【80年代名鑑】明菜からYMOまで 80'sからの授かりもの  vol. 36

Column

REBECCAの新曲「恋に堕ちたら」は、今のNOKKOだからこそ歌える愛の境地を描く

REBECCAの新曲「恋に堕ちたら」は、今のNOKKOだからこそ歌える愛の境地を描く

ヒトはやたらと、バンドの解散物語に興味を持つ。世の中には『バンド臨終図巻』なる、そのテの話題を事典にした本まである。「音楽性の不一致」「他にやりたいことが出来た」「事務所と上手くいかなくて…」。そこにあるのは様々な理由だ。

REBECCAの場合、前回も触れたとおり、メンバーそれぞれ「他にやりたいことが出来たのでは?」ということが、ファンに伝わらなくもない幕切れだった。つまり、発展的解散である。心情的には“レット・イット・ビー”なメンバ−もいたかもしれないが、発展的だったのならメデタイ。そんなわけで、最後のオジナル・アルバム『BLOND SAURUS』(1989)を聴き直してみよう。

巷には、「REBECCAらしさが後退した」という評価もあったが、まず言えるのは、それぞれの楽曲が、これまでの“らしさ”に拘ることなく、“作品第一主義”で完成へと至っている点だ。

ニューヨークを訪れ、現地での活動も視野に広げつつだったNOKKOが、より具体的に、その思いを作品化し始めたのも本作だ。「When You Dance With Me」や「One Way Or Another」は、英語で歌われている。しかも前者は、NOKKOが作曲を担当。歌い出しの冒頭部分から、彼女の声に現地の女性コ−ラスが重なっている。正直、これまでのREBECCAとはまったく別モノの印象である。

そして後者は、新たなオリジナルではなく、「VANITY ANGEL」の英語ヴァージョンだ。ここで曲順に注目して欲しい。日本語で歌われたものが2曲目に収録され、そして最後に、再びこの曲が英語で歌われ、幕を閉じていく。このことからも、当時の彼女が、どこに視線を向けていたのかが分るだろう。

ちなみに本作は、共同プロデュースにフランソワ・カーボキャンを迎えている。この名前、リミックス・アルバム『OLIVE』にも登場している(REBECCAというバンド、楽曲のリミックスにも積極的だった。80年代は、ジェリービーンという天才の躍進もあり、リミックスに“第2の作曲”ほどの値がついていた)。

一方、REBECCAとしての成熟も聞こえる。タイトル曲「BLOND SAURUS」は、まさにメンバーひとりひとりの存在が、より進化形となってアンサンブルされた好例だろう。いま聴いても、タフで容積のデカい、それでいてリズムのニュアンスなどはより変化を感じる音像だ。80年代の象徴としてのシンセ・サウンドも、来たるべき90年代へ向け、音色や“間合い”が多様になってきてる。

「VANITY ANGEL」や「SUPER GIRL」のような、NOKKOと土橋の黄金コンビも健在だ。メロディアスかつダンサブルな前者と、馬力のあるロック・チュ−ンである後者。個人的には「SUPER GIRL」の、後半へ向かうに従い、ある種のトランス状態を誘うかのような呪術的なノリに惚れてしまう。NOKKOの歌詞に関しては、どちらの作品も“乙女”という単語がカギとなっている。

彼らのライブ・パフォ−マンスのラストとなったのが、このアルバムのツアー、『BLOND SAURUSの逆襲』であり、1990年1月に終了。解散を発表したのは1991年2月14日だ。しかしその後も不定期ながら再結成を果たし、今年の全国ツアー『REBECCA LIVE TOUR 2017』へと至っている。まあ、基本的に歌も演奏も達者な人達だから、
やろうと思えばエンジンの再稼働は容易いのだろう。

11月1日には、17年ぶりの新曲「恋に堕ちて」がリリースされる。この曲は、今回のツアーに向け制作されたものだ。会場で聴いた多くのファンの熱望もあり、シングルとしてリリースすることが決定した。

作詞はNOKKO。そして作曲はレベッカと、バンド名がクレジットされている。注目したのは、「今の彼女に違和感ないものになっているのか?」という点と、サウンドが、「今のREBECCAとしての鳴り方をしているのか?」という点だった。

まず歌詞だが、ポイントとなるワードは「愛」と「恋」である。女の子が大人になっていく際、「恋」から「愛」への過程を描く歌は多いが、今の彼女が歌うなら、「愛」を知っている身として、いかに「恋というものを捉え直すか?」だろう。

聴き終えてみて、そのあたりもちゃんと、歌のテーマとして成立していた。「恋に堕ちたら」という曲タイトルと、歌詞に出てくる“愛の歌”という表現が、連なるメロディのなかで対比され、伝わるものが確かにある。先入観になるようなことは書かないが、それをぜひ、感じ取ってみては如何だろうか。

楽曲のほうはどうだろう。あえて80年代サウンドをリバイバルさせてみる、という手もあったかもしれないが、聞こえてきたのは、“ロックオーケストラ的”なものというか、いっけんシンプルなエイトビ−トのようで、今の彼らの懐の深さを感じさせるものだった。80年代は横軸の視野というか、シ−ンの最先端を追っていたであろうけど、ここでは縦軸の、ロックの歴史に対する温故知新的ニュアンスも伝わる。実際ワン・コーラス目など、50年代のロックンロールへのリスペクトすら、よく聴くと伝わってくる。でもツー・コーラス目では、より演奏が、タイトに削ぎ落とされていく雰囲気だ。

新曲の好結果が、このあとの活動の追い風となって、『BLOND SAURUS』に続く8枚目のオリジナル・アルバムを、ぜひ期待したいと思う。『BLOND SAURUS』ではまとまりきれてなかったものが、見事な化合物として、提出されるかもしれない。そうなったら今度こそ、正真正銘、『BLOND SAURUS』の“逆襲”、ということではなかろうか。

文 / 小貫信昭

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