【80年代名鑑】明菜からYMOまで 80'sからの授かりもの  vol. 34

Column

〜自分達流(オリジナリティ)で時流(ポピュラリティ)を掴まえる〜 REBECCAの快進撃

〜自分達流(オリジナリティ)で時流(ポピュラリティ)を掴まえる〜 REBECCAの快進撃

85年から86年にかけて、REBECCAはさらなる充実期を迎える。「フレンズ/ガールズ ブラボー!」のあと、86年5月には、タイトルを見るだけでサビのメロディが浮かんでくる「RASPBERRY DREAM」がヒットした。

しかし10月にリリースされた5枚目のアルバム『TIME』には収録されていない。次のリミックス・アルバム『REMIX REBECCA』には入っているので、最初からその予定だったのかもしれないが…、という、単なるデータの記述はさておき……。

『TIME』の1曲目は「WHEN A WOMAN LOVES A MAN (女が男を愛する時) 」。60年代にパーシー・スレッジがヒットさせた「When A Woman Loves A Man (女が男を愛する時)」のアンサー・ソングのようだが、そこまであの作品を意識した内容ではない。ただ、「フレンズ」でも重要な意味合いを持った、ある単語が登場する。それは、主人公の女の子は自由に恋愛をしたいんだけど、その前に立ちはだかる存在としての「ママ」、だ。

でもこの曲の場合、自分だって若い頃はたくさんKISSもしたでしょ〜、という巧みな懐柔策に出る。そういわれと「ママ」も、アイタタタ、なのではなかろうか。演奏は、後半に向け、ベースがグルーヴを増していく印象に思える。

タイトル曲「TIME」はインストで、いわゆるジャングル・ビートと笙の笛のようなシンセの透明感が相まって、“アイスクリームの天ぷら”のような舌触り。この時期といえばピーター・ガブリエルがオリエンタルな作風で人気だったが、そのあたりともどこかで呼応した雰囲気と受け取れなくはない。

続く「(It’s just a) SMILE」では、イントロで種明かしがある通り、フィル・スペクターへのREBECCA流オマージュだ。ただ、巨匠にひれ伏すのではなく、あくまで彼ら流なのがいい。コーラスの絡みなどは「ビー・マイ・ベイビー」的。NOKKOの声が、オールディーズ風のこうした作品に合った、パステル調に“発色”しているあたりも聴きどころである。

非常に注目なのは「CHEAP HIPPIES」で、メンフィス・ソウル風の立ったビートにギターとキーボードがソリッドに絡む雰囲気がカッコいい。そしてこれ、社会で出た女の子が、自分のスクール・デイズを振り返って歌ってる。大枠で捉えるなら、テーマのひとつは“卒業”だろう。ただ、その前年に、例えば尾崎豊が発表した「卒業」とは、まったく違う価値観が展開されている。

NOKKOが書いた歌詞には、“教科書より複雑な世の中”という表現が出てくる。尾崎なら、まず命題となったのは“支配からの卒業”であり、おそらく“教科書”もそのなかに含まれる。ところが「CHEAP HIPPIES」では、頭ごなしに否定しているわけじゃない。主人公は教科書で教わったことにも一理あると思っているからこそ、卒業したあとの世の中を、“より複雑”に感じているわけだ。なおこの歌には“ブルジョア(ブルジョワジーのこと)”という、マルクス用語も登場している。“地下鉄で通っている”という表現も実にいい。通うのは朝夕のラッシュ時間帯で、しかも地下鉄だから景色も見えない…、というあたりから伝わる閉塞感が、歌のリアリティをより高めている。

もうひとつ注目なのは「WHITE SUNDAY」だ。“アンビエント・バラード”と呼ぶべき作品である。当時、土橋安騎夫はフェイヴァリット・ミュージシャンとしてブライアン・イーノの名前も挙げていたが、この作品、そんな環境音楽的な肌触りも感じるアレンジとなっている。曲が進むにつれ、微妙に下がる転調も効果的。微妙に下がると“もとに戻った感覚”になり、伝えたい想いを文字でいうなら一画目から丁寧に二度書きするかのように、より鮮明に伝えるかのような効果を生む。アルバムを聴いてきて、こういう楽曲に差し掛かると、そろそろこの作品集も終りなのかな、という予感を与える。本当に終わった後の余韻の、予行演習のような役割も果たす。でもイーノと書いたけど、メランコリックなピアノの旋律は、ルグランなどのヨーロッパの映画音楽や、オフコースの「I LOVE YOU」とか、あのあたりを彷彿させるものでもある。

アルバムは「NEVER TOLD YOU BUT I LOVE YOU」で終わる。イントロが始まるや“風雲急を告げる”かのような切迫感が伝わり、でもテンポはそんなに早くはないという、これはひとつの典型的な“REBECCA調”と言えるのではなかろうか。この歌の作詞はNOKKOではなく宮原芽映だが、こんなフレ−ズが出てくる。“右手にプラトンの哲学書”。ちょっと沢田研二の「サムライ」的状況描写である。でもこの歌を聴いていて、この歌の主人公がプラトンを熟読しているようには思えないけど、2017年の今、この歌詞に接して、なんか「80年代っぽくていいなぁ」と思ってしまった。プラトンはこの場合、ファッションなのだ。ちょっと、いや、かなり向こう見ずに“盛り気味”だったのが、あの時代、80年代の特色でもあったわけだ。

文 / 小貫信昭

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