LIVE SHUTTLE  vol. 190

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Mr.Children 充実した25年間の証。ベスト・チョイスされたセットリストに7万人が揺れたDOME & STADIUM TOUR

Mr.Children 充実した25年間の証。ベスト・チョイスされたセットリストに7万人が揺れたDOME & STADIUM TOUR

Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017
Thanksgiving 25
2017年8月5日 神奈川 日産スタジアム

文 / 小貫信昭 撮影 / 薮田修身(W)

日産スタジアムの初日に行ってきた。前回ここで“未完”のツアーを観た時は、土砂降りだった。この日は天気も良く、非常に暑かったが、オープン・エアならではの醍醐味を、存分に味わった。日没していく空と曲達が、見事な“共演”を果たした。

©osami yabuta

事前にツアー・パンフレットの取材で桜井和寿に話を訊いた際、彼が言っていたのはこんなことだ。「今回は、ほぼほぼベストです」。見終わって感じるのは、まさにそれを、有言実行した内容だったということ。

お馴染みのシングル曲を惜しげもなく披露し、ライブでマストな作品も、彼らの歴史の中からベスト・チョイスされていた。でも桜井が“ほぼほぼ”と表現したように、まだまだ代表曲は他にも残っているだろう。しかし、どう選曲しても通常のライブの尺では“ほぼほぼ”にならざるを得ないのが、すなわち「Mr.Childrenの充実した25年間の証」と言えるのだ。

©osami yabuta

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これまでの作品の断片が、徐々にビルドアップしていくオープニングの音楽&映像に導かれ、1曲目は「CENTER OF UNIVERSE」。豪放磊落にギターが響くこの曲は、スタジアムにぴったりだ。7万人を収容した巨大な空間の隅々まで、音の粒が届いていくからだ。“誰ひとり、置き去りにしないからね”という、そんな彼らの熱いメッセージを受取った気分だ。

「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」では、当時のMVを上手に編集した映像が流れた。いわゆる“桜井コステロ”の勇姿! 歌詞のなかの“恋なんて言わば”という達観は、若き日の彼らだからこそ言い切れたことじゃないかと思いつつも、ノリノリで聴いていた。

ホール・ツアーからの流れでもある「ヒカリノアトリエ」も良かった。「CENTER OF UNIVERSE」とは逆に、今度は我々オーディエンスが彼らの“音がするほう”へと耳を持っていく(傾ける)番だった。この曲、野外で聴くとまた味わいが違う。光や風と、すぐ仲良しになってしまう曲でもある。

実はこれ、ホール・ツアーから思っていたことだが、ここ最近の桜井の歌は、“表現可動域”の大きなものへと変化している気がするのだ。正確に歌う部分のツヤだけじゃなく、エモーショナルなところのハリも、増している。同じ会場にいたみなさんは、どう感じただろうか? 

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「CROSS ROAD」「innocent world」「Tomorrow never knows」と、バンドが急速にポピュラリティを拡大していく(=桜井曰く“飛び級していく”)あたりを矢継ぎ早に繋げる贅沢さも、アニバーサリーならではだろう。調べてみるとこの3曲、93年11月、94年6月、94年11月と、こんな短期間にリリ−スされていることに驚く。

繋げるといえば、JENがリード・ボ−カルの「思春期の夏 〜君との恋が今も牧場に〜」の朗らかな歌と演奏のあと、そのまま「365日」が始まると、太平洋高気圧が北の高気圧に入れ替わるがごとく、辺りの空気が一変したのが興味深かった。歌、それぞれが持つヴァイブスの違いが鮮明に示された瞬間でもあったのだ(東京ド−ムの時は、確かこの場面の選曲は「抱きしめたい」だった)。

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「1999年、夏、沖縄」も、個人的にはツボだ。語るように歌われる作品だが、そんな雰囲気を活かし、新鮮なパフォ−マンスへ発展させていた。歌に続けて、桜井が語り始めたからだ。あの頃から今に至るまで、いくつかの“周年”を超えてきた心境を、真摯に語ってくれたのである。そして最後は、再び歌のサビへと戻る。すると、そこに歌われた歌詞、“君にこの歌を聞かせたい”のなかで、1999と2017が重なり合い、より強固な普遍性を帯び、我々に届いてきた。非常に感動した。

新曲「himawari」にも注目だった。そもそもこの曲は、いきなり出だしから、歌詞もメロディも彫りが深い。映画主題歌ということで、とかく関連が指摘されがちだが、映像や照明も手伝って、より歌を多義なものとして届ける。そういえば、「CROSS ROAD」にも“真冬のひまわり”という表現があり、この歌にも“暗がりで咲いてる”と表現されている。まるでこの花が、短調と長調の分数コードをまとうがごとき感情を発するようでもあり、だから歌が印象的なのかもしれない。ドラマチックに駆け上がるバンドの演奏も、桜井の歌と見事に呼応し、聞き応え充分だ。

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すでに「ランニングハイ」「ニシエヒガシエ」は演奏し終わっていたが、そこでお腹にズシリと来ていた。でも、まだまだ続いてここへと至った。普通は一回きりの大団円が、複数回用意されているのでは…、というのが、今回のセットリストだ。

そう。本編の最後に「Dance Dance Dance」、「fanfare」、「エソラ」が控えていた。フィギュアスケートの演技構成なら、敢えて後半に難易度の高い技を持ってくる的でもある。特効も曲の一部であるような「Dance Dance Dance」と「エソラ」では、同じ盛り上がるでも質はずいぶん違う。条件反射的な俊敏さの前者にくらべ、後者のほうは、体のバネを上手に使っての腰に効く盛り上がり方だ。

©osami yabuta

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気づけばあたりはとっくに夜の闇のなか…。アンコ−ルで印象的だったのは、「終わりなき旅」。ロック・ボーカリストが観客を鼓舞するために繰り出す、とびきりハイ・トーンのシャウトを、ここまで取っておいたかのように、桜井はイントロで炸裂させた。見れば25周年を迎えた彼らと、この日、それぞれの人生の“〇〇周年”を持ち寄ったオーディエンス達が、より強固に一体となり、揺れていた。

パレットのなかの鮮やかな色の饗宴が「ヒカリノアトリエ」なら、「終わりなき旅」は、色分けされた駒が高速で回転し、ひとつの色を成すかのようでもある。もちろんその色は、どこの画材屋にも売ってない、Mr.Childrenにしか出せない色だ。

Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017
Thanksgiving 25
2017年8月5日 神奈川 日産スタジアム

セットリスト

1.CENTER OF UNIVERSE
2.シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜
3.名もなき詩
4.GIFT
5.Sign
6.ヒカリノアトリエ
7.CROSS ROAD
8.innocent world
9.Tomorrow never knows
10.思春期の夏 〜君との恋が今も牧場に〜
11.365日
12.HANABI
13.1999年、夏、沖縄
14.足音 〜Be Strong
15.ランニングハイ
16.ニシエヒガシエ
17.himawari
18.掌
19.Dance Dance Dance
20.fanfare
21.エソラ
EN1.overture 〜 蘇生
EN2.ポケット カスタネット
EN3.終わりなき旅

Mr.Children

1992年ミニアルバム「EVERYTHING」でデビュー。1994年シングル「innocent world」で第36回日本レコード大賞、2004年シングル「Sign」で第46回日本レコード大賞を受賞。「Tomorrow never knows」「名もなき詩」「終わりなき旅」「しるし」「足音 〜Be Strong」など数々の大ヒット・シングルを世に送り出す。これまでに37枚のシングル、18枚のオリジナルアルバム、4枚のベストアルバムをリリース。2017年7月26日にNew Single「himawari」をリリース。3月からの全国ツアー「Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ」に続き行われた、6月からの「Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25」も無事終了した。

オフィシャルサイトhttp://www.mrchildren.jp

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