特集"シド ニューアルバム『NOMAD』リリース記念企画"  vol. 4

Interview

シド ソロインタビュー④ マオ~4つの思考と刺激の集合体~

シド ソロインタビュー④ マオ~4つの思考と刺激の集合体~

オリジナルアルバムとしてはじつに3年6ヵ月ぶり。先日5枚目のアルバム『NOMAD』をリリースしたばかりのシド。『NOMAD』発売に合わせてデイリー更新を続けてきた[シド特集]も今回で4回目。ソロインタビューのラストを飾るのは、もちろんこの人。ヴォーカルのマオだ。マオ from SIDとして行なったソロプロジェクトの活動も踏まえ、メンバー、ファンとの久々の“再会”を祝福した本作。そこで打ち出した新しいシドについて話を訊いた。

取材・文 / 東條祥恵 撮影 / 今元秀明


自分自身と向き合って考える時間があったということ。これがたぶん一番大きいと思います

今までもアルバムを出すごとに新しい曲、新しいシドは見てきましたけれども、今回は振り切った新しさを見せた作品になりました。そうなれた要因はなんだと思いますか?

一番は、間を空けたっていうこと。結果的にそれがいい刺激になったのかなと思いますね。

どんなところでそれを感じましたか?

やっぱり4人がずっと一緒にいたのと、ちょっとの間4人がバラバラになる。そこで一番変わるのは、それぞれが考えるようになるっていうことなんです。やっぱ4人でいると4つに分散しちゃって。俺もそうなんですけど、みんなどこかしら「4人いるし」っていうのはあったと思うんですよね。「誰かがやるんじゃないかな」とか。「まあシドだし、大きい船だし、自然と進んでいくんじゃないかな」っていう意識が4人とも今思えばあったなって思うんです。でも、4人が別々になった途端にそれがなくなるから、みんな不安になっちゃうんです。そこで4人ともしっかり考える時間があったのかなっていうのをすごく――まあ活動の幅やペースはそれぞれでしたけど「考える」っていうことでいうと、たぶん誰もボーッとしてた人はいなかった気がするんで。それが新しい刺激になったのかなって思います。

そこで、シドについて各々がしっかり向き合って考えたということですか?

そういう時間ももしかしたらあったかもしれないですね。それもありつつ、俺がさっき言ったのは自分自身と向き合って考える時間があったということ。これがたぶん一番大きいと思います。結局シドと言いつつ1人1人が4人いるバンドなんで。1人1人がレベルアップしてないと、きっと新しいこともやれないと思うから。そこはみんな考えたんじゃないですか。

自分に合う合わないは置いといて、1回いろんなものを試そうって思ってました

その、1人1人のレベルアップというところでいうと、マオさんはシドが止まっている間にソロプロジェクトを始動。そこでヴォーカリストとして様々な挑戦をされてましたよね?

いろいろ試しました。自分に合う合わないは置いといて、1回いろんなものを試そうって思ってました。「もっといろいろやれたほうがいいのかな」っていうのはずっと思ってたし、今ももちろん思っていて。それは歌い方だけじゃなくて、たとえばソロでは舞台に出ていって1曲だけ歌って。その1曲で勝負する、仕留める。そういうものも経験しましたし。

昼間のショッピングモールのイベント会場で歌ったりしてらっしゃいましたもんね。

そこで何回も失敗を繰り返して。だから、そこはもう……技術的なところじゃなく、気持ち的なところが大っきいんです。気持ち的に、ぬるめなところでやらせてもらってたんだなっていうのは思いました(笑)。ぬるめというか、全部キレイに整った環境でやらせてもらってたんだなっていうのを一番感じましたね。

なるほど。そういうことを経験して、ヴォーカリストとして歌い方、気持ち的にも大きくなったマオさんが、間違いなくこのアルバムにはいますね。いい意味で歌に余裕があるというんですかね。

ありがとうございます。

まず、今作のオープニング「NOMAD」と最後の「普通の奇跡」。この序章とエンディングに置かれた2曲を通してすごく感じたことをお話ししますね。このアルバムは「NOMAD」の“限りある時間〜誰もが終わりへと向かう〜”ということから始まり、“最後に歌を歌うよ〜”という歌い出しから始まる「普通の奇跡」でフィニッシュするところにとにかくハッとさせられました。再会を祝福すると同時に、「いつまでも僕は歌えるわけじゃないんだよ」というリアルを歌ってると思ったんです。

あー。もちろんそれは人間なので、いつまでもというのは無理だと思うんですけど。まず「NOMAD」でテーマとしたのは「再会」――みんなと再会して、シドそれぞれもだし、シドとファンのみんなもだし、スタッフもだし、みんながまた集合して。それで最後に「普通の奇跡」でまたお別れをするという流れなんですね。そのお別れも前と違って、次の約束をしっかりした上でのお別れを今回できるのは幸せだなと。そういうイメージで書いたものなんですよ。

ああ、そうでしたか。

ただその、時間に限りがあるとか、その辺は確かに最近思いますよね。たとえばですけど、ファンの方で「一生応援します」って言ってた人が来なくなっちゃったりとか。ふとした拍子でそういうものが崩れることもあるし。あとはまあ‥俺が歌えなかった時期もあったし。それも自分の中であり得るはずじゃなかったことが急に起こったんで、そういうのもあったし。単純にね、歳をとっていけばもしかしたら歌えなくなる状態がくるのかもしれないし。そういうのは常に考えてますよ。でもまあ、もっと前向きですかね、これは。「もっとお互い時間を大事にしようね」っていうとこですかね。どちらかと言えば。

「まあ奇跡なんだけど、もうこれが普通だよな」っていう意味を込めて付けたんです

そうでしたか。アルバムのなかでもこの2曲は歌詞が一番リアルだったので。

特にストレートですからね、歌ってることが。「普通の奇跡」とかはまっすぐに言葉を伝えてるんで。

それを「普通の奇跡」とマオさんが名付けた理由を教えてもらえますか?

日常にある「普通」と「奇跡」って真逆のところにあると思うんですけど。出逢えたり、ライブで盛り上がったりっていうところは奇跡だと思ってるんですね。これだけ人間がいる中で出逢えただけでも奇跡じゃないですか。なんですけど、もう14年、来年で15年もやってるとそれが普通に思えてくる。これが結成5年目とかだと、まだ奇跡だなって感じが強いんですけど、長くやればやるほどそれが普通の感覚になってくる。ひとつの集団を長く続けないと、この気持ちってきっといい意味で味わえないんだろうなと思って。だから、「まあ奇跡なんだけど、もうこれが普通だよな」っていう意味を込めて付けたんです。

そうでしたか。

あともうひとつは、「これを普通に思っちゃダメだよ」っていうのもある。最初の話に戻るんですけど。いつまでも続くと思っちゃダメ、だからこそ「この時間はホントに大切にしなきゃいけない奇跡の時間だよ」っていうのも思うんです。けど、今はその奇跡の時間さえ肩の力を抜いて活動できる感じは、普通だよなって感じはすごくしてますね。

普通と奇跡。そのパラレル感が深いですね(微笑)。では「NOMAD」のほうに戻って。ここでは“僕らは〜暖をとるためにここへ来たんだ”という一節が気になりました。これは、どういう意味なんですか?

1回バラバラでやってみて「あ、自分でやれることってけっこうあるな」っていう反面、「ああ、シドってすごくいい環境だったんだなあ」っていうことに気づいた。それで、もう1回戻ってきてみんなで集まったときのこの暖かさというのかな。それがなんかこう…「やっぱ、なんだかんだでちょっと寂しかったよね」っていう。その感情を表しています。どちらかと言えば(笑)。あと「NOMAD」っていうタイトルにも掛けて。そういう世界観を表現するには“暖をとる”っていう表現がいいのかなっていうのもちょっと思いました。

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