LIVE SHUTTLE  vol. 192

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音楽は続いていく、どんな音楽も全部繋がっている──星野 源 Live Tour 2017『Continues』

音楽は続いていく、どんな音楽も全部繋がっている──星野 源 Live Tour 2017『Continues』

全国ツアー〈星野 源 Live Tour 2017『Continues』〉の追加公演、さいたまスーパーアリーナ2デイズの初日(9月9日)。この日、星野 源は“音楽は繋がり、続いていく”というコンセプトを、誰もが楽しめるエンターテインメント性ときわめて奥深い音楽性を共存させながら、見事に表現してみせた。ブラックミュージックと日本の伝統的なポップスを融合させたアルバム『YELLOW DANCER』、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌として国民的なヒットとなった「恋」、シングルとしては初の1位を記録した最新シングル「Family Song」と、大衆性と芸術性を兼ね備えた作品を発表し続けている星野。この夜のライヴでも彼は、日本を代表するスターとしての存在感をはっきりと証明したのだった。

取材・文 / 森朋之 写真 / 西槇太一

僕の曲も全部繋がっている。だから、今回は普段なかなかできない曲もやりたい

開演前のSEはマイケル・ジャクソン「Burn This Disco Out(ディスコで燃えて)」、プリンス「I Wanna Be Your Lover(愛のペガサス)」、細野晴臣「東京ラッシュ」など。もちろん、どれも星野のルーツになっているアーティストばかりだ。スタジアムモードの会場は約3万人(!)の観客でギッシリ。静かな雰囲気のなか、ゆったりと開演を待っている。

ライヴのスタートは18時10分頃。まずはステージにかけられた幕に赤と青の光が浮かび上がり、ボイスドラマが始まる。登場人物は“歌謡曲先輩(声:大塚明夫)”と“J-POP(声:宮野真守)”。2人が現状やこれから進むべき道について話し合っていると、近くで“イエローミュージック”を掲げている“星野 源”という歌手がライヴをやっていることがわかる。その瞬間“EDM”に襲われた2人は逃げるようにライヴ会場に向かう──という物語が告げられたあと、星野がステージに登場。

1曲目の「Firecracker」が演奏される。YMOのデビューアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』(1978年)に収録されたこの楽曲は、細野晴臣がYMOの着想を得たと言われるエキゾチックなナンバー(原曲はマーティン・デニー)。この曲をオープニングに持ってくること自体が、“音楽は繋がり、続いていく”というコンセプトに直結している。

星野が演奏するマリンバも素晴らしい。ちなみに細野氏は星野のマリンバについて「プロのマリンバ奏者ですよ、もはや。僕もあんなふうには演奏できないし、よっぽど練習したんだろうなって思います。練習してもできる人とできない人がいるから、素質があるんでしょうね」と語っている(直接お聞きしたので、間違いないです)。

さらに「化物」で会場を華やかに盛り上げたあと、最初のMC。まず「ありがたいことに物販にすごく並んでくれたみたいで、みなさんが会場に辿り着くまでに時間がかかって、10分ほど開演を遅らせてもらいました」と説明。何気ないひと言だが、ここには“お客さんにはできるかぎりストレスなく過ごして欲しい”という意思が感じられる。実際、この後のMCでも星野は、今回のツアーのテーマ、楽曲の説明などを丁寧に行っていた。それは“ひとりも置き去りにせず、ここにいる全員にライヴを楽しんで欲しい”という想いなのだと思う。

随所にクレイジーなアイデアが挿入される星野の楽曲をステージで表現するうえで、これ以上のメンバーは考えられない

「好きに踊ったり、一緒に歌ったり、何もしないでボーッとしたり、自由に過ごしてください」という言葉を挟み、ファンキーなギターカッティングから始まる「桜の森」、ドープなグルーヴと開放的なホーンが溶け合う「Night Troop」、シックな雰囲気が漂うミディアムバラード「雨音」が披露される。濃密なブラックネスをさりげなく響かせるバンドサウンドがとにかく素晴らしい。

今回のバンドメンバーは河村“カースケ”智康(drums)、伊賀航(bass)、長岡亮介(guitar)、石橋英子(keyboards)、櫻田泰啓(keyboards)、さらにストリングス、ホーンセクション。ファンク、ソウル、ジャズ、フォークなどのルーツミュージックに根差しながら、随所にクレイジーなアイデアが挿入される星野の楽曲をステージで表現するうえで、これ以上のメンバーは考えられない。

ここで星野は5月に発売された初のミュージックビデオ集『Music Video Tour 2010−2017』に触れ、「楽曲の解説をする企画があったので、全部観たんですよ、時系列に。それがすごく面白かったんです。まず、初期の頃は顔が全然違って、頭の上にいつも雨雲があるというか、幸薄そうな感じで(笑)」「暗い曲だけじゃなくて、明るい曲も作りたかったんですけど、1stシングルから3枚出していくなかで、やりたいことがちょっとずつ形になっていて。なので、今日は1stシングルから3rdシングルまで、3曲続けてやりたいと思います」とコメント。「くだらないの中に」「フィルム」「夢の外へ」を演奏する。

“どうしようもない毎日の中にもわずかな幸せがある”という想いがじんわりと伝わる「くだらないの中に」、自分の中にあるイメージを現実の中に映し出そうとする「フィルム」、“妄想その手で創れば/この世が光 映すだけ”というフレーズが心に響く「夢の外へ」。こうして続けて聴いてみると、曲を重ねるにつれて、星野 源の意識が少しずつ外に向かっていたことが改めて実感できる(BPMが徐々に上がっているのも面白い)。また「SUN」「恋」などで星野の音楽に興味を持ち、初めてライヴに足を運んだオーディエンスにとっては、初期の楽曲を体感できる絶好の機会になったはずだ。

続いては恒例となっている“一流ミュージシャンのみなさんからのメッセージ”がスクリーンに映し出される。今回登場したのはバカリズム、ロバート秋山、バナナマン。三者とも「さすが」としか言いようがないトークを展開、場内を爆笑で包み込む。このコーナーのあとはステージ中央に移動して弾き語りコーナーになるのだが、この流れもいつもどおり。全体の構成を大きく変えることはせず、あえて同じことを続けることによって、ライヴのスタイルを練り上げていく。このスタンスにも“やりたいことを継続することによって、ひとりでも多くの観客に伝えたい”という彼の考えが反映されているのだと思う。

会場が広ければ広いほど楽しい。ひとりぼっちな気がして

弾き語りで歌われたのは1stアルバム『ばかのうた』に収録されている「穴を掘る」、NUMBER GIRLの「透明少女」、そして「くせのうた」。

個人的に強く心に残ったのは初期の名曲として知られる「くせのうた」だった。“君の癖を知りたいが ひかれそうで悩むのだ”というフレーズで始まるこの曲は、奈落のような孤独を抱えざるを得ない、人間の根源的な存在がしっかりと描かれている。この楽曲を書いたときから現在に至るまで、星野 源の根本には孤独が潜んでいる。“人はみんなひとりで生きている”という現実を抱えているからこそ、彼の楽曲には圧倒的な生々しさが宿り、それが多くの人に届くのだと思う。3万人という群衆と相対するのではなく、あくまでも一対一で会話をしているような弾き語りを聴いて、その想いはさらに強くなった。

「会場が広ければ広いほど楽しいです。ひとりぼっちな気がして。曲は夜中にひとり、ギターを鳴らしながら作るんですけど、そのときの感じに似てるんです」というMCも印象的だった。

ライヴ後半戦の始まりを告げたのは、細野晴臣の作曲によるインストナンバー「Mad Pierrot」(アルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』収録)。演奏の難易度が高く、YMOもほとんど演奏したことがないこの楽曲(独特のエキゾチシズムと最初期のテクノが融合した)をほぼ完コピ状態の生演奏で聴けたことも、このツアーの大きな見どころだった(12人の女性ダンサーELEVENPLAYの、MIKIKOの振付けによるパフォーマンスもカッコいい!)。

さらに「Mad Pierrot」の余韻を繋げるように演奏された「時よ」でオーディエンスの身体を揺らした星野は、細野晴臣から受けた影響と“Continues”のコンセプトについて改めて話し始める。

「この曲を僕は20歳くらいのときに初めて聴いて“これはやばい”とものすごく影響を受けました。1曲目にやった『Firecracker』はマーティン・デニーという人の曲なんですけど、それを聴いて細野さんはイエロー・マジック・オーケストラを作り、そして、『Mad Pierrot』という曲から僕はいろんなものをもらって、今の『時よ』が出来ました」「今回はリリースツアーではないので、コンセプトを作りたいと思って。それは“音楽は続いていくし、どんな音楽も全部繋がっている”ということです」

ほとんどの観客が“恋ダンス”を楽しんでいる

このあとライヴはクライマックスに向かって進み始める。起点になったのは「僕の曲も全部繋がっていると思っていて。だから、今回は普段なかなかできない曲もやりたいなと」というコメントに導かれた「ギャグ」。そして「SUN」「恋」とキャリアを代表するヒットチューンが続けて放たれる。

「恋」ではもちろん、ほとんどの観客が“恋ダンス”を楽しんでいる。心地よい高揚感に溢れたサウンドと“二人を超えてゆけ/一人を超えてゆけ”という切実なメッセージが同時に体感できるこの曲は、間違いなくこの夜のハイライトだった。

これまでの作品の中でも最も強いファンクネスを反映させた「Week End」、そして、ツアーのタイトルの由来となった「Continues」で本編は終了。アンコールでも“最後の最後までみなさんを楽しませたい”という意思に貫かれたステージが続く。

“歌謡曲先輩”“J-POP”さらに“イエローミュージック(声/寺坂直毅)”によるボイスドラマの続きが披露されたあと(ここでも細野晴臣から受けた影響について語られた。アルバム『HOSONO HOUSE』の衝撃、細野から告げられた「未来をよろしく」という言葉など)、おまちかねの“ニセ明”が登場。“ニセ明”のぬいぐるみがミラーボールとともにフライングしてセンターステージに移動、幕で覆われたステージの中から“ニセ明”が登場するという演出から「君は薔薇より美しい」(布施明)が高らかに歌い上げられる。

さらにメインステージに戻り、ダンサーやメンバーにマイクを向けながら独特な雰囲気のトークを繰り広げ、「ニセの持ち歌は一曲だけなので、星野 源さんの曲をカバーします」とシングル「恋」のカップリング曲「Driking Dance」を披露。ニセ明が星野 源の楽曲を歌うという、ややこしくも超レアなシーンが実現し、会場のテンションはさらに上がっていく。

彼が掲げている“イエローミュージック”の現時点における最高峰

二度目のアンコールの客席のコールに導かれ、再び星野がステージに登場。このツアー初披露となる最新曲「Family Song」が奏でられる。70年代ソウルミュージックのエッセンスを取り入れながら、単なるコピーではなく、温故知新的な日本のポップソングに結び付けたこの曲は、彼が掲げている“イエローミュージック”の現時点における最高峰だと思う。“出会いに意味などないけれど” “いつまでも側にいることが/できたらいいだろうな”とエモーショナルに歌い上げる星野の姿は、観客ひとりひとりの心に強く刻まれたはずだ。

ラストは「Friend Ship」。祝祭感が会場全体に広がるなか、ライヴはエンディングを迎えた。

デビューから現在に至るまでの代表曲をバランスよくピックアップしながら、自身のルーツミュージック、そして、そこから生まれた音楽をリアルに描き出してみせた星野 源。おそらく観客は「聴きたい曲は全部聴けた」という満足感と「まだまだ知らない源ちゃんの世界があるんだな」という興味を同時に覚えたのではないだろうか。オーディエンスの欲求に応えながら、さらに深い音楽世界へと誘ってくれる、最高のエンターテインメントだった。

星野 源 Live Tour 2017『Continues』2017.09.09@さいたまスーパーアリーナ SET LIST

M01. Firecracker
M02. 化物
M03. 桜の森

M04. Night Troop
M05. 雨音
M06. くだらないの中に
M07. フィルム
M08. 夢の外へ
M09. 穴を掘る
M10. 透明少女
M11. くせのうた
M12. Mad Pierrot
M13. 時よ
M14. ギャグ
M15. SUN
M16. 恋
M17. Week End
M18. Continues
EN1-01. 君は薔薇より美しい
EN1-02. Drinking Dance
EN2-01. Family Song
EN2-02. Friend Ship

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Family Song 【MUSIC VIDEO & 特典DVD予告編】

星野 源(ほしの・げん)

1981年生まれ、埼玉県出身。音楽家、俳優、文筆家など多岐にわたり活躍。2000年にバンド“SAKEROCK”を結成(2015年解散)。ソロとして2010年に1stアルバム『ばかのうた』をリリース。2015年に『第66回NHK紅白歌合戦』へ初出場を果たすほか、2016年発表のシングル「恋」が社会現象とも呼べる大ヒットを記録。俳優として、10月からスタートするTBS系ドラマ『コウノドリ』へ出演。

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