LIVE SHUTTLE  vol. 191

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KICK THE CAN CREW完全復活!RHYMESTER、藤井隆、倖田來未らも祝う〈復活祭〉。MCUは、いとうせいこうと夢の競演!!

KICK THE CAN CREW完全復活!RHYMESTER、藤井隆、倖田來未らも祝う〈復活祭〉。MCUは、いとうせいこうと夢の競演!!

2004年に活動を休止したKICK THE CAN CREW(以下、KTCC)が、今年6月に完全復活を宣言。8月にニューアルバム『KICK!』をリリースして本気度をアピールし、さらにその復活を確かなものとして音楽シーンに知らせるイベント〈復活祭〉を9月7日に開催した。
さすがKTCCだ。アルバムとライヴというミュージシャンにとっていちばん大切なアイテムをセットにして復活を叫ぶのはとてもフェアなやり方だ。3人の現在をアルバムに盛り込み、それをライヴでファンに直接披露して、リアクションをダイレクトに受け止める。自分たちの音楽と、それを支えてくれるファンを最優先に考えるこの〈復活祭〉は、これまで数多く見てきたグループの復活劇の中で、最も感動的なもののひとつとなった。

取材・文 / 平山雄一 写真 / 岸田哲平 中河原理英

彼らのスピリットは今もデビューの頃もまったく変わっていない

開演前から日本武道館は異様な熱気に包まれている。主なオーディエンスは20~30代の男女が半々。活動休止時に中高生だった音楽ファンたちだけに、その熱は非常に高かった。ざわざわしているうちに開演時間が迫る。が、まだ椅子を離れている人が多かったのに、いきなりドカンとライヴが始まったから、“ライブの初動”は爆発的なものになった。オーディエンスたちは事前に出演アーティストを知っていた。だが開演時間ちょうどにいきなりKTCCが登場したのには、みんながビックリ。超速でオーディエンスは臨戦態勢を整える。

レーザーが飛び交うなか、タキシードにシルクハットをかぶったKREVA、MCU、LITTLEがアルバム『KICK!』の1曲目「全員集合」を全力でパフォーマンスする。KREVAが、MCUが、LITTLEがメインのMCを取るたびに、悲鳴のような歓声が上がる。“全員集合!”“ハイハイハイ”というコール&レスポンスが武道館を揺らす。圧巻のオープニングだった。

「KREVAです!」、「MCUです!」、「LITTLEです!」、「3人合わせてKICK THE CAN CREWで~す!!」が最初の挨拶。

「粗相があってはいけないので、司会進行をこの人にお願いしました」とKREVAがいとうせいこうを紹介する。すると、いとうが「今日は盛りだくさんなんで、ずーっと盛り上がってください。休むヒマないから!」と最初のゲストを呼び込む映像に移っていく。ゲームの入力画面風に文字が映し出され、コールされたのはRHYMESTERだった。

日本のヒップホップの開拓者のひとりであるいとうせいこう、90年代のヒップホップの立役者のRHYMESTER、そして少し後輩のKTCCという並びは、日本のヒップホップ界の偉人伝を見るようだ。

イベントのトップバッターを任されたRHYMESTERの1曲目は「ONCE AGAIN」。曲の途中で“KICK THE CAN CREW ONCE AGAIN”というC&Rでお祝い気分を表わす宇多丸、Mummy-D、DJ JINは気合い充分の表情で、満員の武道館をリードする。
「尊敬する後輩たちの復活は、嬉しい。俺たちに共通してるのは、マイク一本、肉体一本でやってること」と、宇多丸はKTCCに最大のリスペクトを捧げる。
最後の「Future Is Born」はRHYMESTERのニューアルバム『ダンサブル』からの曲で、“今日のぼくらが明日の創造主かもね”というリリックが、KTCCへのエールのように聴こえたのだった。

次にステージに呼び込まれた藤井隆が「順番、おかしくないですか?」と恐縮して話し出すと、会場から「かわいい!」と声が飛ぶ。のっけから藤井は大ヒット曲「ナンダカンダ」を歌って大サービスすると大歓声が上がった。

「KTCCのファンの方は、みんな優しくて大好き~♡」と手を振りつつ、「Quiet Dance」では宇多丸がフィーチャリングMCで参加して、会場は笑顔で大いに盛り上がる。

さて、次は司会自ら「俺にもライヴやらせてよ」と言って、日本ヒップホップ界の重鎮・いとうせいこうの番だ。いとうは80年代に「日本語でラップなんて、できるの?」という疑問の声を浴びながらシーンを開拓していったひとりだ。
その初期の勇姿をMCUも、このステージでトラックをコントロールしているDJ TATSUTAも観ていたという。しかもMCUとDJ TATSUTAは、中学時代からのツレなのだ。いとうはそんな歴史的エピソードをオーディエンスに熱く語ったあと、「中3のときにコイツ(いとう)と一緒にやりたいと思った(DJ TATSUTAの)夢が、今、叶ってる。夢は叶うぜ!」と言って、伝説的名曲「東京ブロンクス」をパフォーマンス。そのゴツゴツしたラップには、まさに時代を経ても変わらない不屈のライムが散りばめられていた。

さらに「マイク二本」ではMCUが合流して、MCUも中3のときからの夢を叶えたのだった。

続いては、紅一点の倖田來未の番だ。男くさいステージが続いていたので、ダンサー6人を従えたショータイムに、雰囲気が一気に華やかになる。ヒップホップのエンターテインメント的な側面が全面的に展開されて、KTCCが復活した2017年のヒップホップシーンの熱量が伝わってくる。特に女性ダンサーの身体のキレがパンパなく、ヒップホップの4エレメンツのひとつである“ダンス”が存分に楽しめた。
「この話をいただいたとき『なぜ、わてが??』と思ったけど、私もKTCCに復活して欲しかった」とコメントして歌った倖田の最新曲「LIT」は、めちゃグッドメロディで、会場を大いに沸かせた。

そして満を持してのトリは、KTCCだ。ステージ上段から3人が登場。スモークの中、下段に降りてきたメンバーが歌い出す。この日のセットリストは、最新作『KICK!』と、メジャー1stアルバム『VITALIZER』、2ndアルバム『magic number』からの曲だけという潔いものだ。

まずは最新作から「千%」。MCUが“まだまだやり尽くした感0(ゼロ)”と始めれば、KREVAが“新しかろうが 古かろうが やろうと思えたんなら(すぐやろう)”と応え、LITTLEが“Dryじゃいられない都会のJungle 何度でもTryするTriangle”と結ぶ。
続く「スーパーオリジナル」はKTCCのデビューシングルで、“自分だけのやり方でのし上がれ!!”と自分たちとファンたちを鼓舞する。KTCCのスピリットが今もデビューの頃もまったく変わっていないことを、3人はたった2曲で会場に示したのだった。

最新のサマーソング「SummerSpot」と、懐かしいサマーソングの2ndシングル「イツナロウバ」を立て続けに歌う。両方とも掛け合いが非常に複雑な構造を持っているが、それを見事にやってのける。かと思うと、弱い心をグサリと突き刺す「sayonara sayonara」で、胸をキュンとさせる。
絶好調で迎えた「神輿ロッカーズ」では、金髪のウィッグを着けた宇多丸とMummy-Dが加わっての5MC。僕は15年前のKTCCの初武道館の際、こんなシーンがあったことを思い出して、グッときたのだった──あのときは100人のB-BOYたちが踊りまくっていた。その代わり、この日は曲のラストで藤井隆が“コロッケ顔”で乱入して爆笑を誘っていた。

締めは「マルシェ」。トラックが聴こえないほどオーディエンスがシンガロングする。カラフルな紙吹雪や、ゴールドのテープが発射されて本編は終わった。

アンコールでは3人それぞれが短くこの夜の感想と、これからの抱負を述べる。ラストは『KICK!』から「I Hope You Miss Me a Little」。おだやかなメッセージで〈復活祭〉は幕を閉じた。それは、“誰が言ったかお別れは再会の約束 途絶えぬアンコール”という「I Hope You Miss Me a Little」のリリックそのままの、感動的なエンディングだった。
次のKTCCのアクションである全国ツアーに、期待は膨らむばかりだ。

KICK THE CAN CREW「復活祭」2017.09.07@日本武道館 SET LIST

ACT-1 KICK THE CAN CREW
M01. 全員集合

ACT-2 RHYMESTER
M01. ONCE AGAIN
M02. ライムスターインザハウス
M03. Back & Forth
M04. Future Is Born

ACT-3 藤井隆
M01. ナンダカンダ[HyperJuice REMIX]
M02. OH MY JULIET![DJ KAORI REMIX]
   わたしの青い空[tofubeats REMIX]
   Qulet Dance feat. 宇多丸(RHYMESTER)
M03. 未確認飛行体[ikkubaru REMIX]

ACT-4 いとうせいこう
M01. 東京ブロンクス
M02. ヒップホップの初期衝動
M03. マイク2本

ACT-5 倖田來未
M01. Ultraviolet
M02. UNIVERSE
M03. XXX
M04. Hurricane〜MONEY IN MY BAG
M05. LIT
M06. LOADED feat. Sean Paul
M07. Poppin love cocktail feat. TEEDA

ACT-6 KICK THE CAN CREW
M01. 千%
M02. スーパーオリジナル
M03. SummerSpot
M04. イツナロウバ
M05. sayonara sayonara
M06. アンバランス
M07. 神輿ロッカーズ
M08. 地球ブルース〜337〜
M09. マルシェ

EN. I Hope You Miss Me a Little

ニューアルバム『KICK!』スペシャルサイト

KICK THE CAN CREW CONCERT TOUR 2017

12月01日(金)Zepp DiverCity
12月03日(日)チームスマイル・仙台PIT
12月10日(日)Zepp Sapporo
12月16日(土)Zepp Nagoya
12月17日(日)Zepp Osaka Bayside
12月21日(木)広島 CLUB QUATTRO
12月24日(日)福岡サンパレス

KICK THE CAN CREW (キック・ザ・カン・クルー)

KREVA、LITTLE、MCUとソロ活動していた3MCによって1997年に結成。同年「タカオニ/カンケリ」でインディーズデビュー、2001年5月に「スーパーオリジナル」でメジャーデビュー。以降、「クリスマス・イヴRap」「マルシェ」「アンバランス」「イツナロウバ」「sayonara sayonara」など、数々のヒット曲を生み出す。2002年には『第53回NHK紅白歌合戦』にも初出場。2004年6月に人気絶好調のなか活動休止を発表し、個々のソロ活動に専念する。2017年、結成20年という節目をきっかけに8月30日に13年8ヵ月ぶりにアルバム『KICK!』を発表。12月にはツアーも開催。
オフィシャルサイト

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