2017年 第74回ヴェネチア国際映画祭レポート  vol. 6

Report

【ヴェネチア国際映画祭】国際映画祭で初めて創設されたVRセクションにツァイ・ミン・リャンら大御所も参戦

【ヴェネチア国際映画祭】国際映画祭で初めて創設されたVRセクションにツァイ・ミン・リャンら大御所も参戦

フランスのカンヌ、ドイツのベルリンと並ぶ世界三大映画祭の1つ『ヴェネチア国際映画祭』が開幕。最優秀賞の「金獅子賞」を競うコンペティション部門21作品の中に、日本からは是枝裕和監督の「三度目の殺人」がノミネートされていたり、クロージング作品として北野武監督の最新作「アウトレイジ最終章」が上映されたりと日本作品の話題も多い。そんなヴェネチア国際映画祭の現地レポートを随時お伝えしていきます。

取材・文 / 立田敦子


毎年、映画祭はなにかしらマイナーチェンジがあるのだが、今年の最大のトピックスのひとつは、VR(ヴァーチャル・リアリティ)部門が創設されたことだ。

あたかもそこに存在するような映像体験を実現するVRは、ポスト3Dの映像体験として注目を浴びている。この技術が劇場用の長編映画として適しているかどうかは議論が分かれるところだが、テクノロジーをいち早くとりあげることに意欲的なリドリー・スコットなど、すでに『オデッセイ』や『エイリアン:コヴェナント』の素材で短編を製作したりもしている。
5月に開催されたカンヌ国際映画祭ではアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の約6分半のVR作品をスペシャル・スクリーニングとして上映したが、ここヴェネチアではなんとひとつの部門として独立させている。

会場は、映画祭が行われているリド島から船で2〜3分の浮島に設営されていた。

上映方法は、VRシアターでの上映、PCとつないでみるスタンドアップ上映、空間演出の中で観るVRインスタレーションの3つの方法に分けられていた。

VRシアターといっても、並んでいる椅子に座り、VR用のゴーグルをつけるだけなので、同じ時間に同じ作品を観ているわけだが、体験的にはとても個人的なものだ。
また、VRインスタレーションは、映像の中に登場する場面に身を置いて——例えば、セットでつくられのベットに寝ながらーー観ることで、より体験型の鑑賞になる。

VRシアターでは「Best of VR-アウト・オブ・コンペティション」として選出されていた『MIYAIB』を鑑賞したが、これは、フェリックス・ラジュネスとポール・ラファエルというアーティスト・ユニットがすでに発表している40分のVR作品である。
80年代の米国の普通の家庭に、息子の誕生日のプレゼントとして「ミヤビ」という日本製ロボットがやってくる……という設定だ。ロボットの視点から、80年代を振り返る、というわけである。

Miyubi 3 © Felix & Paul Studios and Funny or Die

作品の上映時間に規定はなく、3、4分の短いものから1時間近くの、劇場用でいうところの中編の尺のものもあるが、長編映画をそのままVR化したような作品は観られなかった。コンペティション部門のラインナップには、世界的な映画監督である台湾のツァイ・ミン・リャンによる『THE DESERTED』(55分)も選出されていたが、多くはVR作品を手がけているヴィジュアルアーティストの作品のようだ。

Jia Zai Lanre Si (The Deserted) 1, photo by Chang Jhong Yuan

ヴェネチア映画祭は、ヴェネチア・ビエンナーレのプログラムの一環として開催されていて、アート部門も有名だ。アート部門ではヴィジュアル・インスタレーションの展示も多く、そうした関連からVR部門の創設も早かったのかもしれない。
スペシャル・スクリーニングではなく、部門まで創設したのだから、1年限りで終わるとは思えないが、今後、このセクションがどう展開していくのか、その行方にも注目したい。

アイキャッチ画像:2017.8.31_Venice Virtual Reality – Maria Elena Boschi
© La Biennale di Venezia – foto ASAC

vol.5
vol.6
vol.7