Interview

ねごと スピッツの名曲「空も飛べるはず」を公式カバー。映画の主題歌でもある新作制作のエピソードをボーカルの蒼山幸子に訊く

ねごと スピッツの名曲「空も飛べるはず」を公式カバー。映画の主題歌でもある新作制作のエピソードをボーカルの蒼山幸子に訊く

ねごとが映画「トリガール!」の主題歌として初カバーしたスピッツの名曲「空も飛べるはず」と同映画の挿入歌「ALL RIGHT」を収録したダブルAサイドシングルをリリースした。この2曲はともにいわゆるバンドサウンドなっているが、今年2月にリリースした4thアルバム『ETERNALBEAT』では、BOOM BOOM SATELLITES中野雅之のプロデュース楽曲を筆頭にクールでダンサブルなエレクトロビートを打ち出し、続く10thシングル「DANCER IN THE HANABIRA」では、同じく中野雅之プロデュースの元、“いちメンバーいち楽器”という旧態依然とした役割からも解放され、よりフレキシブルに自分たちの感覚を研ぎ澄ます方向に向いていた。そんな彼女たちはどんな思いで、映画に使われる楽曲の制作に向かったのか。ボーカルの蒼山幸子に率直な質問を投げかけてみた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / AZUSA TAKADA

「空も飛べるはず」を公式にカバーさせてもらえるっていうことで、生涯でなかなかできないことだなっていう気持ちもあって

土屋太鳳さん主演の映画「トリガール」の主題歌と挿入歌を担当することになった経緯からお伺いできますか?

タイアップっていろんな形があると思うんですけど、今回は、監督さんがもともとねごとを知ってくださっていて、『ねごとが作品に合うんじゃないか』っていう形でお話をくださって。映画の映像もほぼできてる状態で、挿入歌に関しては、『このシーンで流れる曲を作って欲しい』っていう具体的なオファーをくださったので、イメージがしやすくて。しかも、主題歌として、スピッツさんの「空も飛べるはず」を公式にカバーさせてもらえるっていうことで、生涯でなかなかできないことだなっていう気持ちもあって。喜んでやらせていただきますっていう感じでした。

ただ、ねごととしては、エレクトロニックなダンスビートに向かってたと思うんですよね。「DANCER IN THE HANABIRA」はプログラミングが主のサウンドになっていましたし。

そうですね。確かに、アルバム『ETERNALBEAT』以降の方向性とは違ってたんですけど、自分たちとしては、ダンスミュージックだとしても、バンド然としたサウンドだとしても、どっちもねごとらしい音楽だなって言えると思ってて。

じゃあ、あまり戸惑いはなかったんですね。

どちらかというと、チャンスにできたらなって思ってました。6月に出したばかりの「DANCER IN THE HANABIRA」も今回のシングルも両方、自分たちらしいので、逆にいうと、「空も飛べるはず」のカバーからねごとのことを知ってくれる若い世代の方もいると思うんですね。そういう人たちに知ってもらって、今やってることや、過去の音源を掘ってもらえるきっかけになったらいいなと思ってました。

なるほど。スピッツに対してはどんな思いがあります?

私は個人的に、日本のバンドで一番好きって言うくらい、大好きなバンドですね。ポップスとして誰もが知ってる曲がたくさんあるんだけど、ロックバンドとしてもめちゃめちゃカッコいいっていう。スピッツさんが毎年やってるイベントにも出させてもらったことがあるんですけど、ライブを見ると余計に見せつけられるというか。若い世代の音楽もちゃんと聞いて、吸収されてるんだなっていうのもわかるし、マインドがロックだなって感じたりして。ポップとロック、両方を網羅して、ああいう場所にいれるバンドってあんまりいない気がするし、すごくかっこいいなって思ってます。

両方を網羅するという意味では、ねごとが目指すところも近いのかもしれないですね。ちなみに幸子さんがスピッツを初めて聞いたのは?

小学校の合唱曲ですね。「空も飛べるはず」とか「ロビンソン」とか。小学校低学年だったので、まだ、アーティストがどうこうっていうことを認識する前だったんですよ。だから、純粋に歌として、こういう曲があるんだなっていうことを知ったのが最初だったと思います。バンドを始めてからは、ねごとのライブでも「チェリー」をやったり、アコースティクセットで「スピカ」をカバーしたり。ソロライブでは、弾き語りでスピッツさんのアルバム曲とかもやったりしてますね。

ロックバンド然とした音作りとか、あえて、古いような感じの音色にしたい

みんなが知ってる名曲をカバーにするにあたってはどんなアプローチを考えてました?

もちろん、『いいカバーだね』って言われなくちゃねっていうのはあったんですけど、映画を見る人たちは、むしろ、自分たちよりも世代が若かったりとか、もしかしたら原曲を知らない人もいるかもしれないので、受け継ぐような気持ちでできたらなと思っていました。原曲の良さをそのまま受け継いだようなアレンジをしながら、ねごとなりのカバーにしたいなと思ってましたね。

ねごとなりの部分は?

あんまりガラッとは変えなかったんですけど、1個、あったのは、ガールズバンドで綺麗に演奏してしまうと、可愛いという印象になっちゃうんじゃないかと懸念していて。ロックバンド然とした音作りとか、あえて、古いような感じの音色にしたいなっていう話はしていましたね。

歌詞はどう感じました? ねごとの歌詞のほとんどを手掛けてる身として。

 
やっぱりすごいなと思いましたね。歌録りの時に、どこを切り取っても、いいなぁって思える。隙がないというか、完成度が高いなっていう印象を受けて。自分がこういう世界観が好きだっていうのもあるんですけど、いろんな角度から想像ができる余白が常にあって。でも、分かりやすさもちゃんとあるっていうところがすごいなって思いました。

自信を持ってというか、自分にしか歌えない“空も飛べるはず”があるなと思って

ラブソングですよね。

私が受けた印象としては、自分の人生観も変えてしまうような人に出会えたのかなって。自分を守っている嘘や言葉が無意味になるくらいの出会いがあった故の喜びと切なさですね。“奇跡が溢れて空も飛べるはず”っていう歌詞があるくらい、嬉しいんだけど、いつまで一緒に居られるかわからないっていう寂しさも感じる。両極端なものを描いている、その紙一重の感じが素晴らしいなと思いました。

女性が歌うっていうことに関しては何か意識しました?

同性だとハードルが上がるところがあると思うんですけど、異性だからこそ絶対に違うものにはなると思うので、そこは、自信を持ってというか、自分にしか歌えない“空も飛べるはず”があるなと思っていたので、ナチュラルに歌えたらいいなと思いました。

アレンジ的には今のねごとらしい音色も入ってますけど、歌はメロディを崩したりはせず、寄り添う形で唄っていますね。

うん、そうですね。自分らしいクセを出そうということよりも、すっと曲の中に入って、歌えた感じでした。あんまりニュアンスも考えずにできたかな。言葉とメロディに沿って歌っていったらこうなったっていう感じでしたね。今回はねごとの表題曲として出すので、自分たちにとっては、新しい試みではあったんですけど、挑戦というよりも、自分たちの肌に合うというか……。歌録りする時にすっと入れたのもそうなんですけど、ずっと歌ってきたかのような感じが最初からあったので、あんまり気負わずにできたかなって思います。

バンドとしてはどんな刺激を受けました?

歌うのも演奏するのも、やっぱり、こういうシンプルなバラードが一番難しかったりするんですよね。1つ1つに意味がないようであって。スピッツの曲はすごく独特なバランスで成り立っているんだなって思ったし、4人が個々で鳴らしてる音が、ちゃんと1つになっていくのがバンドの醍醐味なんだなっていう、当たり前のことをこの2曲で久しぶりに感じて。バンド然とした曲はそれはそれで好きだなって思いました。

ゆきなちゃんに当てはめて考えたとしても、きっと彼女は“ALL RIGHT”って言うだろうな

挿入歌「ALL RIGHT」の方は具体的なオーダーがあって作ったとおっしゃってましたね。

主人公のゆきなちゃん(土屋太鳳)が、チームで力を合わせて、本格的に練習にやるぞって乗り出していくシーンで使うので、みんなで声を出すようなコーラスのゾーンが欲しいですっていうイメージをくださって。そこを照らし合わせながら作ったんですけど、結果的には、メロディもスっと出てきて。あまり気張ってないけど、前を向いている、ねごとらしい曲になったなって思います。

歌詞にはどんな思いを込めました?

メロディを作ってる時に、もう“ALL RIGHT”という言葉が出てきて。自分が今、そういうテンションになってるというのがあると思う。頑張るぞとか、前を向こうっていうことを言いたい時に、しゃかりきに『頑張れ!』って言うよりは、『ここにいるってことは、いろいろ超えてきたってことじゃん。だから大丈夫だよ』っていう曲にしたいなと思って。なんで、そういう歌詞を書きたいなと思って書きました。

映画の主人公である“ゆきな”をイメージしてました?

頭にはおいてはいたけど、自分が今、伝えたいことを歌詞の中でどういう風に言ったらいいかなって思いながら書いてましたね。ただ、土屋太鳳ちゃんが演じているゆきなちゃんという女の子は、ものすごい強気で、勝気な女の子で。全然飾ってないし、友達になりたいなって思うくらい魅力的だなって感じて。ゆきなちゃんに当てはめて考えたとしても、きっと彼女は“ALL RIGHT”って言うだろうな、“つまんない答えを聞かせないで!”とかはっきり言いそうだなって思ってましたね。

間宮くんと太鳳ちゃんが会話している中で、“ねごとさんの「空を飛べるはず」が流れてるでしょ”って

実際の映画で使われてるシーンは見ましたか?

はい。すごく監督の愛を感じる作りになっていて。「ALL RIGHT」はまず、結構、聞こえるんですよね(笑)。ヴォリュームをあげてくださっていて。こんなに聞こえるようにしてくれてるんだと思いました。しかも、自転車に乗って走り出す瞬間にイントロが流れ始まるので、ぴったりあっていて嬉しかったです。「空も飛べるはず」はエンドロールのアニメーションがずっと続いているところで流れるんですけど、間宮くんと太鳳ちゃんが会話している中で、“ねごとさんの「空を飛べるはず」が流れてるでしょ”っていうくだりを作ってくださっていて。エンドロールもお客さんが席を立たないような作りにしてくださってるので、すごいありがたいなと思いましたね。

土屋太鳳さんは「空も飛べるはず」のMVにも出演してます。

撮影日は違ったんですけど、見に行かせてもらって。ワイヤーで吊られて空を飛ぶ演技をしてくださっているんですけど、撮影に入り込んでからがすごくて。やっぱり女優さんってすごいなっていうのを目の当たりにしたし、太鳳ちゃんが出てくれることによって美しいMVになって嬉しいなって思います。太鳳ちゃんが空から降りてくるのをねごとが見てるんですけど、ちょっとだけ「ALL RIGHT」のMVにも使われてるので、ぜひ両方とも見て欲しいなと思いますね。

2曲揃って、ねごとしてはどんな2枚になりましたか?

前アルバムの表題曲「ETERNALBEAT」で歌詞の中でも“飛びたい”って言ってたら、「空も飛べるはず」のお話がきて(笑)。すごくいいタイミングでできたシングルだと思うので、これをきっかけにちゃんと私たちも風を掴みたいなっていう気持ちでいますね。この曲たちを大事に、いろんなところで鳴らしていって、次につなげていきたい。この流れを途切れさせないようなリリースを考えているので、どんどん新しいものを作って、本当に飛べたって言える1年にしたいなって思いますね。

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ライブ情報

http://www.negoto.com/live.html

ねごと

蒼山幸子(Vo.&Key.)、沙田瑞紀(Gt.)、藤咲佑(Ba.)、澤村小夜子(Dr.)。
インディーロック、オルタナティヴロック、フォークロック、シンセポップ、ドリームポップ、エレクトロニカ、ダンスミュージック、様々な音楽ジャンルにインスパイアされ、自由な音楽を奏でる変幻自在実力派エレクトロニック ロック バンド、ねごと。
「儚さ」と「力強さ」を兼ね備えた透明感溢れる歌声を持つ蒼山幸子(Vo.&Key)と、バンドのサウンドクリエイトを全面的に手掛ける沙田瑞紀(Gt.)を中心に、踊るようなベースラインを奏でる藤咲佑(Ba.)と、幾多のアーティストからも客演で呼ばれるほどの実力派ドラマー 澤村小夜子(Dr.)からなる4人組。
10代限定の夏フェス「閃光ライオット」で審査員特別賞を受賞、10代の頃から注目を集め、大型フェスにも多数出演。
2016年、中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)をサウンドプロデューサーに迎えた『アシンメトリ e.p.』をリリースし、ねごと流ダンスミュージックという新しい一面を開花させる。その後、2017年2月にはアルバム『ETERNALBEAT』を完成させ、その真価を発揮。アルバムを引っ提げて全国10カ所にて、ワンマンツアー“TOUR 2017 ETERNALBEAT”を開催した。そして、『ETERNALBEAT』をさらに後押しする、中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)サウンドプロデュースによるNew Single『DANCER IN THE HANABIRA』を6月にリリース。
さらに、今夏、映画『トリガール!』の主題歌 / 挿入歌を担当することが決定!主題歌は、スピッツの名曲「空も飛べるはず」をカバー、挿入歌はねごとオリジナルの新曲「ALL RIGHT」。8月30日に、Double A Side Single「空も飛べるはず / ALL RIGHT」としてリリースする。

オフィシャルサイトhttp://www.negoto.com/