モリコメンド 一本釣り  vol. 27

Column

ロザリーナ 童話的なファンタジーを備えた世界観とともに描き出すオリジナリティ。注目のシンガーソングライター

ロザリーナ 童話的なファンタジーを備えた世界観とともに描き出すオリジナリティ。注目のシンガーソングライター

シンガーソングライター“ロザリーナ”の1stミニアルバム「ロザリーナ」(2016年12月リリース)のボーナストラックには、絵本「えんとつ町のプペル」のテーマ曲「えんとつ町のプペル」が収録されている。キングコングの西野亮廣氏が手がけた絵本「えんとつ町のプペル」は分業制で制作されているのだが(絵本を分業制で制作したのは、おそらく世界で初めて。宣伝方法、販売方法、クラウドファンディングの使い方を含めて画期的としか言いようがない大ヒット作です)、ロザリーナの大ファンを公言している西野氏のオファーにより制作されたテーマ曲「えんとつ町のプペル」は、ファンタジックな世界観と普遍的なポップスを自然に結びつけた楽曲。西野氏は彼女の音楽に対して「ときどき彼女の歌の世界に逃げ込んでは、救われ、そして、その圧倒的な才能に嫉妬しています。」というコメントを寄せているが、この曲を聴けば、彼女のシンガーソングライターとしての資質の高さを実感してもらえると思う。

小学校の頃に“ゆず”を知ったことをきっかけにギターを弾き始め、高校時代からオリジナルの楽曲を書き始めたというロザリーナ。その音楽的な特徴は“リアルな実体験に基づいた歌とファンタジックな音楽世界の融合”ということになるだろうか。たとえば1stミニアルバム「ロザリーナ」に収録されている「メリーゴーランド」(首都高ETC2.OCMソング)で彼女は「夢を見たくて迷い込んだ/ここは迷宮か何かか?」と歌う。この世界を“出口のない迷宮”と捉え、それを踏まえたうえで「君を連れて行きたい/美しい世界へ」とリスナーに語りかけるのだ。思い通りに生きられることなどほとんどない現実から目を逸らすことなく、ファンタジーの力を効果的に利用しながら“ここではない、どこか”を描き出す。リアルと寓話を見事に一体化させる彼女のセンスは(たとえばSEKAI NO OWARIにも通じるような)現代的なポップミュージックに直結していると思う。

「えんとつ町のプペル」からもわかるように、彼女の楽曲はさまざまなメディアの作品(絵本、映画、アニメなど)とのコラボレーションによってさらに魅力を増す。そのことを改めて証明したのが、アニメ「妖怪アパートの幽雅な日常」のOPテーマとしてオンエアされている新曲「Good Night Mare」。エレクトロとギターポップ、カントリーミュージックの要素を組み合わせたサウンド、軽快に飛び跳ねるようなメロディラインも素晴らしいが、特筆すべきはやはり歌詞。妖怪たちが暮らすアパートで、複雑な事情を抱えた高校生が様々なことを学んでいくというストーリーのアニメ「妖怪アパートの幽雅な日常」の世界観としっかりリンクしながら、現実社会における葛藤や希望の在り方を鮮やかに映し出しているのだ。特にラストの「表裏一体の世界でももう戻れないや/まだどこかで期待してる/夢をみてたいぐんない」というフレーズは彼女のソングライティング・センスの高さをはっきりと示していると思う。

ポップな手触りを響かせるボーカルも心に残る。緻密に組み立てられた歌詞の世界(使われている言葉はきわめてシンプルだが、その構造はかなり複雑だと思う)をスムーズに伝えながら、洋楽的なエッセンスを加えて表現するボーカル・スタイルはきわめて個性的。一瞬で耳に残り、次に聴いたときは「あの声だ」とわかる記名性の高さもまた、彼女の大きな武器だろう。

さらに新曲「ドレスコード」が「神戸コレクション2017A/W」のテーマソングに起用されることも決定。リズミカルなメロディライン、バウンシーかつカラフルなトラックメイク、“好きな色をまとって、自分らしく生きていこう”というメッセージを含んだ歌詞がひとつになったこの曲からは、彼女の際立ったポップ感覚を感じてもらえるはずだ。
 
今年の夏以降は、イベント/フェスにも出演。エキゾチックな雰囲気のルックス、「バク転も出来ちゃう妖精のような華奢な体」(←公式HPより)を活かしたライブパフォーマンスにも注目が集まりそうだ。自分自身の生の感情をそのまま歌うのではなく、童話的なファンタジーを備えた世界観とともに描き出すロザリーナの楽曲はここから、幅広い層のオーディエンスを魅了するはず。彼女の音楽は近い将来、誰も体験したことがないようなエンターテインメントに結びつく——そんな期待を抱かずにはいられない、大きな可能性を持ったニューカマーだと思う。

文 / 森朋之


オフィシャルサイトhttp://lozareena.com

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