Interview

新山詩織 Charaプロデュースの新作で見せたかったのは“大人になった自分”。MVは彼女の憧れの、岩井俊二が撮影

新山詩織 Charaプロデュースの新作で見せたかったのは“大人になった自分”。MVは彼女の憧れの、岩井俊二が撮影

新山詩織が3rdアルバム『ファインダーの向こう』以来、9ヶ月ぶりとなるニューシングル「さよなら私の恋心」をリリースした。表題曲の作曲とプロデュースを手掛けたのは、彼女がデビュー前から尊敬していたChara。Charaが「素直でいる事で傷つくことを恐れずにいたい。私と詩織ちゃんは共鳴したんだ」というコメントを残しているように、互いに通じあうものがあったのだろう。音楽に対して、人生に対して、人間関係において、年齢を重ね、経験を積めば積むほど、ピュアでい続けることは難しいし、傷つきやすくもある。だからこそ、「素直でいる事で傷つくことを恐れずにいたい」と言い切れるふたりが作り上げた歌は、切なく優しく胸に響く。

取材・文 / 永堀アツオ

Charaさんには、淡さや切なさがありつつ、強い女性像を持っていた

Charaさんにサウンドプロデュースをお願いすることになった経緯から聞かせてください。

次のシングルをどうしようかってスタッフさんと話してた時に、今まで自分がカバーしてきた曲を見ながら、今の心情というか、素直な気持ちをより強くに出せたらいいなって思って。以前、Charaさんの曲をカバーさせていただいたので、名前があがって。そこからお願いできないかって。

レギュラーラジオの企画でCharaさんの「ミルク」をカバーしていましたね。

最初は、Charaさんの曲を知るより前に、映画に出てたCharaさんを観てたんですよ。中3の時に観た映画『スワロウテイル』で知って。そのときは、歌う人だっていうことを全く知らなくて。きっと役柄を演じてるんだろうけど、そこに、素な感じがあって。単純な言葉だけど、すごくいいなって思ったのが正直な気持ちだったんですね。その時から、曲を聴くようになって、ライブにも何度か行かせてもらって。Charaさんには、淡さや切なさがありつつ、強い女性像を持っていたので、だからこそ、お願いできたらいいなっていう気持ちがありました。

オファーをして、OKをもらった後、Zepp Tokyoのライブに行ったんですよね。

そうですね。ライブが終わった後に初めて対面させていただいたんですけど、思ってたままの方でした。とてもフレンドリーに話しかけてくれて。そこで改めて、お願いしますって言いました。

何回かスタジオに行かせていただいて、今まで自分が聴いてきた音楽だったり、好きな曲だったりを話しつつ

Charaさんにはどんなリクエストをしたんですか?

初対面した時は私からは言ってなかったんですけど、後日、Charaさんのプライベートスタジオの方にお邪魔して。打ち合わせとコミュニケーションを兼ねて行ったんですけど、「初めて詩織ちゃんと会った時に浮かんだフレーズがあったんだよね」って歌ってくれたのが、タイトルにもなってる「さよなら私の恋心」だったんです。

歌い出しの部分ですね。

ギターを手にして、目の前で歌ってくれて。全てはそこから始まったんですけど、単純に感動してしまって。そのときから、Charaさんは私っていうものを見てくれながら、デモを作ってくださって。歌詞もCharaさんがフレーズを出してくれた後に、メッセージのやり取りで、二人で言葉を出し合いながら、土台を固めていって。打ち合わせの後にも、何回かスタジオに行かせていただいて、今まで自分が聴いてきた音楽だったり、好きな曲だったりを話しつつ、「こんな感じも好きなんだね。じゃあ、オルタナまで行かないけど、ちょっとノスタルジックな感じも入れてみようか」とか、私のルーツの部分も取り入れてくれて。同時進行でやっていた感じです。

ルーツの部分というのは?

マイ・ブラッティ・バレンタインを好きで聴いてたとか、ルーシー・ローズという素朴なフォークシンガーが好きだっていう話をして。それらのアーティストサウンド感を取り入れてくださったのかなって感じました。

とても切なくて優しい曲になってますよね。

私も今でもなんどもループするくらい好きな曲です。サウンド感も、歌詞に寄せて、ギターのフレーズや音色を、ギタリストの方とCharaさんが話しながら、録って行って。私も好きな夕景や、静かな海の浜辺とか、ノスタルジックな感じがそのまんま出ているなって思います。

<さよなら私の恋心>というフレーズが出てきたときはどう感じました?

私はCharaさんからこんな感じで見えてたんだっていうのと、すごく切なくなる一言だなって思いました。Charaさんには、「なんか、気づいたら、ふっと消えちゃいそうだね」って言われて。そんな感じがあったんじゃないかなって思いますね。

何とか吹っ切って、次に進まなきゃダメだなって改めて感じて

そのフレーズから二人で歌詞を書き上げていったんですよね。

そうですね。一言で言うと、失恋した女性の心情が書いてあるんですけど、それだけじゃなくて。歌詞のやり取りをしている時に、私がぽろっと、「学生時代、片思いをしてたんですけど、何も言わずにそのままだったんですよね〜」っていう話をした時があって。その時にCharaさんから、「そういう過去のこととか、美化しすぎないでいたいよね。また新しい恋が詩織ちゃんに実るような種を植えていけたらいいな、Charaは」って返事が来て。その時、ハッとして。恋愛に限らず。人間関係でも、思い通りにいかなかったり、うまくいかなかった時って、吹っ切ろうとするんだけど、どこかにもやって残ってて、なかなか消し去れない、若干、未練が残ってる状態なんですけど、そんなことが多いな、と思って。Charaさんの言う通り、過ぎ去った後だからこそ、その時のいい部分ばかり見えちゃったりすると思うんですけど、それだけじゃ何も変われないなと思ったし、何とか吹っ切って、次に進まなきゃダメだなって改めて感じて。そこから私の中で、気持ちの整理がついて、言葉が出て来たりしました。

具体的な部分でいうと、最後の<言えないまま捨ててきました>という言葉は新山さんぽいですね。

そこは完全に私ですね(笑)。

続く、<言葉は戻らない>がCharaさんっぽいなって。

そうです。<言えないまま捨ててきた>のが私で、<言葉は戻らない>はCharaさんです。その2行で、なんか、繋がったって思いました。ほんとに全部で1つっていう感じなんですけど、ただ失恋した女性の曲というだけでなく、複雑な気持ちを吹っ切るまでの葛藤が出せたらいいなと思っていて。

確かに、忘れたいけど忘れられない。忘れたくないけど忘れてしまいたい。そんな自問自答が繰り返されてますよね。過去の失恋の傷を長い時間かけてような振り切っていく過程とううか。

失恋した友達と話をしてる時も、<忘れてやる>って言いながら、そのあとに、<あんなところが好きだったんだよね>とか、良い部分を思い出したりしてて。その半々で行ったり来たりする、揺らいでる感情があって。なんかそのゴチャゴチャっとした部分を、自分から出せなかった時に、Charaさんから<優しいだけじゃおかしいな/おかしいことが悲しいな/悲しいことが優しいな/優しいだけじゃおかしいな>っていう部分のアイデアで出してきてくださって。ここが、この曲の一番大事な部分というか、心臓の部分なんじゃないかなって思いました。