
フランスのカンヌ、ドイツのベルリンと並ぶ世界三大映画祭の1つ『ヴェネチア国際映画祭』が開幕。最優秀賞の「金獅子賞」を競うコンペティション部門21作品の中に、日本からは是枝裕和監督の「三度目の殺人」がノミネートされていたり、クロージング作品として北野武監督の最新作「アウトレイジ最終章」が上映されたりと日本作品の話題も多い。そんなヴェネチア国際映画祭の現地レポートを随時お伝えしていきます。
取材・文 / 立田敦子
映画祭期間中、イタリアのエンターテイメントマガジン「CIAK」が日刊誌を発行してレビューやニュースなどを掲載している。そこでは、コンペティション部門に選出されている作品の批評家や一般観客による星取り表も掲載されているのだが、最終日の2作品を除いて19作品が上映されたところでの批評家によるベスト5は以下の通り。
※数字は、5点満点。
1.『スリー・ビルボーズ・アウトサイド・エビング、ミッズーリ』
マーティン・マクドナー監督 4.44
2.『ザ・シェイプ・オブ・ウォーター』
ギレルモ・デル・トロ監督 4.05
3.『エクス・リブリス ニューヨーク・パブリック・ライブラリー』
フレデリック・ワイズマン監督 4.00
4.『フォックストロット』
サミュエル・マオズ監督 3.50
5.『サバービコン』
ジョージ・クルーニー監督 3.27

Foxtrot – Poster
ほとんどが前半の話題をさらった作品になってしまった。
『フォックストロット』は、前線で任務についている兵士の息子とテルアビブに残っている家族の物語で、監督自身の体験に基づくものだそう。
TVドキュメンタリーなどを手がけた後、デビュー作『レバノン』が2009年のヴェネチで金獅子賞を受賞、本作が長編第2作目にあたる。『レバノン』ほどの炸裂感はないものの相変わらず力強さを感じさせる作品なので、よく出来た英語映画が多い中では目立つ存在だ。

Foxtrot – director Samuel Maoz

Foxtrot © Giora Bejach
また、CIAKの星取りではどれほど評価は高くないけれど、中国のヴィヴィアン・チュイの『エンジェルズ・ウエア・ホワイト』も個人的にはとても面白く観た。
リゾート開発が進む中国南部の海沿いの街で、移民のミアと地元育ちのミア。問題を抱えたふたりの10代の少女を通して描く、変貌しつつある現代中国のポートレイトだ。コンペの「紅一点」だけに、なにかしら受賞はあるかもしれない。

Jia Nian Hua (Angels Wear White) – director Vivian Qu ©22 Hours Films

Jia Nian Hua (Angels Wear White) 1 – key still – © 22 Hours Films
また、デビュー作でいきなりコンペに選出されたフランスノグザヴィエ・ルグランやカンヌでパルムドールを受賞しているアブデラティフ・ケシシュや、オーストラリアの開拓時代をアボリジニの視点から描いたワーウィック・ソーントンらの作品もそれなりに評価されそうだ。
アイキャッチ画像:2017.9.8_Red carpet – Angels Wear White – © La Biennale di Venezia – foto ASAC (7)
© La Biennale di Venezia – foto ASAC