Interview

嘘とカメレオン 初PVが弾けて注目の5人組 タフなライブ力に裏打ちされたその野望を訊く

嘘とカメレオン 初PVが弾けて注目の5人組 タフなライブ力に裏打ちされたその野望を訊く

いまライブ・シーンで大きな話題を呼んでいる5人組だ。
そのきっかけになったのは、彼らにとって初めてのPV「されど奇術師は賽を振る」が、ノンリリース、ノンプロモーションにもかかわらず、半年足らずで再生回数140万回を突破したことだったが、そこで表現されている不気味な面白さとエネルギーの高さが実際のライブではさらにダイレクトにオーディエンスを圧倒して、いよいよ注目度が急上昇。その勢いにのって、今年3月のライブで、会場限定デモとして用意されたちまち完売してしまった、すでに伝説的な音源に2曲を加えた7曲入りミニアルバム「予想は嘘よ」を初めての全国流通盤としてリリースする。
ここでは、結成のいきさつからバンドが目指す表現まで、怪しげなバンド名とは対照的なリアルで熱い心情をメンバー全員に語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 鈴木圭

コンセプトはジャンルレス、概念に捉われた音楽はやりたくないなという意識があった

どんなふうに生まれたバンドなんでしょうか?

渡辺 それは、そんなに特殊な話ではなくて、それぞれ地方出身者で、基本的には“音楽をやりたい!”というのを前提に田舎から出てきた人たちが寄り集まってできたバンドですね。

チャム で、母体が2014年にできました。

「寄り集まって」と言われましたが、この5人のなかの誰かが「この指、止まれ」的に中心になって集めたということではないんですか。

渡辺 そうですね。元はと言えば、音楽を通しての友達みたいな状態だったものが、だんだんバンドになっていた感じです。いちばん最初は、チャムさんと菅野がやっていたバンドがあって、そこからだんだんメンバーが入れ替わって、いまのメンバーになっていったっていう。

渡辺壮亮(G.cho)

渡辺さんがチャムさんと菅野さんのやってるバンドに入ったのは、彼らがやっていた音楽がかっこいいなあと思っていたからですか。

渡辺 いや、そういうことは全然思ってなくて(笑)、ただ純粋に二人と仲が良かったということと、ちょうど僕がこの前にやってたバンドが終わった時期に「ちょっと楽器が足りないから、入ってくれないか」と誘われたんです。

すごくシンプルで、端的な誘われ方ですね(笑)。

渡辺 「俺の才能に惚れ込んで…」とか、そういうことはまったくなくて、単純に「楽器が足りないから」という理由でしたね。

その時点では、どんな音楽をやってたんですか。

渡辺 もっとポップ路線というか、トガったものがなくて…。僕が入ってからは僕が曲を書くようになっていくんですけど、僕も女性ボーカルのバンドで曲を書いたことがなくて、どういうトゲの出し方をすればいいのかわからないという感じだったし。いまのメンバー5人の好きな音楽はバラバラなんですけど、そのなかでいちばんラウド系寄りの渋江が入ってきたあたりから、彼の持ち味も出していこうということで、ちょっとずつトゲが出ていって、その流れのなかでだんだんつかめていった感じでした。

渋江さんは、加入する時点では、このバンドに対してはどういう印象を持っていましたか。

渋江 ポップなバンドという印象でいたけど、でもバンドの考えとしてもうちょっとトゲを出したいという時期に誘ってもらえたんで…。

渡辺 いちばんトゲの出し方をわかってるというか、“トゲ先生”みたいなところがあるんで。

渋江 「じゃあ、こういうふうにすればいいんじゃない」というところをすり合わせていった結果、いまのような音になっていったんです。

渋江アサヒ(Ba)

青山さんがいちばん最近加わったメンバーになりますが、青山さんが入るときにはもう今回のアルバムで聴けるような音楽になってたんですよね?

青山 そうですね。元々はライブハウスの仲間として知り合ったんですけど、いまのような攻撃的なサウンドでかっこいいなと思ってたし、他のバンドと比べても異色な感じはかなりありましたね。

逆に、菅野さんはメンバーが新しく加わっていくなかでサウンドが変わっていくのをどういうふうに受け止めていましたか。

菅野 変わっていくのは、すごく楽しいですよね。

その変化は、メンバーが入れ替わっていくなかでの自然な流れというような感じだったんでしょうか。それとも、何か“こう変わりたい”という方向性があって、それがメンバーチェンジをきっかけにして実現したという感じでしょうか。

渡辺 どちらかと言えば、後者でしょうね。特にバシッと決めていたわけじゃないですけど、コンセプトとしてはジャンルレスというか、概念に捉われた音楽はやりたくないなという意識があって、それでもトゲの出し方がわからなかったからクソポップな感じに収まってた、という時期があったんです。そこに、いまのメンバーになっていくなかでうまく風が吹いてきたという感じで。

敢えて聞くんですが、ポップなままだとダメだったんでしょうか。

チャム 私自身は、トゲも出したいけど、それと同時に生きてるなかで私が毎日変わっていくから、そのことと新しいメンバーが入ったりいろんな経験をするなかで音がどんどん変わっていくのが楽しいということが感覚的に近かったんですよ。それに、ちょうどその頃、私自身のなかでも世界に対する思いが溢れて出てる時期でもあったので…。

渡辺 そういう時期ってあるよねえ(笑)。

チャム (笑)、だからポップだったバンドにただトゲを入れたかったというよりも、トゲを入れていく変化の時期が自分の生き方と重なっていたという感じのほうが私は強いですね。

渡辺 心のトゲを音楽に出したかったんでしょうね。まだまだ、世間に対して中指を立てたがる年ごろではあるので。

「心のトゲ」とは、そういうことなんですか。今回のアルバムから感じられるのは、そうしたシンプルな怒りや反抗心とは違う、もっと一筋縄ではいかない感じですが。

渡辺 個人レベルではそういう感情もあるかもしれない、ということですね。でも、バンド単位で表現したいものは、そういう四畳半的な考え方ではなくて、もっと靄のような、形もくっきりしていないものなんですよ。世界に対して「この野郎!」と言おうとすると、どうしても具体的な話になっていくじゃないですか。無意味に職務質問された、とか(笑)。そういう些細な日常に対する怒りではなくて、もっと靄がかかってて、何なのかわからないくらいのほうが、受け取ったときの気味悪さというか、ちょっと不思議な感覚が出てくるかなあという気がしてるんで。

チャム 私としては、その中指を立てたい相手というのは具体的な何かというよりも、既成概念とか当たり前とか普通になってることなんですよね。そういうものを壊していきたいなという気持ちを音楽で、しかもジャンルレスのサウンドで表現できたらいいなということなんです。