原田泰造xコトブキツカサの<試写室噺(ばなし)>  vol. 12

Interview

「泣けるゾンビ映画」と評判!『新感染 ファイナル・エクスプレス』で新感覚の恐怖を体験

「泣けるゾンビ映画」と評判!『新感染 ファイナル・エクスプレス』で新感覚の恐怖を体験

プサン行きの高速鉄道の中で、突如として巻き起こった感染パニック。凶暴になった感染者たちが次々と乗客を襲っていくなか、残された者たちは決死のサバイバルを試みる……。サスペンスとアクション、そして感動の人間ドラマを融合させ、世界中の映画祭で絶賛されている『新感染 ファイナル・エクスプレス』を、ゾンビ映画の愛好者でもある原田泰造さんとコトブキツカサさんが、熱く語り尽くします!


コトブキ この作品は「ゾンビ映画」だと言っても差し支えないと思いますけど、このジャンルの映画って、すでにいろいろ出尽くしてるじゃないですか。それこそ自主映画からハリウッド大作まで。それでも『新感染 ファイナル・エクスプレス』は新鮮で面白かったですね!

原田 面白かった。こんなに泣けるとは思っていなかったよ。

コトブキ ゾンビ映画って、その作品ごとのハウスルールが大事じゃないですか。

原田 そうそう! 作品によってゾンビの弱点が違ったりするよね。品川くんの『Zアイランド』でも、走るのが速いゾンビと、遅いゾンビがいたじゃない? この作品は「速いほう」だよね。

コトブキ 速かったですね。謎のウィルスに感染した人たちが次々と凶暴になって襲い掛かってくるんですけど、全速力で追ってきますからね。

原田 噛まれてから凶暴になるまでのタイムラグも重要だと思う。この作品はそこも速いんだよね。でも、場面によってけっこうバラつきがあったりするから、え? もう感染しちゃうの? みたいなこともあったりしてさ。

コトブキ 噛まれ具合でウィルスに侵されるスピードが違うのかもしれないですね(笑)。それもハウスルールで、例えばこれが『ウォーキング・デッド』の世界観だったら、手首噛まれたら、すぐに腕ごと切り落としますよね。

原田 確かに(笑)。でも、登場人物とか、ストーリーを語りながら、そういう設定やルールをお客さんに把握させなきゃいけないっていうのは、特殊なジャンルだよね。

コトブキ この映画はキャラクターの配置も絶妙なんですよ。子供がいて、老人がいて、妊婦がいて。それに若いカップルにホームレスもいて。

原田 あの妊婦さん、感染者に追われて走っているだけでヒヤヒヤするんだよね。

コトブキ でも、妊婦だけに母の強さを感じるというか、周りで悲劇が起こっても「悲しみに暮れてる場合じゃない」っていう感じで進んでいくのに、生命力を感じましたよ。

原田 妊婦さんの旦那役のサンファを演じた、マ・ドンソクも良かった。『悪いやつら』とか『殺されたミンジュ』に出ていて印象はあったけど、今回は特に主役級の活躍でカッコ良かった。

コトブキ 限られた状況で凝縮してるぶん、登場人物もそんなに置けないじゃないですか。そんな中でサンファが複数のキャラ設定を引き受けてますよね。ちょっとワルだけど、いざというときの頼りがいがあって、奥さんが妊娠してて…みたいな。それに戦闘能力が高い!

原田 こういう映画で、感染者をひたすら殴って進んでいく人って、あんまりいないよね(笑)。

コトブキ 闘いの準備するときも、腕にテープを巻くだけなんですよね(笑)。あの強さは、僕の大好きな韓国映画『哀しき獣』の牛骨で暴れるミョン社長と同じくらいのインパクトがありましたよ。

原田 主人公のソグは、知性派タイプだから、武闘派のサンファのほうが観終わった後に良かったなって思う人は多いんじゃないかな。まさに役得だよね。

コトブキ 3人で突破していくシーンは良かったですよね。列車内だから、基本は横スクロールなんですよ。でも、それをあらゆる構図で撮ってるから、観てて飽きない。トンネルとか、列車っていう状況も上手く使ってて。

原田 あれもハウスルールを活かした展開だよね。連結部に立てこもっているときにも、感染者の視界を遮れば大丈夫みたいなルールがあって。

コトブキ 登場人物たちも感染者の生態を少しづつ把握しながら生き残っていく。

原田 でもこれは、お話を作る側から考えると、感染者たちは襲いかかってくるけど、ドアを開けられちゃったらまずい。そういう設定上の制約からルールを作って、さらにそれを活かす演出を考えていくってことだよね。

コトブキ 電車内という制限空間から考えていく。この限られた空間がホテルとかビルなら、例えば非常階段は使えないとか、そういうルールを作るってことですよね。設定を狭めれば狭めるほど、アイデアが生まれるっていうパターンもあるじゃないですか。コントとかでも、そうやって先に設定を作ってからお話を考えていったりしますよね。

原田 それにこの作品は一種のパニック映画だと思う。だから、観てる間「自分だったらどうするか」って置き換えて考えちゃうんだよ。

コトブキ それはありますね。しかも、観てる側の立場や状況によって考えも変わるじゃないですか。僕だったら10年前だったら子供がいないから、自分がどう戦うかだけを考えるけど、今は8歳の娘がいるから、コイツ守らなきゃって思いますよね。もっと言うと、ズル賢くなるかもしれないですよ。自分の家族だけを守るために。

原田 そのテーマも作品内にちょっと出てくるよね。おばあさん姉妹のエピソードとか。

コトブキ サンファが激闘しながら妊婦の奥さんのとこまで辿りついて、再開するシーンがあるじゃないですか。あそこで、奥さんがサンファの胸を殴るんですよ。いまの立場の僕は、あのシーンにグっと来ちゃうんですよね。

原田 わかるよ。あれは印象的だった。

コトブキ あの拳は、「あんたが生きてて良かった」だったり、「助けてくれてありがとう」もあるし、「もっと速くこい」とか「心配させるな」みたいな気持ちも込めてる。で、それを受けるサンファの表情が怒るでもなく、笑うでもなくっていう。この自然な感じですよね。役者も上手いし、人物像がしっかりしているから、ドラマも深い。自分だけ助かろうっていう厄介なオジサンがいたじゃないですか。

原田 あれはすごい悪役だよね。他の生存者を煽ってお互いに疑心暗鬼にさせてたりして。

コトブキ ああいうときって、声のデカい人に引っ張られるっていうのはあるじゃないですか。

原田 それはあるね。『ネプリーグ』の「トロッコアドベンチャー」でも、正解がわかってるのに、声が大きい人の意見が通ってアウトになることがあったりするからね(笑)。

コトブキ でも、あのオジサンにもそこまでするだけの理由があることを匂わせたりするんですよね。この作品は、演出が丁寧だし、構成も構図もしっかりしてて、これで新人監督っていうんだから凄いですよ。

原田 まだ新人なんだ。ホラー作品って、ただ驚かせたり、グロかったりするだけで、人間描写とか浅くなることもあるじゃない。でも、この監督はすごく上手だし、泣ける場面もたくさんあったよね。

コトブキ もともとアニメ監督なんですよ。『新感染』の前日譚にあたる『ソウル・ステーション・パンデミック』っていう作品もあるんですけど、これが長編実写初監督とは思えないですよね。

原田 最初に感染者が出るところとか、ちゃんと怖い描写もあるしね。

コトブキ あの感染者の動きは、『コクソン』の祈祷師のシーンを手がけたパク・ジェインっていう振付師がやってるんですよ。人間のようで人間じゃないように見えるんですよね。『リング』の貞子がテレビから出てくるシーンは逆回転で撮った映像だったじゃないですか。そういうホラー表現っていうのは10年くらいで、すごい進化していろいろやり尽くしてるんで、もうないかなと思ったら、こういう画期的な作品が出て来るっていう。

原田 まだまだ進化してるよね。でも、良く考えたら、映画に出てくるゾンビっていうのは、もともとジョージ・A・ロメロが考えた世界じゃない。これをみんなが基本として受け継いで、自分たちのハウスルールを作って進化させて、面白い作品が生まれ続けているっていうのがすごいことだと思う。なにかの賞をもらってもいいくらいの大発明だと思う。

コトブキ ゾンビっていうその設定そのものが、世界中に感染して、拡散してますからね。

原田 これ、ロメロさんが権利を取って、この設定使うならお金取りますよってなってたら、ここまで発展していない。その面白さをみんなで受け継いで、みんなで育てていったことが大きいと思う。

コトブキ それこそゾンビものとか全く観たことがない人にこそ『新感染』を観てほしいですよね。ほんとに全部が詰まってるから、これ1本で済むっていう(笑)。そこから遡っていろんな作品に触れてみてほしいですね。

映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』

9月1日公開

監督:ヨン・サンホ
キャスト:コン・ユ、キム・スアン、チョン・ユミ、マ・ドンソク、チェ・ウシク
配給:ツイン

オフィシャルサイトhttp://shin-kansen.com/


コトブキツカサ 原田泰造

原田泰造

1970年生まれ。“ネプチューン”のメンバーとして、バラエティ番組などで活躍。俳優としてもドラマ、映画、舞台などで高い評価を得ている。

コトブキツカサ

1973年生まれ。日本工学院専門学校放送・映画科非常勤講師。映画パーソナリティとしても注目を集め、コメンテーターやイベントMCなどで活躍。雑誌連載やテレビレギュラーも多数。

vol.11
vol.12