モリコメンド 一本釣り  vol. 28

Column

edda(エッダ) ファンタジーの要素を取り入れながら、独自の世界を表現。10月にメジャーデビュー

edda(エッダ) ファンタジーの要素を取り入れながら、独自の世界を表現。10月にメジャーデビュー

リアルな日常、生々しい感情を歌うだけが、シンガーソングライターではない。ファンタジーの要素を取り入れながら、日々の生活とはまったく違う感覚を表現することもまた、シンガーソングライターの大事な役割なのだ——eddaの楽曲を聴いて、筆者はそのことを改めて実感した。

1992年生まれ、福岡出身のeddaは、YUI、絢香、家入レオ、chay、カノエラナといったアーティストを輩出してきた「音楽塾ヴォイス」で音楽の基礎を学んだ。しかし、先出の女性シンガーソングライターとはまったく違う作風を選ぶ。「世の中に埋もれているあらゆる感情は声達を人々に伝えたいという想いから、「物語を語り継ぐ」という意味を持つ言葉「edda」をアーティスト名に2017年より活動を開始」(公式HPのプロフィール)したのだ。eddaとはもともと、9世紀頃から13世紀頃までの北欧神話を伝える文書を示す言葉。アーティスト名の由来からも、彼女が掲げる音楽像を感じてもらえると思う。

2017年5月に福岡限定でリリースされたシングル「半魚人」は、eddaの音楽性を端的に示した楽曲だった。美しく、繊細なメロディとともに奏でられる冒頭のフレーズ(“ここから連れ出してよ 早く”“エラ呼吸じゃもう 苦しいの”など)には、彼女の精神性がはっきりと刻まれていた。MVでも描かれているように、この曲のモチーフになっているのは人魚姫。“ここは自分がいるべき場所ではない”という強い思い、“どこかに連れ出してほしい”という切実な願いが込められているのだが、それを日常的な言葉で綴るのではなく、あくまでも(ダーク)ファンタジーとして描くのが彼女の個性なのだ。

「半魚人」を含む初の全国流通盤「さんかく扉のむこうがわ」(2017年7月リリース)は、eddaの音楽的なスタイルをさらに深く追求した作品だった。中心になっているのは、リードトラックの「不老不死」。「私のことを ねぇ殺してくれるでしょ」というサビのフレーズが強く心に残るこの曲は、タイトル通り、不老不死のまま永遠の時間を生きる“私”を主人公にしたナンバー。周りの人たちはどんどん老いていき、やがて死んでしまう。ひとり残され続ける“私”はとてつもない孤独感に襲われるが、楽曲のエンディングが近づくにつれて、わずかな希望の光が見えてくる——「不老不死」が描き出す物語は、eddaの本質に直結していると言っても過言ではないだろう。誤解を恐れずに言えば、ここで示されているのは“希望がまったく見えない現実を生き抜くためには、ファンタジーの力が必要なのだ”という確信なのだと思う。「不老不死」のMVにはドールファッションモデルの橋本ルルが“生きる球体関節人形”として出演。映画、テレビ、MVなど幅広いジャンルの映像作品を手がける“DIRECTIONS”によるダークファンタジー的な映像も、楽曲の世界観をしっかりと際立たせている。

タブラ、シタールなどを取り入れたエキゾチックなポップナンバー「エッセンシャルパレード」、チップチューン的な音像と洗練されたコード進行がひとつになった「ベルベット」、めまぐるしく展開するメロディともに背徳的な恋に落ちる女の子を描いた「はちゃめちゃアイランド」など、多彩な音楽性も本作の魅力。ミュージカル、オペラ、ゲーム音楽、ボカロ音楽、テクノポップなど幅広い要素を取り入れたサウンドメイク、そして、楽曲のイメージと重なりながら様々な表情を見せるボーカリゼーションも素晴らしい。当たり前の話だが、豊かなイマジネーションを楽曲に変換するためには、優れたミュージシャンシップと的確な表現力が必要不可欠なのだ。

そしてeddaは10月11日にシングル「チクタク」(アニメ「Infini-T Force」エンディングテーマ)でメジャーデビューを果たす。タツノコプロ55周年記念作品「Infini-T Force」はガッチャマン、テッカマン、ポリマー、キャシャーンといったタツノコプロのヒーローたちが登場する話題作。アニメ、ゲーム、映画などとのコラボレーションにより、今後、彼女の音楽世界は大きく広がっていくだろう。

楽曲だけはなく、イラスト、ジオラマなどのビジュアルも手がけるedda。リアルとファンタジーを共存させることで巨大な支持を得たSEKAI NO OWARIと同じように、様々な物語を描き出す彼女の音楽は、ジャンルを問わず、幅広いリスナーに浸透していくことになりそうだ。

文 / 森朋之

オフィシャルサイトhttps://www.eddavilla.com

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