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美少女なのにハードボイルド! 『プリンセス・プリンシパル』音響監督・岩浪美和が語る、“集中力を強いるアニメ”と音作りの裏側

美少女なのにハードボイルド! 『プリンセス・プリンシパル』音響監督・岩浪美和が語る、“集中力を強いるアニメ”と音作りの裏側

スパイ×スチームパンク×女子高校生。19世紀末の架空の世界、東西に分断された王国を舞台にスパイとして暗躍する5人の少女たちの物語──『プリンセス・プリンシパル』。TOKYO MXほかで絶賛放送中の人気TVアニメーションだ。対立する東西の政治的策謀が渦巻くなか、蒸気で動く車や重力を遮断する物質・ケイバーライトといったガジェットを武器にした爽快なスパイアクションが見もの。そこで描かれる人々のドラマや、それぞれに異なる動機を持つ少女たちの関係性が絡み合い、ミステリアスかつスリリング、しかも“可愛らしさ”も魅力的な作品となっている。今回は『ガールズ&パンツァー』などでも知られる音響監督の岩浪美和氏に、本作における音をどのような方向性でまとめているかを聞きつつ、作品の魅力により深く迫ってみた。

文 / 鳥居一豊 構成 / エンタメステーション編集部

スパイアクションのカッコよさ+少女たちの可愛らしさ。そして“時系列順ではない”物語

岩浪美和(以下、岩浪)「動力が蒸気の世界ですから、そのあたりの統一性のある音は求められました。カーアクションでの場面の蒸気の音は、スピード感と蒸気らしい音が感じられるようにひと工夫しています。監督からのオーダーはそれほど多くはなかったのですが、作品がスパイアクションで、主なキャラクターが少女たちですから、スパイのカッコよさと少女の可愛らしさをどう共存させるかはじっくり考えましたね。ちなみに音楽を担当する梶浦由記さんと相談した結果、スパイ映画『007』シリーズで思い浮かべるようなビッグバンドの演奏を採り入れつつも、メインのメロディを金管楽器ではなく、木管楽器を使うといったアイデアを出してもらっています」

スパイアクションということで、変装や潜入といったミッションは毎回のように出てくる。少女たちの変装などもひとつの見どころだ。アクションやドラマも盛り込まれたストーリーはなかなかに重厚……そんな作品の音はどのように作り出されているのだろうか。

岩浪「スチームパンク的な架空の19世紀が舞台とはいえ、あまり荒唐無稽な作品ではありませんから。必要以上に策を弄してはいません。仕上がった映像に合わせて、ストーリーに合わせてとにかく的確に音を作っています。世界観が伝わるような、リアリティーを感じられる音を意識しています」

本作の音響の制作では、まずは岩浪音響監督がアフレコ済みの映像に合わせて音楽を選曲、セリフと音楽を並べた素材に、最終的に効果音を付けていくという。いくつもの作品を手がけてきた音響チームなので、その都度打ち合わせをするというようなこともなく「あ・うん」の呼吸で作品として仕上げていくそうだ。これを、最終的に監督らがチェックし、必要な部分には修正を加えて作品が完成する。

岩浪「キャストの演技では、5人のキャラクターは性格などもユニークですから、役柄に合わせた演技を求めました。お姫様には、プリンセスの品の良さも出しつつスパイらしさも盛り込む、ハードボイルドなキャラは渋く……と、それぞれに工夫してもらっています。また、放送ではストーリーが本来の順番通りではありませんから、そのあたりの時系列の違いは収録現場でもきちんと確認して、違和感が生じないようにしています」

“放送がストーリーの時系列順でない”のは本作の重要な仕掛けのひとつ。第1話では「case13」として、すでに主要キャラ5人が揃った段階の物語が描かれる。その後の第2話で「case1」として、スパイの少女とプリンセスが出会う物語が描かれるといった具合だ。このあたりは最初こそ混乱するが、ストーリーが進んでいくと少女たちがそれぞれに抱える問題や使命などが見えるようになっており、ミステリーを読んでいるような面白さがある。基本的には毎回一話完結のストーリーなのだが、全体的な物語のバックグラウンドが見え隠れし、毎回目が離せなくなってしまうのだ。

テレビ、パッケージ化、配信のすべてを見据えた最新の音作り

岩浪「作品の世界を伝える音としては、日常とアクションのメリハリを意識しています。第5話(case7)の列車襲撃などは、静かな場面と激しい場面の切り替わりに合わせて音にもかなりメリハリを付けています。スパイ作品ならではの音のカッコ良さは外せませんから」

シリアスな展開とアクションの活劇が入り交じる展開はなかなかのもので、列車移動というシチュエーションもあって、劇場作品のような迫力が味わえる。最近のアニメは劇場公開されることも多く、もともとのTVシリーズ自体も音について本格的に作られていることもある。

岩浪「TVシリーズと劇場作品では、音量の違いやチャンネル数(ステレオとサラウンド)といった違いがあります。本作はステレオ音声ですが、普通にテレビの内蔵スピーカーで聴いても、あるいはネット配信などでスマホやモバイル機器で聴いても楽しめるように音を作っています。データを圧縮されても迫力をキープできるかがポイントですね。今はTV放映だけでなく、配信やパッケージなど、さまざまな再生の環境が考えられますから。低音から高音まで広い帯域をまんべんなく使い、より質の高い音響を制作するように心がけています」

ちなみに岩浪氏からは、本作に限らず“音”に注目してアニメを観るためのちょっとしたポイントについても聞くことができた。

岩浪「最近のテレビは本格的な音を存分に楽しむには少々物足りない場合もあるので……それほど高級なものでなくても、外部スピーカーを使うなど、より良いシステムで視聴してもらえたら嬉しいですね。また、質のいいヘッドフォンなどを使うのも良いと思います。音の良いシステムだと、たくさん重なった音がきちんと分離し、細かい音が埋もれずに聴き取れます。いろいろな音が入っていることに気付けると、より作品の世界に入り込んで楽しめますよ」

作品では、軍の通信をいくつもの受話器をつないでまとめて傍受して、そこから重要な情報を聞きとり、事件に解決に結びつけるエピソードや、人工声帯をつけた少女が声色を変えて窮地をしのぐなど、音を活かしたアクションも数多い。こうした場面では、細かい音がたくさん入っていることがよくわかる。より質の高いシステムで聴けば、それだけ作品の魅力も増すはずだ。

“集中を強いる”緊張感ある作品。映像では伝わらない空気感を音で伝える

岩浪「この作品に限りませんが、多くの音をやみくもに盛り込めばいいというものではありません。たくさんの音がありすぎて混沌とした感じになると、作品に集中できませんから。特に『プリンセス・プリンシパル』は状況説明が異常なまでに少なく(笑)そして伏線も多いことから、視聴者に“集中を強いる”作品です。それだけに、音で戸惑わせてしまうのは厳禁ですね。あくまで映像に寄り添って、映像の奥行きを音で深める、映像の見るべき部分を音でも誘導する、そうすることで映像に空気感が感じられるように意識しています」

集中力がいる作品ということで、最初はとっつきにくい印象もある。しかし観ているうちに目が離せなくなり、気がつくと作品に夢中になっていた感覚があった。放送話数がシャッフルされた仕掛けは、きっと終盤のあっと驚く展開を盛り上げてくれるものだと期待するが、それまでに何度も観てストーリーを隅まで理解しておきたくなる。

配信はすでにスタートしており、BD/DVDのパッケージも9月27日に第1巻の発売がスタート。本作のファンならストーリーを本来の時系列順に視聴できるようになるし、まだ観たことがないという人は最初から観ることができる。スパイ作品としてのスリルと、美少女のキュートさが詰まった一級の娯楽作品、この機会にぜひとも触れてみてほしい。

『プリンセス・プリンシパル』放送/配信情報

TOKYO MX 毎週日曜日 23時~
KBS京都 毎週日曜日 23時30分~
サンテレビ 毎週日曜日 25時~
BS11 毎週火曜日 24時30分~
AT-X 毎週金曜日 20時~ ※リピート放送 毎週月曜日12時~/毎週水曜日28時~

ニコニコ生放送 毎週日曜日 22:30〜(見逃しライブ配信)
バンダイチャンネル、Amazonビデオほかで配信中
※販売開始日程・配信期間・配信価格は配信サービスによって異なる場合があります。

『プリンセス・プリンシパル』公式サイト

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