スピッツが僕たちに見せてくれた世界  vol. 9

Review

「笹路期」を終えたスピッツ、その第一歩のドキュメント-アルバム「フェイクファー」

「笹路期」を終えたスピッツ、その第一歩のドキュメント-アルバム「フェイクファー」

スピッツが結成30周年を迎え、シングルコレクションアルバム『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』を届けてくれた。
世代を超えて愛され続けている音楽を作ることを成し得たアーティストが到達できる30周年。聴く人の喜怒哀楽、それぞれの想いにもそっと寄り添い、潤いを与え続けているスピッツが僕たちに見せてくれた世界をオリジナルアルバム単位で1枚ずつ振り返っていきたい。
『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』に収録されているシングルの味わいもグッと増し、もっとスピッツを知りたくなってくれることを願って。

#9 8th Album「フェイクファー」(1998年3月25日発売)

いやぁ、いいわぁこのアルバム。アルバムごとの当たり外れが極めて少ない、「どれもいい」という安定度において他の追随を許さないのがスピッツであることなどわかっているつもりだが、にしてもなんなんだこのいい曲揃いっぷりは、と言いたくなる。「♪さーかーあーがりーのーせーかいをーみーてた」(冷たい頬)とか「♪だっれっかのせいにしなくてもどうにかやってーいけーますー」(謝々!!)といちいち一緒に口ずさみたくなる、聴き手と距離の近い曲ばかり。
それから、音もとてもいい気がする、ギター、ベース、キックやスネア、どれも録り音もミックスもよくて、ギター中心のバンド・サウンドとしてのいうそもそものスピッツの基本が、とても気分よく鳴っているし。ゲスト楽器のホーンとかの音も活き活きとしているし。エンジニアは『空の飛び方』や『ハチミツ』と同じ宮島哲博なのだが、このアルバムが特にそのようにバンドっぽさが強く出た音になっている、ということは、メンバーの意志だったのだと思う。

と、聴き手としては感じるのだが、バンドにとっては前作に引き続き、なかなか大変な時期だったようだ。これも2007年刊行の単行本『旅の途中』で、そうであったことを本人たちが明かしている。
ひとつのバンドと組むのは3枚か4枚まで、そのあとはバンドが自分でやっていくべき、という笹路正徳と別れ、新しく共同プロデューサーとしてカーネーションの棚谷祐一を迎えため、これまで慣れ親しんできたやり方ではない、新しい作り方に挑まねばならなかったこと。そして、マサムネが「『ハチミツ』を超えるアルバムが作れるんだろうか?」という迷いの時期に入っていたことなどが、その大変さの要因だったようだ。

にしては、それを感じさせない作品をよく作ったなあ、というのが、リスナーとしての正直な印象だ、やっぱり何度も聴いても。
どの曲もいいし、素直に。歌詞のひとことひとこと一行一行がいちいち染みる、美しいスロー・チューン「楓」然り。ハードでぶっといギター・リフが響く「スーパーノヴァ」然り。テツヤのアルペジオとマサムネの美メロがミドル・テンポで絡み合う、“ロビンソン”を思い出させる先行シングル“スカーレット”然り。
特に。「バスの揺れ方で人生の意味が解かった日曜日」「変な下着に夢がはじけて たたき合って笑うよ」なんてマサムネの天才たる所以が炸裂しているキラー・フレーズの宝庫であり、かつ「愛はコンビニでも買えるけれど もう少し探そうよ」「余計なことはしすぎるほどいいよ」「自力で見つけよう神様」「悲しい話は消えないけれどもっと 輝く明日!!」「いつか つまづいた時には 横にいるから ふらつきながら 二人で見つけよう 神様」と、このバンドとしてはとてもめずらしい、力強く前向きなメッセージ性をストレートに放つ「運命の人」は、スピッツ史に残る名曲のひとつだと思う。

17th Single「運命の人」(1997年11月27日発売)

ベスト3に入るかも。いや、5くらいかな……いや、でも10には間違いなく入るよな……でも……すみません、いい曲があまりにも多いので。

ちなみに、このアルバムのリリース・ツアーに参加したキーボーディスト、クジヒロコは、以降現在までスピッツのライブ・サポートを務めている。レコーディングにも参加している。ファン的には「ライブのメンバー紹介の時にいちばんMCをうまい人」として認知しております。短いひとことがとても気が利いているのです、いつも。

文 / 兵庫慎司

楽曲/DISCOGRAPHY

8th Album
フェイクファー

発売日:1998年3月25日
品番:UPCH-1189

【収録曲】
01. エトランゼ
02. センチメンタル
03. 冷たい頬
04. 運命の人(Album Version)
05. 仲良し
06. 楓
07. スーパーノヴァ
08. ただ春を待つ
09. 謝々!
10. ウィリー
11. スカーレット(Album Mix)
12. フェイクファー

リリース情報

スピッツ

CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-

2017年7月5日発売
(3CD)UPCH-7329/31
¥3,900+税

1991年のデビューシングルから昨年2016年4月に発売されたシングル曲「みなと」までの全シングル曲、そして「愛のことば-2014mix-」「雪風」といったドラマ主題歌としても話題となった配信限定シングル曲、さらには、新たにレコーディングをした新曲3曲を加えた全45曲収録のCD3枚組アルバム。

【収録曲】
【DISC 1】CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection
01.ヒバリのこころ
02. 夏の魔物
03.魔女旅に出る
04.惑星のかけら
05.日なたの窓に憧れて
06.裸のままで
07.君が思い出になる前に
08.空も飛べるはず
09.青い車
10.スパイダー
11.ロビンソン
12.涙がキラリ☆
13.チェリー
14.渚
15.スカーレット

【DISC 2】CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection
01.夢じゃない
02.運命の人
03.冷たい頬
04.楓
05.流れ星
06.ホタル
07.メモリーズ
08.遥か
09.夢追い虫
10.さわって・変わって
11.ハネモノ
12.水色の街
13.スターゲイザー
14.正夢
15.春の歌

【DISC 3】CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection
01.魔法のコトバ
02.ルキンフォー
03.群青
04.若葉
05.君は太陽
06.つぐみ
07.シロクマ
08.タイム・トラベル
09.さらさら
10.愛のことば-2014mix-
11.雪風
12.みなと
13.ヘビーメロウ
14.歌ウサギ
15.1987→ 

2006年に発売された2枚の『CYCLE HIT』も2017年最新のマスタリングをして再発売!

CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2129 ¥2,500+税

CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2130 ¥2,500+税

CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection

(CD)UPCH-2131 ¥2,500+税

『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』、そして『CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection』も、今回の新たなアイテムに合わせ、2017年の最新スピッツサウンドを表現する為に、世界最高峰の「Marcussen Mastering」にてリマスタリングを遂行。7月5日に再発売。

アナログ盤も“重量盤”で7月5日同時発売!

ファーストアルバム『スピッツ』から昨年7月に発売された最新アルバム『醒めない』までのオリジナルアルバム15作品に、ミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』を加えた全16作品をアナログ盤で発売。

ライブ情報

『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』

8月05日(土):長野県・長野・ビッグハット
8月06日(日):長野県・長野ビッグハット
8月11日(金・祝):香川県・さぬき市野外音楽広場テアトロン
8月12日(土):香川県・さぬき市野外音楽広場テアトロン
8月16日(水):東京都・日本武道館
8月17日(木):東京都・日本武道館
8月19日(土):東京都・日本武道館
8月23日(水):神奈川県・横浜アリーナ
8月24日(木):神奈川県・横浜アリーナ
9月02日(土):福岡県・マリンメッセ福岡
9月03日(日):福岡県・マリンメッセ福岡
9月16日(土):北海道・北海道総合体育センター北海きたえーる
9月17日(日):北海道・北海道総合体育センター北海きたえーる
9月30日(土):宮城県・宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)
10月1日(日):宮城県・宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)

SPITZ

草野マサムネ :1967年12月21日 福岡県 O型 ヴォーカル&ギター
三輪テツヤ :1967年5月17日 静岡県 B型 ギター
田村明浩 :1967年5月31日 静岡県 A型 ベースギター
﨑山龍男 :1967年10月25日 栃木県 B型 ドラムス
草野マサムネ(Vo/Gt)、三輪テツヤ(Gt)、 田村明浩(B)、﨑山龍男(Dr)の4人 組ロックバンド。
1987年結成。1991年3月シングル「ヒバリのこころ」、アルバム「スピッツ」でメジャーデビュー後、1995年リリースの11thシングル「ロビンソン」、6thアルバム『ハチミツ』のヒットを機に、多くのファンを獲得。
以後、楽曲制作はもちろん、日本国内をくまなく廻る全国ツアーや自らオーガナイズするイベント開催など、マイペースな活動を継続している。 そして今夏、15thアルバム『醒めない』を発売、全国ツアーも大成功。
2017年結成30周年を迎え、7月5日は「CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-」を発売、『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』も敢行中と精力的に活動を展開している。
オフィシャルサイトhttp://spitz.r-s.co.jp/

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