Interview

ドラマ『デッドストック』主演の村上虹郎が語る「恐怖は言語とか文化を超えて体が憶えるようなもの」

ドラマ『デッドストック』主演の村上虹郎が語る「恐怖は言語とか文化を超えて体が憶えるようなもの」

次回放送が楽しみでしょうがない!
そんなワクワク感を久々に味わわせてくれるドラマが、現在テレビ東京にて毎週金曜深夜放映中の「ドラマ25『デッドストック~未知への挑戦~』」だ。
「2016年のテレビ東京の社屋移転により発見された、テープ倉庫の開かずの間に眠っていたお蔵入りテープに記録された怪奇現象の謎を追う」という虚実皮膜の設定。「本気で怖い!」本格ホラーでありながら、人間ドラマでありミステリーでもある、一筋縄ではいかない作品世界が話題を呼び、ホラーファンはもちろん「怖いものは苦手」という層も巻き込み、放映を重ねるごとに中毒者を増やし続けている。
そんな本ドラマで、主人公の新米ADの青年・大陸(りく)を演じているのが、映画『ディストラクション・ベイビーズ』ドラマ『仰げば尊し』映画『武曲-MUKOKU-』など、話題作への出演が相次ぎ、いまや最も活躍が期待される若手俳優の村上虹郎。
早見あかり演じる先輩ディレクターの尻に敷かれ、ビビリながら怪奇スポットに先陣を切って突入。案の定、キャーキャー怖がる姿はチャーミングで母性本能をくすぐると同時に、どこか無垢ゆえの危うさのようなものも感じなくもないわけで…。
今後ますます物語のキーを握る存在となりそうな彼に、本ドラマの魅力と今後の展開や見どころについて、話を聞いた。

取材・文 / 井口啓子 撮影 / キセキミチコ/KISEKI inck


ホラーと聞いて、できるのかな?と

まず、今回の話が来たときの率直な感想は?

「ホラードラマ!? 」という感じでした。テレ東さんの深夜ドラマは以前からけっこう観ていて、やはり他とは全然違うイメージ。そこで主演をやらせていただくと聞いたときは、単純に嬉しいと思ったのですが、その直後にホラーと聞いて、できるのかな?と。基本的にすごく怖がりですし、視覚的に見たものを引きずってしまうタイプなので、そういう意味では怖いなと思いながらもワクワクして現場にのぞみました。

ストーリーとしては、村上さん演じる大陸たちが、テレビ局のお蔵入りテープの謎を追うなかで自身も怪奇現象に遭遇するという、いわゆるモキュメンタリー的な作りではあるんですが、このお蔵入りテープ自体がまず、めちゃくちゃ怖くて。ネタ的にも「心霊スポット」に「動く人形」に「丑の刻参り」に「コックリさん」に…。ホラーでおなじみの題材が次々に繰り出されてくる感じが恐ろしくもワクワクさせられます。

そうなんです。ネタが尽きないからシーズン2をやりたいと、上の方たちはみんな仰っているのですが(笑)。古い映像の質感もあいまって、かなりリアルで怖いので、僕自身このドラマをしていなかったら、実際にあった映像を掘っているんだろうなと思っていたと思うし、実際よく聞かれるんです。あれ本物なの?って。そこはあえてノーコメントなのですが。お芝居の部分で出演されている俳優さんも舞台が中心の方だったりするので、余計にリアルで怖いのかなって。

©「デッドストック~未知への挑戦~」製作委員会

なるほど。村上さん演じる大陸は、そのテープを調べるなかで自身も怪奇現象に遭遇するわけですが、大陸がまた素直でかわいらしいキャラクターで。ビビリながらも早織にせっつかれて怪奇スポットに先陣を切って突入して、案の定、キャーキャー怖がる姿もチャーミングで。「スクリーミングクイーン」という言葉がありますが、大陸はさしずめ「スクリーミング王子」といった感じで、おもわず恐怖を忘れてキュンキュンさせられます!

ヒロインは早織(早見あかり)なんですけどね(笑)。ただ、大陸はいろんなことに対して素直で、これまで自分がよく演じてきたシャイで素っ気ないタイプの役とはちょっと違う。だからこそ新鮮でしたし、すごくやりやすかったです。ちなみに今回の髪型も衣装合わせの時に相談した結果、周りからも評判がよかったのであのようになりました。

そうなんですね、大陸のキャラクターにめちゃくちゃハマってました。大陸と早織のコンビも最高ですよね。

 

早織のキャラクターは大陸とはある意味、対照的。第1話の登場のシーンから早織はイケイケで。未確認素材室という空間を舐めている節があるし、大陸が挨拶しても、コイツ誰?という感じで。そこは監督もすごくこだわられていました。

監督からは特に指示やアドバイスのようなものはありました?

僕がホラーは初めてだったので、三宅監督(脚本兼監督の三宅隆太)に相談したら、おすすめを3本ぐらいあげるよとDVDをいただいて。『八ツ墓村』( ’77年/野村芳太郎)と『死霊高校』(’79/ピーター・メダック)と『チェンジリング』(’79/ピーター・メダック)で、『チェンジリング』は時間がなくてまだ観れていないのですが…。『死霊高校』はモキュメンタリーな設定や、POV方式を駆使した臨場感あふれる映像など、イメージをつかむ上で参考になりました。

演じるという部分ではホラーでもそれ以外でも特に変わりはなく?

そうですね。今回はいわゆるホラー的な寄りのカットもけっこうあるのですが、特に「ホラーの顔をしてやろう」ということもなく。大陸という人間は何をどう怖がるのかな?と探りながら…。題材によって、大陸が行きたがる場所と行きたがらない場所があるんです。第5話の「落ち武者」なんかは、早織はまったく興味を持たないのに大陸は行きたがるのは男だからですかね。「バンパイア」の回では、(田中)哲司さんも(ロケに)出てきたり。

バンパイアですか! しかし、ひとくちにホラーといえど、いわゆる幽霊エピソードもあれば、人間の怖さを感じさせるエピソードもあり、描かれる「恐怖」の種類はさまざまですよね。

そうなんです。第3話の「丑の刻参り」の富樫(真)さんの笑い方とか、すごく怖かった。第2話の「人形」もめちゃくちゃ怖いのですが、すごく哀しい話でもあって、泣いた!という人もすごく多かったみたいですね。

みなさんいろんな推測をしてて、「実は大陸が死んでいる説」もけっこう見ます(笑)

怪奇現象を描くなかで、そういった登場人物が抱えるさまざまな問題が浮き彫りになってゆくのが『デッドストック』の一筋縄ではいかないおもしろさですよね。たんなるホラーではないという…。

単なるホラーではまったくないですね。もう言っていい段階だと思うのですが、途中で話の流れが変わっていくんです。

なんと! そうなると、気になってくるのが大陸とお母さんの関係で。二人のシーンの奇妙な現実感のなさや意味深な会話に、どんな秘密が隠されているんだ?と気になってしょうがありません。

ツイッタ―などを見ていると、みなさんいろんな推測をしていて、かなり鋭い読みをされてる方もいる。「実は大陸が死んでいる説」もけっこう見ます(笑)。 

なるほど! でも、そうなると続編は難しいような…。しかし『デッドストック』は毎回、いろんな怪奇現象に遭遇するという一話完結スタイルでありながら、全編を通じて、どうやら「ある謎」が隠されているらしいという、非常にトリッキーな構成になっているので、ドラマとしてどこに着地してどう終わるのか、すごく気になるところです。

それは製作陣の方達もいちばん苦労されたところみたいです。単純なホラーに見えますが、後半いろんなことが繋がって、最後にヒューマンドラマ的なカタルシスも描きつつ、連続ものの可能性も示唆する終わり方にしたいと。僕はすごく好きなのですが、最終回は続き作りづらいよなーという終わり方になっていると思います。

最終回の第11話は森達也さんが監督という時点で、もう何が起こっても不思議じゃない気もします(笑)。

「未知への挑戦」というサブタイトルは森さんの回を差していたのか!というぐらい、撮影していてかなりおもしろかったですね。森さんの『A2』とか『FAKE』を観て、めちゃくちゃおもしろかったんです。そこに答えを書かない、結論づけないのが、森さんの作品のおもしろさというか、森さんのスタイルだと思うんです。それを言葉にもしないし、ナレーションもしない。もちろんナレーションは入りますが、ただ事実を言うだけで、それが真実かどうか、自分が対象を信じているのかどうかというのは言わないスタンス。今回もドラマの中の役としてはそういうスタンスではありますが、監督としては今回一応フィクションのドラマだから、ある程度は物語として着地させないといけない。その辺は森さんもご自身の作品とはまた違って、難しいところなのかなと思っていましたが、本人はめちゃくちゃ楽しそうでした。

3話で早織が「これを番組にして伝える意味があるのかな?」って自問自答するシーンがありますが、『デッドストック』はある種、そういう森達也ワールド的な、映像を作って伝えるって何?って問いかけるような番組でもあるように感じます。

それは本当にそうで、森さんの回なんかは特にそうです。

そういうなかで、村上さん自身、演じるって何だろう?みたいに自問自答するようなことはありました?

やはり森さんの回では、否応なく感じさせられました。僕はこのドラマの中で大陸として生きるのですが、それを演じる中では、脚本ではない生の部分を生きなきゃいけない。だから本番の最中も「自分はどういればいいんだろう?」って、常に突きつけられていた感じでした。

そういう虚実を揺さぶってくる感じは、このドラマの根本的なスタンスとしてありますよね。ちょっと話が脱線しますが、三話の最後の「一度は愛した人を殺したいとまで恨んで呪うなんてできるのかな? もしできるとしたら僕はそういう人の心がいちばん怖いと思う」という大陸の言葉については、村上さん自身は共感するところはありました?

©「デッドストック~未知への挑戦~」製作委員会

確かに怖いですが。自分も反抗期に母親に対して、複雑な感情を抱いたことはあったので、愛した人を呪ってしまうようなこともあるのかなとは思うし。でも、子供時代のそういう感情って大人とはまた違うと思うので。大人になって自由だけどある種の社会的責任を背負った中で作り出した人間関係の中にあるものって、どうしようもないんだろうなとも思いますし…。
僕の人生、そんなにシンプルでもないですが、こんがらがってもいないので、何十年連れ添った夫婦が別れる気持ちもいまだにわからないしですし。でもそういった考えも、また年をとっていくと変わっていくのかなとは思います。