Interview

内田万里が「女っぽさとの戦い」を制して完成した“ふくろうず”新作の全貌

内田万里が「女っぽさとの戦い」を制して完成した“ふくろうず”新作の全貌

昨年7月にリリースされた『だって、あたしたちエバーグリーン』から、約1年ぶりにニューアルバムが発売された。 結成10年となる節目の年にリリースされるアルバムは、10周年だからといって力んで作られたものではなく、今までのスタンスを変えずに制作された一聴して「ふくろうず」とわかるポップな楽曲が揃っている。 全作詞、作曲をしているボーカル内田万里に話を訊いた。「女っぽさとの戦いをずっとしてたんです。」とあっけらかんと話す内田も、自分の世界観を表現するのに葛藤もあったようだ。その葛藤とはなんだったのか、このアルバムに込めた想いを感じてほしい。

取材・文 / 土屋恵介 撮影 / 荻原大志

自分を切り売りする、さらけ出す以外に自分のいいところってないっていう

ニューアルバム「びゅーてぃふる」は、全体を通じてキラキラした輝きのあるサウンドと、これまでよりもストレートに思いの伝わる歌詞が詰まった作品になりましたね。

今回は、ちゃんと自分のことを包み隠さず伝えようと思いました。

制作中に、アルバムの全体像が見えたって曲はありますか。

「ソナチネ」って曲は入れる気が無かったけど、周りからこの曲の入れたほうがいいんじゃない?って言われたんですよ。ものすごく女っぽい、自分っぽい曲なので、これ入れていいんだって思えたときに、わりと方向性が決まった感じがありました。

今までは、あまり女っぽさを出したくなかった?

私、女っぽさとの戦いをずっとしてたんです。私自身、めちゃめちゃ女っぽいところがあって、そういうところやだなって。私ずっと女子校だったんです。女の人って都合がいいじゃないですか。あと、25歳を過ぎた頃から、周りが結婚するならどんな男と結婚する?とか話してて、そういうのがめちゃくちゃ嫌なんですよ(笑)。

(笑)。女子の集団が苦手なんですか。

そうじゃないんです。自分がものすごく女っぽいとこがあって、すごくその自覚があるって苦しみなんですよ。年を取れば取るほど、自分の中の葛藤がすごくなってたんです。だから、表現方法で自分の女っぽいところをさらけ出すことに抵抗があって、結構悩んでいたんですけど、今回は比較的さらけ出せたかなとは思っております。

内田さんの頭の中を、より具現化してるものが多くなってるのかなと。

そうですね。自分の好きなものとか考えとかを、100%じゃないけどできる限り苦しみながら書けたと思います。

そこまで、自分を出しちゃおうって気持ちになれたきっかけはありますか。

それは、バンドを10年やってきたからっていうのはすごくあると思いますね。

結成10周年っていうのが大きかったと。

そんなに最初から意識してたわけじゃないんですけどね。10年やってきて、結局自分を切り売りする、さらけ出す以外に自分のいいところってないっていうか(笑)。自分を切り売りしないで表現できる人もいるけど、自分はもともと、他人が切り売りしてる音楽が好きだったし、自分もそれでしか何も表現できないのかなって思いに至りました。それを無視して何かするのは逃げることにもなるしって気持ちには至ってました。

じゃあ、自分と正面からぶつかるみたいな。

ある程度それをできた部分もあると思いますね。

アルバムタイトルを『びゅーてぃふる』にしたのはどうしてですか。

自分の嫌な部分とかも全部ひっくるめて、それでも人生は素晴らしいものだって言いたかったんです。どんな部分があっても人間は美しいものであると思いたいタイプなので。そういう気持ちはこもってると思います。

楽曲の「びゅーてぃふる」は、アルバムの今言ったようなことを集約してますよね。

はい。私って人間がある程度ここにあると思います。

あらゆる人に対して、みんなそれぞれ美しいよって言ってますね。

そうですね。それも、自分の汚いところがあったり、他人に嫌だなって思うことがあるからこそ、美しいところも見つけられるのかなって信じてます。だからこそ、こういう曲も作れたのかなと思いますね。

曲はどんなときに浮かんだんですか。

電車に乗ってるときです。これは、サビの歌詞とメロディが一緒に浮かびました。その頃、次どうしよう、私まだ曲作れるのかな?って、思ってたんですよ(笑)。言うても、曲数だけはすごく作ってきたので。何か言いたいことあるかな?って、思ったときに、ポッとこの曲が浮かんだのは覚えてます。
私、いびつなものが美しくないと思ってたときも結構あったんです。もともとは、ムッチャクチャいびつな人間なんですよ(笑)。それをちゃんとビューティフルだって自己肯定してあげようと思ったんだと思います。他の人から、醜い自分を自己肯定してるような印象を受けるって言われたんですけど、そういう風に映るんだなって。ちょっと複雑な思いもしましたが(笑)。

1枚目のアルバムから、ずっともがいてます(笑)

(笑)。あと、アルバムを通じて、夢の中って感じがすごくしました。夢ってデタラメだけど寝てる間はリアルじゃないですか。その中での世界が、楽曲にも反映されてるのかなと。

ドリーミーな世界観は、子供のときから好きなんです。マンガとかアニメとか空想好きではあるので。そこと、現実的な、人間の醜さとか汚い本質とかが同居してるものが書けたらいいなとはぼんやり考えてました。

妄想好きですか。

好きですね。ただ空想とか妄想だけで終わっちゃうのは嫌だったんです。そこにリアリティがあると、すごく自分が好きな世界観だなと思います。

あと、すごくもがいてる感じもしますね。

はい、すごく。1枚目のアルバムから、ずっともがいてます(笑)。

(笑)。それは、外に出たいという、人間の渇望する思いがより明確に出たってことのようにも思います。

そうですね。最近思うのは、作品だけ見たら素晴らしいものってあると思うんですけど、それがたとえば歌手であれば、本人とギャップがないようにしたいと思ったんです。どんなに美しいものでも、自分自身と離れてるものだと、それは自分にとっては意味がないなと思ってて。もし作品がよくなくても、それがそのときの等身大の自分であれば、それはしょうがないなって思う気持ちが大きいです。

アウトプットしたものイコール自分みたいな。

そうです。それだけをみんなに認めてもらいたいなと思いました。矛盾があるけど、なるべく作品と自分っていう人間との乖離はないようにしたいなと思って作りました。

では、曲に触れながら話を進めましょう。クラシックモチーフの入った「カノン」はどうやってできたんですか。

この曲は、小学校4年生くらいに作った曲なんです。

小4ですか!? びっくりですよ(笑)。

いやいや。サビで転調してるんですけど、そういうギミックはなかったんです。でも基本的には小学生のときに作った曲ですね。歌詞はちょっと違うけど。

歌詞もだいたい作ってたんですか。すごいじゃないですか。

全然すごくないですよ(笑)。でも、そのままの部分はないけど、内容はこういう感じでした。

でもこれ、さよなら感が強いですね。

お別れの曲ですね。学校で誰かが転校するときに、音楽の授業でお別れの曲を作ったときのものなんです。

誰か天に召されたのかなって感じにも取れますが。

そういう感じの歌詞になっちゃいましたね(笑)。でもそういう深読みをしてくれたらそれはそれでうれしいです。

自分から生まれたものだけど、受け取られる側で増幅されるのは全然オッケーだと。

それはめちゃくちゃうれしいですね。音楽ってそういうものだと思ってますし、なんとでも思って欲しいです。そう思ってもらえる余地のある歌詞を、できれば書きたいと思ってたし。

隙間がある方が、聴く方も楽しいですしね。

そうですね。私、ビートルズが一番好きなんですよ。特に中期以降の歌詞って解釈の余地があるじゃないですか。「ハロー・グッドバイ」も、楽しい歌とも悲しい歌とも受け取れるところが素晴らしいし。そういうのは大切にしたいです。

あと、「光」も一歩出たい感が曲に出てますね。

確かに。これは中二病卒業って感じですね(笑)。

(笑)。歩き続けていこうって歌詞は、音楽を続けていこうって思いにも取れるし。

そういう風にも取れるかもですね。

「スローモーション」は、ベースはファンクでギターはオリエンタルってサウンドがすごい混ぜ方だなと(笑)。

(笑)。これは休憩の曲です。あまり深刻になってもしんどいし。

あと、「ジミー」って曲のジミーは誰なんだ?ってすごく気になったんですけど。

これは地味のジミーです。

あ〜(笑)。僕の勝手な拡大解釈は、リフ番長のジミー・ペイジがうっかりシンセを弾いて、いつの間にかループしてこうなちゃったみたいなイメージが浮かびました(笑)。

うれしい! それ最高の解釈です(笑)。

(笑)。この曲もそうですけど、ふくろうずってループミュージックの高揚感がありますよね。音もだし、同じ言葉の続いてくのもそうだし。

それが好きです。ループ感とビートルズとニール・ヤングの3つが好きです(笑)。なんなんですかね、ループしてるものの気持ちよさって。

ずっと聴いてると、だんだんアホになってくじゃないですか(笑)。

なりますね(笑)。かっこいいって盛り上がれるし。「ジミー」に関しては、高校生大学生の頃とかエイフェックス・ツインとか聴いてたときもあって、そういう自分もちょっとくらい出したいなと思ったんです。

「ピンクエレファントの憂鬱」は、象の悲しさをサイケポップで歌う曲です。

私、誰にも何も言われずに自然と曲を作ってると、こういうのばっかになっちゃうんですよ。小学生のときに、一番最初に自覚してめちゃ好きだなって聴いてたのが、ビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」なんです。こういう曲が好きだなって気持ちを、ずっと消せないのの表れですね(笑)。

ルーシーがピンクの象になっちゃったと(笑)。

そうですね(笑)。なんであの曲あんなに好きなのか今でもわからなくて。なんとも言えない雰囲気がありますよね。ああいうのに影響を受けて書きました。

でも、なぜ動物園の檻の中の象の歌になったんですか。

これはギターの石井(竜太)ちゃんが、ピンクエレファントっぽいってボソッと言って、そこから歌詞を書いたんです。

全然話飛びますけど、上野動物園のことをふと思い出しました。

私も、動物園と言ったら上野動物園ですね。

大人になって上野動物園に行くと、上野にパンダとかキリンとか世界中のあらゆる動物、猛獣とかいるっていう、上野のヤバさを感じました。おかしいぞこの空間って(笑)。

確かに、あんな都会のど真ん中にねえ(笑)。私も大学生のときに上野動物園に行って、入り口の初っ端がフクロウなんですよ。くるくる首が回ってて、それ見てカップルが、かわいいって言ってて、そんなことないだろ!ってすごい違和感だったのが結構衝撃的で。そこから、ふくろうずってバンド名が来たんです。

お、意外とつながりました(笑)。上野に感謝ですね。そして「ソナチネ」ですが、「カノン」もそうでしたけど、クラシックモチーフが入ってます。

そういうのが好きなんですよ。

こっちはバロック感がありつつ、歌詞は好きなもの嫌いなものが、曲の1番と2番で逆転するって感じになってます。

これが自分の女子っぽさを、人生の中で一番出した曲です。むっちゃ女子ですね。こういう自分の女子っぽさを確認したくないから、あまり女の子とつるまないんですよ。

一緒にいると、自分もこういう部分があるって確認しちゃうんですか。

いや、一緒に盛り上がっちゃうので(笑)。悪口の相乗効果で、どんどん楽しくなっちゃうんです(笑)。で、家帰って自己嫌悪になることがあるから、難しいなって。…でも、むちゃ好きっす。人と悪口で盛り上がるの(笑)。

アハハハ、全然女子じゃないですか(笑)。

そうなんですよ。だから危ない危ないと思って、たまにしかやらないようにしてるんです(笑)。