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大空翼らの必殺シュートに心撃ち抜かれる? 超体感ステージ『キャプテン翼』

大空翼らの必殺シュートに心撃ち抜かれる? 超体感ステージ『キャプテン翼』

8月18日よりZeppブルーシアター六本木にて、超体感ステージ『キャプテン翼』が上演中だ。超体感と銘打ち、ソニーの最先端技術を取り入れ、シュートを受けた衝撃やキックの感触などをリアルに体感できるハプティックウェアの着用や、フレグランス(香り)の演出など、5感を刺激する新感覚の舞台として注目が集まっている。原作は、全世界で8,000万部以上の売り上げを誇るサッカー漫画『キャプテン翼』。描かれるのはフランス国際Jr.ユース戦後のアナザーストーリーだ。W杯優勝を目指す全日本チームと世界のU-20の選手たちが集結したクラブチーム・RED STORMと熱い闘いが繰り広げられる。そのゲネプロと、キャスト陣による熱気あふれるコメントをお届けする。

取材・文・撮影 / 竹下力

完全オリジナルストーリーで展開される超体感型ステージとは

物語は全日本チームがフランス国際Jr.ユース決勝戦でドイツを破ったところから始まる。舞台を彩る極彩色の光、サンバの音楽、祝祭ムードが溢れる。そして大会MVPを獲得した〈大空翼〉の元木聖也が「いつまでも夢に向かって走り続けます」と爽やかな表情で宣言する。まだ見ぬ強敵がそびえ立つことも知らずに……。

ここからが舞台版完全オリジナルストーリーだ。なんとか優勝を果たした日本代表選手は日本への帰路、乗り継ぎでドバイに立ち寄ったメンバーは、トランジットのトラブルで8時間の待ち時間を余儀なくされることになる。

そこで田中稔彦演じる〈ロベルト本郷〉の回想シーンに。どうやら〈ロベルト〉は〈翼〉と出会う前に、内戦の続くサルバディという国でジャベイラと呼ばれるサッカーに近い競技で神の子どもと称される〈エイブ・レオン〉の松永一哉に出会っている。そしてその友達の〈ノエル・ポポロ〉の斎藤准一郎たちのテクニックをみて仰天してサッカーに誘う。

そこからまたシーンは現代に戻り、〈ロベルト本郷〉はドバイの観光にメンバーを誘う。嬉々としてタラップを降りていくメンバーたち。そして、飛行機内に残された最後の乗客の阿部丈二演じる〈山守ジェネラルマネージャー〉が不審な行動をする。どうやら国際ユースで戦った世界の猛者を集めたRED STORMという最強のチームを作り大金を稼ごうと画策しているのだが……。

ここにサッカーを純粋に楽しむ少年たちと、彼らを金儲けに利用しようとする大人たちとの対立構造が浮かび上がる。原作のダークな部分が垣間見え、脚本も原作を忠実にアレンジしているところも見どころだ。
ドバイの近代的な街中で全日本メンバーと〈エイブ・レオン〉と〈ノエル・ポポロ〉が出会い、サッカーのミニゲームをする。彼らの能力に驚嘆する全日本。

一方、〈山守ジェネラルマネージャー〉がRED STORMを作ろうと各国の代表級の選手たちと〈エイブ・レオン〉と〈ノエル・ポポロ〉を入団させ、おまけに〈ロベルト本郷〉を監督に招き入れるという。

一気に最強のライバルが全日本の前に立ちはだかる。そして〈山守〉は、事あるごとに全日本に食ってかかり、彼らを叩き潰そうとする。そして最初の試合に全日本を指名してくるのだ。〈山守〉の意図は一体……?

「常に夢を持つこと。諦めないこと。自分に負けないこと」の大切さを教えてくれる

やはり、注目は〈翼〉のアクロバティックな動きだろう。原作を知っている人なら誰でも憧れる練習、ボールをポストに狙いを定めて蹴り、跳ね返ったボールをオーバーヘッドで返すという練習法は、元木聖也の見せ所だ。
彼はボールを蹴るとバク転をしてオーバーヘッドをする。一回だけでなく何回もするのだ。やはりこのシーンは体力もいるし、テクニックもいる。ボールはあるように見せているだけなのに、そこからサッカーに心から打ち込む真摯な姿に見惚れる。

舞台は素舞台で、舞台前の更紗と後ろにスクリーンがあるだけのシンプルな装置で、役者の演技やセリフやダンスが目立つ演出になっている。サッカーシーンはボールを動き回すだけではなく、ダンスで表現することが多い。ここは役者の見せ所で、ブレイクダンスを披露しながら、ダンスバトルを繰り広げて舞台で踊り尽くす。

さらに誰もが待ち望んだ必殺技の再現力の高さに目をみはる。役者の丁寧な動き、そして映像と光と音、更紗の開け閉めと奥のスクリーンを上手に使い、必殺技のリアリティーを作り上げる。ここでハプティックウェアやフレグランスの演出が相乗効果を引き上げる。

〈日向小次郎〉(松井勇歩)の敵DFをなぎ倒す迫力のタイガーショットや大木を真っ二つに切り裂くほどの威力の雷獣シュートがRED STORMの鉄壁のゴールキーパー、〈ミューラー〉の伊阪達也の手を跳ね飛ばしてゴールネットを揺らす。
〈シュナイダー〉(北村悠)が放つファイアーショットが全日本のDFを吹き飛ばし、〈若林源三〉役の中村龍介を襲う。
心臓の疾患でわずかな間にしかピッチに立てない天才ドリブラー〈三杉淳〉(鷲尾修斗)のドリブルが身体能力の高いRED STORMのディフェンダーを軽々交わす。
そして〈立花和夫〉の廣野凌大と〈立花政夫〉の大曽根敬大が織りなすスカイラブハリケーンが〈ミューラー〉に牙をむく。
〈翼〉のドライブシュートなど原作ファンなら垂涎ものの必殺技のオンパレード。『キャプテン翼』おなじみのキャラクター性は余すところなく表現されている。

やはり、SGGK(スーパー・グレート・ゴール・キーパー)の異名をもつ〈若林源三〉役の中村龍介の凛とした佇まいが瞼の裏に焼きつく。「ゴールラインの外からはゴールを決めさせたことがない」という必殺名言を残す男は言葉ではなくて背中で語る。もちろん原作を知らなくても大丈夫。〈石崎〉らがストーリーを解説しながら、キャラクターの個性の強さを存分に引き出し、さらにスピーディーな演出で観客を飽きさせないからだ。

試合は彼らの動きに注目してもいいが、試合中に感じる相手の身体能力への挫折、ドリブルで抜かれた時の敗北、それ以上に夢や友情が語られるセリフに耳を傾けてほしい。彼らは戸惑い、焦り、迷いながらも、何者にも負けない気持ちを持つこと、それを分かち合うことの大切さを訴えかけてくれる。

一部の権力を持つ人の裁量だけに判断させてはいけない現代批評の側面も持っていて、子供だけでなく大人も考えさせられる舞台になっているだろう。「常に夢を持つこと。諦めないこと。自分に負けないこと」の大切さを〈翼〉たちの真摯な姿勢が語っているのだ。