黒選!メディアコンテンツ研究家・黒川文雄がテーマで選ぶ 3+1  vol. 15

Column

レースゲーム進化論 ハングオンからリッジ、マリカー、GT最新作まで

レースゲーム進化論 ハングオンからリッジ、マリカー、GT最新作まで

現在「レースゲーム」と呼ばれているビデオゲームは、かつては「ドライブゲーム」と呼ばれていました。その「ドライブゲーム」のルーツは、1974年11月に発売されたタイトーの『スピードレース』と言われています。

この『スピードレース』は、エレメカ(エレクトロニクス+メカトロニクスの造語)と言われた電気仕掛け式のゲームを総称したものです。プレイヤーがハンドルでコントロールする自車とコースを示すスクリーンを見ながら、ハンドルとアクセルを操作して障害物を避けながら他車を追い越し、できる限り長く走行することを競い合いました。当時の記憶では、タイムオーバーするとまるで電池が切れたかのようにシューンとゲームが終わってしまうのがとても印象的でした。今のレースゲームと比較すると、牧歌的な色合いの濃い、まさにドライブという表現がふさわしいゲームでした。

昔の「ドライブゲーム」も今の「レースゲーム」もゲームの内容自体はほとんど変わりません。障害物や敵の車を避けて、タイムを競い、難易度の高いコースをクリアするゲームです。しかし、レースゲームの表現や仕様は凄まじい早さで進化しています。今回の黒選では、今昔の代表的なレースゲームに焦点を当てて、レースゲームの進化をたどります。

ではどうぞ!

名門セガ・レースゲームの系譜

セガ(当時はセガ・エンタープライゼス)の3次元コンピュータグラフィックス(以下:3DCG)レースゲームの基礎を築いたのは『バーチャレーシング』に他なりませんが、その前段としてセガは数多くのレースゲームを導入しています。

なかでも、AM2研(第二アミューズメント研究開発)で鈴木裕氏が主導した作品がそれらのルーツと言っても過言ではないでしょう。鈴木裕氏はバイク型の筐体をアーケードに導入した名作『ハングオン』(1985年7月)の開発者として有名です。学生時代からクルマ・バイクに傾倒し、当時、アーケードにあったレースゲームに満足できず、よりリアルな世界観やドライブ感を目指したいと思って、バイク型の筐体とそれと同期するゲームソフトを開発しました。ちなみにこの『ハングオン』は世界初の体感ゲームと言われており、私自身も池袋のゲームセンターで筐体を左右にハングオンをして体感プレイに興じたことを良く覚えています。

そして、鈴木裕氏は、この翌年青空のフリーウェイを疾走するレースゲーム『アウトラン』(1986年9月)をリリースします。
こちらも従来のレースゲームとは異なり、鮮やかな世界観と軽快なBGMが相まってヒットした作品です。ちなみにゲームミュージックとしてはセガで有名なコンポーザー・Hiro師匠(川口博史氏)が手掛けており、当時ブームだったフュージョンミュージック風BGMが「気持ち良い!」という評価を受けたことも『アウトラン』のイメージアップに貢献しました。

これらのレースゲームの系譜を継ぐのが、1992年8月に登場したアーケードゲーム版『バーチャレーシング』です。樹脂製のF1マシンを模(かたど)った筐体に真っ赤な塗装が施された『バーチャレーシング』はとても目立ちました。ちょうどF1が日本でブームになる渦中でのローンチとなり、セガ、AM 2研、そして鈴木裕氏の代表作となりました。

ちなみに、この『バーチャレーシング』に登場するポリゴンの粗いピットクルーたちのモーションやアクションが、後の『バーチャファイター』に活かされたことは有名な話です。

その『バーチャレーシング』を経て、AM2研が打って出た作品が『デイトナUSA』です。『デイトナUSA』は『バーチャレーシング』開発の際に鈴木裕氏のサポートを行っていた名越稔洋氏のプロデュース作品です。アメリカのNASCAR(ナスカー:National Association for Stock Car Auto Racing, 全米自動車競争協会)という団体が運営する、市販車をベースに改造したマシンを操って周回を競うもので、1990年にはトム・クルーズ主演で映画『デイズ・オブ・サンダー』(Days of Thunder)が公開され人気に火が付きました。(監督は今は亡きトニー・スコット)
レースゲームとして自動車雑誌と宣伝タイアップしたのは『デイトナUSA』が初めてだったと記憶しています。

セガを代表するレースゲームのもうひとつの作品は、『セガラリーチャンピオンシップ』で、プレイヤーは実在するラリーカーを操り、チェックポイントをクリアしつつコースを完走することを目的としたゲームです。

ラリーゲームと銘打ってはいますが、実際にはコース上には複数のラリーカーが入り混じって走っており、一般的なレースゲームにラリー的な味付けを施した作品に仕上がっています。ゲームシステムは制限時間内にコースを完走することですが、コース中にはチェックポイントが用意され、これを速く通過することで残り制限時間が増えること、敵の車を追い抜いたり、ドリフトなどのテクニックを決めることで制限時間が増えていきゴールまでたどり着くことができます。これらのわかり易いシステムがウケたようです。

『セガラリーチャンピオンシップ』は当時のAM3研に所属した水口哲也氏がプロデュースした作品で、ラリーカーにはトヨタのセリカGT-FOUR(ST205)が起用されており、実車と同じカラーリングのマシンがプレイヤーの意のままに縦横無尽に駆け抜けます。他にはランチア・デルタHF・インテグラーレも選択できます。

水口氏は、その後もバイクゲームの『マンクスTT スーパーバイク』『スペースチャンネル5』などの話題のヒット作品を生み出し、近年は2016年にエンハンス・ゲームズ(現:エンハンス)で『Rez Infinite』をプロデュースしたことでも知られています。
ちなみに、『セガラリーチャンピオンシップ』セガサターン版では、上記の2車のほかに隠し車種としてランチア・ストラトスが追加されており、カーマニア、ラリーファンから絶賛を受けました。

セガのレースゲームのノウハウと系譜は、「イニシャルD」などに引き継がれていきますが、常に新しいトライとモチーフを盛り込み、我々ファンの期待に応えてくれる作品をプロデュースしています。

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