佐藤剛の「会った、聴いた、読んだ」  vol. 7

Column

忌野清志郎さんの言葉、チーフタンズの来日、パディさんとの再会

忌野清志郎さんの言葉、チーフタンズの来日、パディさんとの再会

ここのところ毎日のように、忌野清志郎さんのことを考えています。彼がつくった音楽はもちろんですが、残されたたくさんの言葉にも目を通して、純粋さと反骨精神に裏打ちされた思いを、もういちど自分なりにとらえなおしていくためです。

雑誌「Tv Bros」に連載していたコラムをまとめた単行本、「瀕死の双六問屋(完全版)」(新人物往来社)には、何かに挑戦して生きている人たちに届くようにと、優しさに満ちた彼なりの叱咤激励が、独特の語り口調で収められています。
その第39話「泥水(マディーウォーターズ)を飲み干そう」のなかに、こんな言葉がありました。

「本当に自分の音楽が好きだったら50歳になっても、60歳になっても音楽をやってステージに立つだろう。マディー・ウォーターズを知ってるかい? 80歳を超えても現役でイカれたブルースを歌っていた人だよ。本当に何よりも音楽が好きだったんだよ。」
「瀕死の双六問屋(完全版)」(新人物往来社)

そんな清志郎さんが共演したこともあるチーフタンズのリーダー、パディ・モローニさんと再会したのは、8月27日の夕方でした。

アイルランドの至宝とも言われるパディさんは、結成から55年を数えるバンドのリーダーで79歳の現役ミュージシャン。やはり今でも世界をまわって活躍しているローリング・ストーンズよりも、「半年だけチーフタンズが早いんだよ」と、ニッコリします。

子供の頃に住んでいた家にはラジオもテレビもなく、昔から語り継がれてきた小話を聞いたり、家族で音楽を演奏したりダンスをして、夜を過ごしてきたそうです。 おじいさんがフルート奏者だったということもあって、当たり前のように音楽に囲まれて育ったパディさんは家族や親戚、そして友達を通じて自然に伝統音楽を受け継いできました。

さて、1962年にパディさんを中心にして結成されたチーフタンズは、アイルランドに伝わってきたトラディショナル・フォークを、伝統音楽という狭いくくりから解き放って世界に向けて発信していきます。
彼らは狭いパブで演奏されていたケルト音楽の伝統を継承しながら、さまざまなアレンジを施すことで新たな息吹を加えました。そして、大きなコンサート・ホールでも楽しめるように発展させたのです。

そういう意味でチーフタンズは異端であり、革命児でもありました。
そのために当初は批判されることもあったそうですが、「チーフタンズの人気が高まってくると、それまで批判していた人たちもチーフタンズの様にやりだしたんだ」と、パディさんは実績で乗り越えていきます。

その名を世界にまで知られるようになったのは、1976年にスタンリー・キューブリック監督の映画『バリー・リンドン』の音楽を担当し、アカデミー賞を受賞したことによるものでした。
それ以後はローリング・ストーンズやポール・マッカトニー、ジョニ・ミッチェル、ライ・クーダー、エルヴィス・コステロ、ヴァン・モリソン、スティングと、意欲的にロック・スターたちとの共演を行っています。

これまで発表した6作品のアルバムでグラミー賞を計7回受賞し、ロックに限らず、ポップスからクラシック、世界の民族音楽などのジャンルからも共演者を迎えて、アイルランドの伝統音楽との実験や融合を行なってきました。

日本には1991年に初来日を果たし、過去10回の公演では矢野顕子さんや清志郎さんとも共演しています。
そして結成から55年を記念して、11月から12月にかけて全国ツアーを行うことが決まりました。

「自分にとって音楽をすることは、食べものと同じで必要不可欠なもの。いつも好きな音楽をやりたい! 新しいことにチャレンジするのが大好き」と語ったパディさん。
その言葉と穏やかな笑顔の向こうに、清志郎さんが残してくれた次の言葉が重なってきました。

「世界にはそういう人がたくさんいるんだぜ。君だってそうなれるさ。希望を捨てないほうがいい。俺はサイコーなんだって信じるんだ。既成の概念なんて疑ってかかったほうがいい、『何でなんだ?』っていつも子供みたいに感じていたいぜ。」

ライブ情報

ザ・チーフタンズ来日公演2017

11/23(木・祝)所沢市民文化センターミューズ  ●ゲスト:ハンバートハンバート
11/25(土)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール
11/26(日)兵庫県立芸術文化センター
11/27(月)ZEPP名古屋
11/30(木)Bunkamura オーチャードホール ●ゲスト:林英哲(和太鼓)、古謝美佐子、上間綾乃
12/02(土)長野市芸術館メインホール  ●ゲスト:矢野顕子
12/03(日)よこすか芸術劇場  ●ゲスト:矢野顕子
12/08(金)オリンパスホール八王子  ●ゲスト:ハンバートハンバート、ドリーマーズ・サーカス(from デンマーク)
12/09(土)すみだトリフォニーホール  ●ゲスト:ドリーマーズ・サーカス(from デンマーク)
オフィシャルサイトhttp://www.plankton.co.jp/chieftains/index.html

著者プロフィール:佐藤剛

1952年岩手県盛岡市生まれ、宮城県仙台市育ち。明治大学卒業後、音楽業界誌『ミュージック・ラボ』の編集と営業に携わる。
シンコー・ミュージックを経て、プロデューサーとして独立。数多くのアーティストの作品やコンサートをてがける。2015年、NPO法人ミュージックソムリエ協会会長に就任。 著書にはノンフィクション『上を向いて歩こう』(岩波書店、小学館文庫)、『黄昏のビギンの物語』(小学館新書)、『歌えば何かが変わる:歌謡の昭和史』(篠木雅博との共著・徳間書店)。

美輪明宏と「ヨイトマケの唄」 天才たちはいかにして出会ったのか

著者:佐藤剛
出版社:文芸春秋

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「自分以外の人によって、己れの人生を克明に調べ上げ語られると、そこには又、異なる人物像が現出する。歴史に残る天才達によって彩色された果報な私の人生絵巻が、愛満載に描かれていて、今更ながら有難さが身に沁みる」――美輪明宏

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