Interview

「赤い公園」を脱退した佐藤千明(vo)との最後のライブを終えた津野米咲が語る『これからのこと』

「赤い公園」を脱退した佐藤千明(vo)との最後のライブを終えた津野米咲が語る『これからのこと』

8月27日、Zepp DiverCity TOKYOで行われたライブ「熱唱祭り」を経て、8月末にボーカルの佐藤千明がグループから脱退した。
7月頭に佐藤自身から発表があった文章には、自分の手に負えないほどのズレが、生じてきていることに気付き、そのズレが迷いとして音楽を浸食し、迷ったままでステージが立てないことで脱退すると答えていた。
きっと様々な葛藤があったに違いなく、その葛藤から出した答えは誰も否定できない。それは、結成から7年を共にしたメンバーへの誠意、ファンへの敬意もしっかりと感じることができたから。
その想いをしっかりと受け止め、赤い公園は3人で活動していくことを決意している。その鍵を握る津野米咲に、佐藤が参加するライブとしては最後となった「熱唱祭り」直後に話を訊いた。
「赤い公園ちゃんという女の子が重傷になった」ようなイメージと答えながらも、グループを継続させていく強い意志と、この事態をどんな気持ちであれしっかり受け止めてくれたファンへの感謝を感じるいい話だった。
これからの赤い公園がどう進化していくのか、期待しかない。

取材・文 / 山田邦子 撮影 / 荻原大志

みんなの愛にビビッてます

4人体制でのラストライブ、本当に素晴らしかったです。打ち上げも楽しかったみたいで(笑)。

まぁ、いつもどおり飲んでる感じで、いつもより飲んでる感じでした。ちーちゃんは、撮影隊の人たちと謎のフリースタイルのラップバトルしてましたけど(笑)。クオリティーもすっごい低くてめちゃくちゃ面白かったです。いい夜でした(笑)。

しかし今回のインタビュー、津野さんに何をどう聞けばいいのか全然気持ちの整理がつかなくて困ってるところなんです。すみません。

そりゃそうですよね(笑)。我々だって整理はつかないですよ。これからどうなるの?なんて言われても、やってみないとわかんないし。

まず単純に、今何を話したいですか?

お客さんたち、みんな本当に受け止めてくれたと思うんですよ。それってマジで簡単なことじゃないし、むしろ攻撃されても仕方ないだろうなぐらいに考えていたけど、みんな私たちの思いを汲み取ろうとしてくれて。私たち全然歩み寄ってないのに、すごく歩み寄ってくれたなっていうことをライブが終わって感じたので、これ以上望むものは何もないです。最善です。不安な人は不安なままでいいし、整理つかない人は整理つかなくていい。それがむしろあったかいなあと思うから。
私たちの勇気を軽々と飛び越えて、ライブでもちゃんと笑ってくれてた。泣いてる人もいましたけどね。自分ではこう見せたいとか邪なことを考えたりもしたけど、そんなこととっくにお見通しだったんだなあっていうこともわかりました。みんなの愛にビビッてます。

お客さんと作り上げたあのライブの景色、すごかったですよ。

正直、後半あたりから「誰かトチらないかな」って思ってました。だって完璧に終わられちゃってもな、みたいな。そしたら最後にちーちゃんがジャンプして、マイク落としてくれて。相変わらず過ぎて愛おしくなりましたよ(笑)。

あのライブを見るまでは、新曲の歌詞の端々に意味を求めながら聴いてしまっていたんですが、ライブ後に聴くと、ただただ素晴らしい曲が生き生きと鳴っているなと思えるようになりました。

よかったです。ライブ、やってよかった。

「熱唱祭り」@Zepp DiverCity TOKYO 撮影:MAETTICO 福本和洋

たとえば今回のアルバムのタイトルにもあるけど、「熱唱」とか「サマー」とか、ライブのタイトルにあった「祭り」とか、こういうハジけた方向性の中で4人体制のファイナルを迎えたのはあえてそうしたんですか?

結構偶然です。(アルバムの)コンセプトや曲の並びはもともとやりたかったことなんですけど、夏だったっていうのも偶然だし。だけど、このアルバムがこれだけの熱量になったっていうことは計算外でしたね。

実際、あのアルバムはどんな気持ちで制作したんですか?

アレンジとかは結構レコーディングのギリギリになったりしたけど、脱退が決まってから作った曲っていうのはないんです。曲はもともとあったものばかりなので、曲作りという意味で影響はなく。でもちーちゃんが発表しているように、ズレが生じてきた、つまり平たく言うとそれぞれの音楽的な最善みたいなものがちょっと違ってきたわけで。でもやっぱり繋いでいるのは音楽だから、雰囲気ではなく音楽にすごく集中して、音楽の絆でコミュニケーションを取ろうという感じはありましたね。むしろ私にとっては、今までのレコーディングの中でもいちばん真摯だったなって思います。いつもそうではありましたけど、ここでヘタなもの出せないだろっていうのもあったし、より全力を尽くしてる感じがありました。

「赤い公園ちゃん」という女の子が重傷を負ったような感じ

佐藤さんの脱退ということを踏まえて、最後に1曲作ろうみたいな発想にはならなかったんですね。

そうですね。今回「カメレオン」を最後に録ったんですが、4人でレコーディングするのが最後だってみんな感じていて。でも誰も何も言わず、音で、歌で、返していくみたいな空気が私は好きでした。ちゃんと各々が噛みしめている感じがあって。

例えるようなことではないとわかってはいますし、バカみたいな聞き方で本当に申し訳ないですが、メンバーが脱退するってどういう感覚なんですか?

いろんな捉え方があるとは思いますけど、私は、4人で「赤い公園ちゃん」というひとりの女の子であると思っているんです。4人それぞれ人間だけど、それでひとりの女の子になる。それを司っている一部が抜けるわけですから、「赤い公園ちゃん」という女の子が重傷を負ったような感じです。自分の感覚的にはそれが近いかもしれない。

あぁ、なるほど…。でも人間には、本来持っている治癒力もあるわけで。

そうですね。骨って折れた後は強くなるって言いますしね。それを願っています。でも「絶対大丈夫です」みたいなこと、言いたいけど今は「頑張ります」としか言えない。正直。ただ、やりたい音楽っていうのは自分の中で尽きていないので、そこはワクワクしてますけど。

なるほど。

ちーちゃんが辞めるって聞いた時に新しいボーカルを入れようとは一切思わなかったし、その後も、「赤い公園ちゃん」を形成していく仲間っていう役割は3人だけでいいかなと思っているけど、「赤い公園ちゃん」と遊んでくれる人はいっぱい見つけていきたいなと思ってます。それも、まだわかんないですけどね。

じゃあ、これまで佐藤さんが歌ってきた赤い公園の曲はどうなっていくんでしょう。

本当にまだ何も決まってないですけど、しばらくは歌うつもりはないですね。3人では。ちーちゃんの歌だし。でも、私の曲でもあるわけで。どうなるかは本当にまだわからないです。名前は同じで歴史は続いていくけど、新しいバンドになることは間違いないわけですから。

今回のことはバンドにとっても津野さん自身にとっても大きな出来事だと思いますが、メンバーの脱退とか、もっというと解散とか、そういう日が来ることは頭の片隅にあったりしたんですか?

ありましたね、初日から。ずっとありましたし、変なバランスのバンドだから、スレスレな部分を愛してくださったお客さんも少なくないと思いますよ。それはみんなが感じてたんじゃないかな、ずっと。だから自分的には、思ったよりは続いたかなと思ってたりして。もっと続いてもいいような気もしていたし、とっくに逃げ出していてもよかったような気も。でもここまで続けてきて、逃げるとかじゃない辞め方が出来たから、ひとまずよかったかなとは思うんですけど。

佐藤さん、ライブもアルバムも最後まで貫いたなって思います。全力でやりきってたというか。

そうですね。うん。ちーちゃん、調子いい時と悪い時とあるし、ちーちゃん自身がいいと思っているちーちゃんと、私たちがいいと思っているちーちゃんと、お客さんがいいと思っているちーちゃんとかいろいろあるけど、私たちは最後に自分たちの好きなちーちゃんが見れてよかったなって思います。よかったですよ、バカで(笑)。

もうちょっと自分自身に対して頼り甲斐がある自分に、そしてそういう赤い公園になっていけたらいいなって

(笑)。ちなみに、何年一緒にいたことになるんですか?

私が高2の時だから、出会って9年ですね。リズム隊なんかはちーちゃんと同級生だからもっとだけど。バンドは出会ってすぐ組みました。

今回、津野さんが赤い公園の前にやってたバンドの曲(M-10「ほら」)が収録されていますよね。曲の内容といい、偶然にしてはすごいタイミングだなと思いました。

速い曲ないなと思ってただけで(笑)。でもすごいいい曲じゃないですか。みんなにとっても青春の曲なので、今みんなでやったらいいだろうなと思って。今までも入れようかみたいなことは話してたんだけど、なぜか入れなかったんですよね。たしかに、感覚的には時が来たのかなと思いました。

自分でもこのアルバム、聴いてますか。

聴いてるほうだと思います。すごい好きなんですよ。フツーに「ギター、かっこいいなあ!」って言ってるし(笑)。ちーちゃんも歌い方素直でいいなあって。

前回の取材の時に佐藤さんの歌が素晴らしくなってますねと言ったら、津野さんが「何か吹っ切れたんじゃないですかね」と言っていたのが印象に残っていて。

吹っ切れるとか素直になるとか、都合のいいタイミングで出来ることじゃないんだなっていうのは学びましたね。でも、いつでも吹っ切って身軽に音楽をやっていけるような音楽的体力や精神力みたいなものが今いちばん欲しいですね。これから先に向けて。ちーちゃんがいなくなるーーこれはもう仕方のないことだって言ってしまえばそれまでだけど、仕方のないことを回避できるぐらいのパワーが欲しいです。これから先は。2度とこんなことはイヤだ。

……。

まだまだすごい好きなアルバムが出来たのも、一種のドーピングがあったなって思うんですよ。弱くてもいいけど、もうちょっと自分自身に対して頼り甲斐がある自分に、そしてそういう赤い公園になっていけたらいいなって。時間かかるでしょうけどね。仕方ないし何でもないわけないですよ、ちーちゃんがいなくなって。何でもないわけないけど、絶対に忘れたくないけど、うっかり忘れちゃうぐらいの活動をしたいです。思いつく限りどんどんやってみて、ヤバイことになったら考えますけど(笑)。

わかりました。では最後に何かありましたら。

このアルバムを「悲しくて聴けないです…」って言ってた人も、お客さん同士で励まし合って、「再生出来ました!」みたいな声に救われています。やっぱり音楽を聴いてもらえているっていうことが、今いちばん何よりもありがたいことだなってあらためて感じています。

赤い公園

高校の軽音楽部の先輩後輩として出会い、佐藤、藤本、歌川の3名によるコピーバンドにサポートギターとして津野が加入。そのまま現在に至る。
2010年1月結成。東京:立川BABELを拠点に活動を始め、デモ音源「はじめまして」、ミニ・アルバム「ブレーメンとあるく」の2枚の自主制作盤をリリース。
2011年10月にはカナダツアー「Next Music from TOKYO vol.3」に参加。
2012年2月ミニ・アルバム「透明なのか黒なのか」をEMIミュージック・ジャパンより発売。
2012年5月ミニ・アルバム「ランドリーで漂白を」発売。約半年の活動休止を経て、2013年3月1日活動再開を発表。
2013年8月14日1st FULL ALBUM「公園デビュー」発売。2014年9月24日2nd FULL ALBUM「猛烈リトミック」発売。
2014年 第56回 輝く!日本レコード大賞「優秀アルバム賞」受賞。2016年3月23日3rd FULL ALBUM「純情ランドセル」発売。
ガールズバンドらしからぬ圧倒的な演奏力と存在感から、ブレイクが期待されるバンドとして高い評価を受けている。
また、作詞・作曲・プロデュースを務める津野の才能がアーティスト・クリエイターから注目を集めており、SMAP「Joy!!」の作詞・作曲等の楽曲提供を行うなど、活動の幅を広げている。
そして2017年赤い公園“にー、しー、ろー、でシングル出します!!”と発表し、2017年2月15日に「闇夜に提灯」、第2弾「恋と嘘」、第3弾は「journey」を発売。8月には、待望のニューアルバム「熱唱サマー」を発売。
8月27日、Zepp DiverCity TOKYOで行われたライブ「熱唱祭り」が大成功を収め、8月末をもって、ボーカルの佐藤千明が脱退。
オフィシャルサイトhttp://akaiko-en.com/