モリコメンド 一本釣り  vol. 30

Column

ケロケロボニト “インターナショナルTANOSHIIサウンド”を掲げる3人。そのクロスカルチャーな音とは?

ケロケロボニト “インターナショナルTANOSHIIサウンド”を掲げる3人。そのクロスカルチャーな音とは?

賛否両論を巻き起こしたカルヴィン・ハリス、日本のバンドシーンの新たな潮流をはっきりと見せつけたSuchmosなど質の高いライブを数多く体感できた今年のサマーソニック(東京/1日目)のなかで“思いがけない素晴らしい出会い”と言うべきアーティストが、ケロケロボニト(Kero Kero Bonito)だった。フロントに立つのは、日本語と英語を交えたラップを繰り出すキュートな女性ボーカリスト。DJブースには白人の男性がふたりいて、90年代ハウスミュージックと‘00年代エレクトロをナチュラルにつなげるトラックを鳴らしている。キッチュ&カラフルなファッション性とレトロフューチャー感たっぷりとサウンドのバランスも良く、“ちょっとだけ観てみようかな”と思っていた筆者は結局、最後まで楽しく踊っていたのだった。

ケロケロボニトは、ロンドンのアートカレッジ出身のバイリンガル女子・セーラ(ボーカル、ラップ、アートディレクション)、サウンドプロダクションを手がけるガス、ジェイミーによる3人組ユニット。結成のきっけかは、ガスとジェイミーが日本語のできる女性ボーカルを探すためにネットの掲示板に呼びかけたこと。イギリス人と日本人のハーフで中学生まで日本(愛知県、北海道)で暮らし、ロンドンに移住したサラと出会ったことで、国境を超えた音楽ユニットが生まれた。楽曲制作とライブをスタートさせた3人は2015年3月にS × SWに出演、同年7月には世界最大規模の音楽フェス、グラストンベリーに出演するなど、活動の規模を着実に広げてきた。さらに本国イギリスはもちろん、よーロッカー、アメリカでも精力的にツアーを開催。今年7月には日本デビューアルバム「Bonito Generaiton」(ボニトジェネレーション)をリリースし、国内での知名度も高まっている。

このユニットの最大のおもしろさは、日本とヨーロッパのポップカルチャーがナチュラルに混ざっていること。ガス、ジェニーは以前から日本のポップミュージックに興味を持っていて、YMO、Fantastic Plastic Machine、電気グルーヴなどテクノ〜エレクトロ系のアーティスト、またHALCALI、水曜日のカンパネラなど、女性ラッパー/シンガーをフィーチャーしたユニットからも刺激を受けたという。さらにUS、UKのインディーロック、ネオ・ソウル、ネオ・ファンクのテイストを融合し、懐かしさと新しさを兼ね備えた独自のトラックを編み出したというわけだ。もうひとつの特徴はもちろん、セーラのバイリンガルなラップ。幼少の時期を日本で過ごし、国際都市・ロンドンに移住した彼女の経歴はそのまま、日本語と英語を自由に行き来するラップスタイルに直結している。水曜日のカンパネラのコムアイは3人について「セーラのラップにも彼女のマルチレイシャルな出自が表れているし、バンド自体の音楽性も無国籍なかんじ、国籍だけでなくカルチャーもクロスしている。人間が生きていればそれが当たり前で、それまで積んできた文化のねじれや重なりをそのまま表現に出しているバンド、もっと増えていきそうです」とコメントを寄せているが、ケロケロボニトのスタイルと音楽性は、メンバー自身の人生のなかで自然と培われたものなのだ。

YouTubeを活用しながら日本、ヨーロッパ、アメリカを中心にファンを獲得してきた3人。カラフルかつポップなサウンドメイクに注目が集まっているが、このユニットの音楽は刹那的な快楽を求めるだけではなく、その根底に“限りある人生をポジティブに楽しもう”という意志が流れている。そのことを端的に示しているのが、アルバム「Bonito Generaiton」に収録されている(サマーソニックのライブでも披露していました)「Trampoline」。「どんどん落ちていくと/Trampolineがあるんだよ/突き落とされても大丈夫/手を挙げて 跳びあがれ」というラインは、ケロケロボニトの中心的なコンセプトを指していると。“多様性が大事”などと言いながら、息苦しい閉鎖感が包み込む現在の日本において、自らの音楽と活動を通して“好きな場所で好きなことを好きなようにやるべき”というメッセージを発信し続けているケロケロボニトの存在は、10代〜20代のリスナーを中心に大きな支持を獲得することになるだろう。

イギリスを代表するデザイナー、ステラ・マッカートニーの2015年の春夏コレクションのCMで「Sick Beat」が使用されるなど、ファッション業界からも注目を集めているケロケロボニト。8月22日に都内で行われたフリーイベントも大盛況となったが、今後は日本での活動も活性化することになりそうだ。DAOKO、DJみそしるとMCごはん、ちゃんみな、春ねむりなど、国内のフィーメール・ラッパーはもちろん、WONK、LUCKY TAPESといったダンスミュージック経由のバンドとの親和性も感じさせる3人はこの先、ジャンル/国籍/シーンを自然体で超えながら独自のスタンスを築くはず。“インターナショナルTANOSHIIサウンド”を掲げる3人のポジティブ&ハイブリッドな音楽にぜひ注目してほしいと思う。

文 / 森朋之

オフィシャルサイトhttp://www.sonymusic.co.jp/artist/kerokerobonito/

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