【80年代名鑑】明菜からYMOまで 80'sからの授かりもの  vol. 33

Column

〜あの日、渋谷公会堂にいた人もいなかった人も〜 REBECCA伝説のライブを追体験してみる

〜あの日、渋谷公会堂にいた人もいなかった人も〜 REBECCA伝説のライブを追体験してみる

1985年12月25日。渋谷公会堂で繰り広げられたREBECCAのライブは、その後、語りぐさとなる。幸いなことに、全編収録された映像作品が残されている(ちなみにチケット代は、当時、S席で2800円だった)。 

ところで今、“語りぐさ”と書いたが、それは歌や演奏に関してであり、当時のNOKKOのMCは、オ−ラを感じるというより、かなりぶっちゃけ、だった。ご本人は迷惑かもしれないが、ちょっと再録させてもらおう。

 去年2枚LPを出して、ハッキリ言って、あんまり
 売れなかったんだよね。アラ〜ッて感じで(笑)。
 で、もう1枚出してダメだったら、もうダメなん
 じゃないかっていう、お先真っ暗な雰囲気だった
 りして…。

どうでしょう。売れなきゃ終りって、潔い(売れて良かった!)。でもNOKKOって、少女っぽい印象を受けるけど、こうしてステージで話す彼女は、それより断然、大人っぽい。本音でファンに語りかけてる。

しかしいったん演奏が鳴り始めると、彼女はバンドのビートを心と体を共振させ、陶酔感を漂わせる圧倒的なパフォ−マンスへ移行する。この落差。それも断然、魅力だったのだろう。

DVD『REBECCA LIVE ’85-’86 -Maybe Tomorrow & Secret Gig Complete Edition-』

オープニングは「Hot Spice」。ボ−カルの部分もあるけど、ほぼインスト仕様である。客席をじわじわと、ビートという鍬で耕していく雰囲気だ。原初的。プリミティヴ。続く「76th Star」はメロディアスだけど、この曲があるおかげで、余計それが引き立つ。

NOKKOはギターの古賀森男やベ−スの高橋教之と、程良く絡む。これ、事前に振り付けがされている演出部分だ。でもクドくない。同じ動きを一瞬だけして、オシャレだねー、くらいに留める。分ってる。この演出は、分ってるヒトの仕事だ。

小田原豊のドラムは、今の耳で接すると、実に80年代的である。いや80年代の演奏なんだから当然だ。リヴァーブが掛かった、ドッタンダダタンという包容力ある音だ。ちなみに、ドッタンダダタンなんて擬音で記すと、あまり上手い演奏に思えないかもしれないが、もちろん小田原はちょ〜上手い。この時代の他の楽器は、今よりは音の印象としては“突く”感覚でもあるので、小田原の“包む”感じとの相性も良い。

「Friends」は、イントロ鳴った瞬間から場の雰囲気が違う。もはや“みんなのもの”という感じだろうか。この時点で“ヒット中”という状態だったハズ。でも大切なのは、というか、懐が深いのは、次にバラードの「Maybe Tomorrow」が置かれているあたりだ。

「Friends」での肺活量というか呼吸のテンポというか、その残り香が「Maybe Tomorrow」へ差し込むと、実は台無しなのだ。前の曲に引き戻されてしまう。しかしNOKKOはすごい。おくびにも出さない、とは、このことである。抑制された、でも、無理に締め付けてる感じは一切無い、そんな声のトレースで歌い切っている。徐々に大団円へ向かっていくが、ほら、1番より2番、ボリューム上げましたでしょ、みたいな盛り上げ方じゃない。気づけば大団円。そんな感じ。正しい大団円。まさにそう。

「Wild Eyes」で真っ赤なドレスにお色直しした彼女は、別人のようにパワーアップ。重力の外側に飛び出したかのような手足の俊敏さで、再びリズムの権化となる。「Love Passion」あたりからは、ポップというよりロックというよりパンクな風情が強くなる。全身全霊を込めた末の“出し切り感”と、激情が溢れた末のパンクの“捨て身感”とが、それぞれ別の場所から滑り込んだ2枚のスライドが重なるように相乗して、とめどないパワーを生む。いやはやスゴイスゴイと、もはや感想もこの一言に収斂されながら、このライブはアンコールへと突入するのだった。

NOKKOの魅力はスゴイスゴイスゴイのだ。でも「魅力」には二種類ある。送り手が自覚して醸し出されるものと、無自覚なものだ。前者は自覚により、程良く制御されたものなので、整っていて、受け手に満足を与える。いっぽう後者は、無自覚ゆえに大盤振る舞いだったりもして、ムラがあるけど生々しく、受け手に衝撃を与える。

この時代のNOKKOのステ−ジは、それが半々ぐらいだったのではなかろうか。ここよりキャリアを積むと、前者の比重が増えるのかも…。しかしヒトは、その状態を「プロフェッショナル」と呼ぶのだけど。 でもどっちがいいなんて、言えない言えない…。

文 / 小貫信昭

*DVD『REBECCA LIVE ’85-’86 -Maybe Tomorrow & Secret Gig Complete Edition-』(http://www.110107.com/


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