかった時、どのように乗り越えていきましたか。

私はただただ、パフォーマンスが好きなんです。ひたすら演技をして歌い続けたい。もっとアーティストとして成長していきたいと常にポジティブに考えて壁を乗り越えています。

そうして困難を乗り越え続けたビリーさんの歌には力強い自信があるように感じます。どのように歌にアプローチをしていますか。

最初に覚えるのは、テクニカルな部分です。フレーズや母音、どこでテンションをあげて、力をリリースするのか。実際にパフォーマンスをするときには、譜面通りに歌えたとしても心が空っぽだと嘘っぽく見えてしまうので、曲のストーリーを伝えようとします。

日本ではカラオケという独自の文化があって、カラオケルームで歌を練習してプロのシンガーになる方もいます。ビリーさんのようにプロになりたい人にアドバイスはありますか。

確かにテクニカルな部分も大切ですが、まずは曲を作った人のことを真剣に考えて、どんな風に自分が歌っているのか気にしなくなることが大切ですね。

歌が好きな日本では、今作に限らず、数多くのブロードウェイ・ミュージカルが上演されます。ミュージカルがここまで愛される理由はなんだと思いますか。

ミュージカルは、現実では見ることのできない人の一瞬の感情の変化をビジュアルにできる。例えば、ファーストキスの心の高ぶりを文章にはできないですよね(笑)。でもステージと照明と歌があれば、あの瞬間の特別な気持ちをリアルに感じることができます。

最後に、読者の方にミュージカル『ファインディング・ネバーランド』のアピールをお願いいたします。

この作品を誇りに思って公演を続けていますから、老若男女、文化、国籍を超えて、すべての人が楽しめるように努力しています。キャスト全員が日本に行くことを楽しみにしているので劇場でお待ちしています。

ビリー・タイ

これまでの出演作品は、ブロードウェイ/ウエストエンド公演:「ピピン」、「ブック・オブ・モルモン」、アメリカツアー公演:「ブック・オブ・モルモン」、「ウィキッド」、「ラ・カージュ・オ・フィール」、「ダーティー・ダンシング」。地域公演:「バック・ホーム・アゲイン」、「ヘアスプレー」、「ハッピー・デイズ」、「フットルース」。また、シンシナティPOPS、ロングビーチ、インディアナポリスデトロイト、ヒューストン、トロント、バンクーバーなどの交響楽団との共演(歌のソリストとして)などがある。

ブロードウェイ・ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』

2017年9月8日(金)~24(日)
東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11F)

【作詞・作曲】ゲイリー・バーロウ/エリオット・ケネディ
【脚本】ジェームズ・グラハム
【演出】ダイアン・パウルス
【振付】ミア・マイケルズ
【出演】アメリカ・カンパニー

オフィシャルサイトhttp://findingneverland.jp