2017年 第74回ヴェネチア国際映画祭レポート  vol. 5

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【ヴェネチア国際映画祭】是枝裕和監督×福山雅治のコンビがカンヌに続き、ヴェネチアを魅了!

【ヴェネチア国際映画祭】是枝裕和監督×福山雅治のコンビがカンヌに続き、ヴェネチアを魅了!

フランスのカンヌ、ドイツのベルリンと並ぶ世界三大映画祭の1つ『ヴェネチア国際映画祭』が開幕。最優秀賞の「金獅子賞」を競うコンペティション部門21作品の中に、日本からは是枝裕和監督の「三度目の殺人」がノミネートされていたり、クロージング作品として北野武監督の最新作「アウトレイジ最終章」が上映されたりと日本作品の話題も多い。そんなヴェネチア国際映画祭の現地レポートを随時お伝えしていきます。

取材・文 / 立田敦子


映画祭も後半に差しかかった9月5日(火)。今年のコンペティション部門で唯一の日本映画となる是枝裕和監督の『三度目の殺人』が登場した。

是枝監督は、22年前にデビュー作『幻の光』(95年)で金のオゼッラを受賞しているが、ヴェネチアにはそれ以来の登場となる。 思えば、長編第3作目の『DISTANCE』(01年)以降はカンヌ映画祭の常連となり、『誰も知らない』(04年)で柳楽優弥が最優秀男優賞、『そして父になる』(13年)では審査員賞を受賞している。

©2017『三度目の殺人』製作委員会

今回の『三度目の殺人』は、『そして父になる』の福山雅治を再び主演に迎えた第二弾だ。

©2017『三度目の殺人』製作委員会

©2017『三度目の殺人』製作委員会

弁護士の重盛(福山)は、友人の頼みで勤め先の社長殺しで収監されている被告人、三隅(役所)の弁護を引き受けることになる。ほぼ死刑確定とみられるが、それを減刑し死刑を回避するために重盛は動き出す。真実の追求には興味がなく、「依頼人の利害を追求する」ことを第一に考える現実主義の重盛だが、二転三転する三隅の供述に翻弄される……。

©2017『三度目の殺人』製作委員会

海外プレスからは、「ホームドラマの名匠」、「小津安二郎の後継者」と評されることの多い是枝監督だが、記者会見でも、「これまでの家族の物語から離れて、なぜスリラーを撮ろうと思ったのか?」という質問が投げかけられた。

是枝監督は「この10年ぐらいホームドラマを続けて人間のデッサンを鉛筆で書いていたようなそういう意識なのです。今回はやや「家」から「社会」へ視野を広げて油絵で描くようなタッチを変えた作画をしているのですが、描く本人は変わらないので、変わっているところと変わってないところがあると思います」
「社会に目を向けた時に人が人を裁くことについて考えてみたいと思ったことがスタートとしてありました。日頃お付き合いのある弁護士さんと話をする中で、『法廷が真実を追求するところではない、利害の追及をするところだ』という一言を聞いたのが今回のモチーフ、きっかけになりました。脚本作りも実際の弁護士たちに入っていただいて一緒に作っていったプロセスがあるのでそういう意味では自分の記憶、家族をベースにして書いていたストーリーの作り方とは違う作り方をしました。そしてそれはとても刺激的でした」とコメント。

©2017『三度目の殺人』製作委員会

公式上映には、是枝監督と福山雅治さん、役所浩司さん、広瀬すずさんの俳優陣が参加。上映終了後の長いスタンディングオベーションは、この映画がヴェネチアの観客を魅了したことの証明だろう。

©2017『三度目の殺人』製作委員会

主演の福山さんは、「今日の記者会見の時も、公式上映のときもそうですが、監督への期待感というものがひときわ大きく感じました。監督の作品を心待ちにしているファンの方、メディアの方のたくさんいらっしゃるんだろうな、ということを感じました。その期待値が高ければ高いほど監督のチャレンジが監督にとってのドキドキにつながっていったのだろうなと思って。今日上映が終わった瞬間、思っていたよりも早い段階から拍手が巻き起こって、(この映画が)すごくよい届き方をしたなと思いました。その時、監督がちょうど隣だったんですが、監督が僕の膝に手を置いてくださったんです。ほっとされたのかな、と思って僕もその瞬間ほっとしまして、うれしかったですね」とコメント。

©2017『三度目の殺人』製作委員会

今年のコンペは、ホラーやスリラーなどのジャンル映画が多く選出されているが、心理描写では定評のある是枝作品が、審査員たちの心をどのようにゆさぶるのか、最終日に期待したい。

三度目の殺人

第74回ヴェネチア国際映画祭 コンペティション部門 正式出品
2017年9月9日(土)全国ロードショー

監督・脚本・編集:是枝裕和
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
キャスト:福山雅治、役所広司、広瀬すず、吉田鋼太郎、斉藤由貴、満島真之介、市川実日子、橋爪功
配給:東宝・ギャガ
ストーリー:
それは、ありふれた裁判のはずだった。殺人の前科がある三隅(役所広司)が、解雇された工場の社長を殺し、火をつけた容疑で起訴された。犯行も自供し死刑はほぼ確実。しかし、弁護を担当することになった重盛(福山雅治)は、なんとか無期懲役に持ちこむため調査を始める。
何かが、おかしい。調査を進めるにつれ、重盛の中で違和感が生まれていく。三隅の供述が、会うたびに変わるのだ。金目当ての私欲な殺人のはずが、週刊誌の取材では被害者の妻・美津江(斉藤由貴)に頼まれたと答え、動機さえも二転三転していく。さらには、被害者の娘・咲江(広瀬すず)と三隅の接点が浮かび上がる。重盛がふたりの関係を探っていくうちに、ある秘密に辿り着く。
なぜ殺したのか?本当に彼が殺したのか?得体の知れない三隅の闇に呑みこまれていく重盛。弁護に必ずしも真実は必要ない。そう信じていた弁護士が、初めて心の底から知りたいと願う。その先に待ち受ける慟哭の真実とは?

©2017『三度目の殺人』製作委員会

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