Interview

スキマスイッチ 4曲4様の驚きと心地よさが楽しいニュー・シングルは聴きどころがいっぱい

スキマスイッチ 4曲4様の驚きと心地よさが楽しいニュー・シングルは聴きどころがいっぱい

創造はほとんどの場合、破壊とセットになっている。何かを壊したところから新しいものが生まれるケースが多いからだ。12人のアーティストをプロデューサーに迎えて、リアレンジ、リプロデュースしたスキマスイッチの『re:Action』はそんな作業を経て完成した意欲的で挑戦的な作品だった。その『re:Action』発表から約7か月。新曲収録のシングルとしては約2年ぶりとなるニューシングル「ミスターカイト/リチェルカ」は彼らの新境地がたっぷり詰まった作品となった。シングルなのに4曲入りで、どの曲も存在感があって超強力。特にタイトル曲の「ミスターカイト」と「リチェルカ」はこちらの予想や期待の遥か上をいく驚きが詰まった傑作だ。彼らはどこへ向かっているのか。スキマスイッチの“今”を聞いていく。

取材・文 / 長谷川誠

「ミスターカイト」は、驚いてもらえたら、成功ですね

久々のシングルであり、しかも4曲入りですが、リリースにあたって、考えていたことはありますか?

常田 とりあえず『re:Action』のプロジェクトをやっている期間が2年半ぐらいあって、『re:Action』のツアーが終わったのが7月末だったんですが、その間は新曲を作ることはあっても、作るだけにとどめて、シングルを出すのは控えていたんですよ。出すならば、タイミングがいい時に、ということは僕らみんなが共通して考えていたことでした。プロジェクトが一段落して、聴かせたい曲、自分たちなりのいい曲が4曲揃ったので、2曲は次のアルバムに回して、などと考えず、出せるタイミングなんだから、今回、出し惜しみせずに全部出しちゃおうってことでこの形になりました。

スキマスイッチが新たなステージに行ったことが感じ取れるシングルでもあるのではないかと思いました。

大橋 僕らはライブ活動でも楽曲制作でもそうですが、聴いてくれている人たちを驚かせたいという気持ちがあるんですよ。「今回のシングルもいつもと違うな、スキマスイッチの新曲はこんな感じなのか!」って驚いてもらいたくて作っているところがある。今の自分たちがこんなことをやったらおもしろいんじゃないかと思うことをひとつひとつ形にしている感覚ですね。今のスキマスイッチはこんなことを考えてるんだってことが伝わるといいなって。

音楽の枠組みや制約から自由な作品だなと感じました。

大橋 以前は打ち込みを多用するのはやめようとか、縛りを設定して作ったりしていたんですが、今は生音もデジタルサウンドも全然ありな感じになってきた。僕らは2人組なので、自由度が高いのかなとも思います。バンドだったら、カラーを急に変えるのは難しいと思うんですが、僕らは2人なので、「これ、おもしろそうじゃない?」「おもしろそうだね」ってことで進んでいけますから。

「ミスターカイト」は構成も含めて、まさに自由自在な曲です。この曲はどんなきっかけは?

大橋 僕の中でずっと温めていたネタがあって。学生時代にCMで流れていたある曲をCD屋さんに探しに行ったんですが、当時は試聴機もないし、インターネットも発達してなくて、調べられず。アーティストだけわかっていたので、新しいアルバムに入ってるんじゃないかと当たりをつけて購入して1曲ずつ頭出しして探したんですが、見つからなかったんですよ。その後、何かしながら、アルバムを流しっぱなしにしてたら、CMで流れていたフレーズが流れてきた。サビとそれまでの展開がまったく違う雰囲気だったので、頭出しだけじゃ、わからなかったんですが、その構成が衝撃的で。そのことがずっと頭にあって、こういうアプローチをスキマスイッチでやったらおもしろいんじゃないかと思って、今回、2人で詰めていきました。なので、驚いてもらえたら、成功ですね。

驚きました。2コーラス目の途中の間奏後に一気に雰囲気が変わって、凧が地面から空へ飛翔していく光景が浮かんできました。

大橋 歌詞も曲も視点を変えたかったので、Aメロは僕、サビはシンタくんというように、2人で叩き台を書き分けて作りました。

常田さんはどんなことをポイントにしたのですか?

常田 落差、上昇感をどうやって表現していくかということですね。最初は先に伴奏だけ作って、そこにメロディを乗せようと考えていたんですけど、作ってるうちにそういうことじゃないと気付いて、間奏からサビにいく部分のデモの音を固めて、そこから疾走感をどこまで出せるか、考えて作っていきました。

とても広がりのあるサウンドになっています。

常田 段階を踏んで、徐々に上へ上がっていって、足下を見たら、ジオラマみたいな風景が見えたという感じで、高さを出せるようにしたかったんです。歌詞に関して描きたかったのは“人間ってこうなんだよ”といった大きなことではなくて、“そうか、僕ってこうだったのか”っていうこと。自分が小さな一歩を踏めたということを描ければ、この曲は正解なのかなと思っていました。

「ミスターカイト」というタイトルにも登場していますが、凧というモチーフを使おうと思ったのはどうしてですか?

大橋 シンタくんがサビのモチーフを持ってきたときに、追い風に乗って飛ぶんじゃなくて、向かい風を受けて上昇するというアイディアを持ってきてくれて、それがおもしろかったので、2人で広げていったら、こうなりました。

スキマスイッチとしての活動で、歌詞にある“向かい風”の状況を実感したことはありますか?

常田 『re:Action』のプロジェクトをやっている時期に、「早く新曲を書いてよ」と言われることが結構あって、あれもひとつの向かい風だったのかなって。そういう状況を経たからこそ、出てきた歌詞でもありますよね。僕らも40ですし、14~15年やってくると、批判されることもありますから。それは僕らだけじゃなくて、みんな、そうなんじゃないかなっていう意識もベースになっています。

大橋さんは向かい風を感じたことは?

大橋 まわりからというよりも、自分で勝手に向かい風に立ち向かっていく感覚になることが多いですね。例えば、アルバムを作った直後は、まったく曲が書きたくなくなるんですよ。自分の中に何も残ってない状態になって、次の一歩を踏み出すまでに時間がかかってしまう。しかも次はもっともっといいものを書かなきゃって、新たな自分との戦いが始まってしまうので、自発的に向かい風の中に飛び込んでいるところはあるかもしれません。

無風の状態であっても、走ったら、向かい風が吹いているような状態になりますもんね。

常田 「ミスターカイト」の主人公も間違いなく動いてるからこその向かい風ですね。僕自身、歌詞を書くときはつねに、“動かないと、何も残らない”という意識が前提にありまして。凧を揚げるにしても走ったりするし、昔、パラグライダーをやっていたことがあるんですが、自分で動いていって、やっと上がるんですよ。そこが一番描きたいところかもしれないです。

歌はどんなところをポイントにして?

大橋 個人の視点から俯瞰になるところを表現できたらいいなと思ってたので、一気にサビで爆発する感じをボーカルでも表現することを意識しました。シンタくんがディレクションをしてくれたんですが、作っている段階から2人とも明確なイメージがあったので、スムーズに行きました。

「リチェルカ」は、音の響きのおもしろさを優先したので、かなり遊んだ曲になりました

「リチェルカ」の構成力と表現力も素晴らしいです。テレビ東京系『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~SECOND SEASON』の主題歌になってますが、ドラマの話を受けて?

大橋 そうです。台本を読ませていただいたり、前作のシリーズを見させていただいたりして、刑事物ならではのスリリングさがありながらも、小泉孝太郎くんが演じる主人公のキャラにも通じるポップな雰囲気を盛り込めたらと思って作りました。先方からの縛りもそんなになくて。

常田 「スカッとしてほしい」という要望はありましたけど。

大橋 「スカッとする」ってわかりやすい言葉ではあるんですけど、選択肢は多いし、誰が聴いてもスカッとする曲というのは難しい部分もありました。アップテンポではあるんですけど、あんまり激しいアップテンポではなくて、少し歪なアップテンポになると、スリリングさにつながるんじゃないかなって。

常田 シャッフルしながらのアップテンポなんですよ。歌詞も“恋愛というよりは前向きでスカッとする内容で”とのオーダーがあって、その時点で3曲目の「さよならエスケープ」はすでに完成していて、テーマ的にはほぼ同じようなオーダーだったので、どう変化を付けるか、思案のしどころだったんですが、ワーワー言いながらアイディアを出しあってるうちに、出来ていった。歌詞の内容が整理整頓されたものよりも、音の響きのおもしろさを優先したので、かなり遊んだ曲になりました。

大橋 言葉がサウンドとして転がっている感じを表現出来たらと思って作りました。でたらめ英語で作ることもよくあるんですけど、でたらめ日本語で作るバージョンがあって、久々にひたすらゴロだけを重視するやり方で書いて、シンタくんに渡しました。「このワードはおもしろいから使おう」「似た響きのことばを当てはめてみよう」って話ながら作っていったので、楽しかったですね。

大橋 そうやって作っていくと、普段自分が使わないワードが出てきたりする。歌い回しの好き嫌いがあるんですが、そこから飛び出たものが出てくるのが気持ち良かったですね。いつかまったく手を入れないでたらめだけのものを作りたいと思っています。

デタラメでもその言葉が出てきた必然性がありそうですよね。「リチェルカ」は“自由”という言葉も目立っていました。

常田 そういうのはありますね。忙しいときにそういうやり方で歌詞を作ると、“休み”という言葉が多かったり(笑)。今回はやたらと“ミュージック”という言葉が多かったです。

“さらに一つ上のステージへ”という歌詞は今のスキマスイッチにも当てはまるんじゃないかと思いました。

常田 「ミスターカイト」もそうですけど、自分たちが感じていることはどこかしらで反映されていると思います。特にこういう曲を作るときは自分たちを鼓舞したい気持ちもあるので、僕らが誰かに伝えたいというよりも、自分たちに、こうであってほしいというのを伝えている部分はあるような気がします。

「さよならエスケープ」は、とてもリラックスして作った曲ですね

「さよならエスケープ」も前向きなパワーが詰まったポップな曲で、「マイナビ転職」のCMソングにもなっていますが、これは?

大橋 デモとしては、前のアルバムを作ってた時に一緒に作っていたものなんですが、そのデモを気に入ってくださって、じゃあ歌詞を作って完成させようということになりました。結果的に、今回のシングルの中では王道スキマスイッチのような曲になりました。仮タイトルはサビ始まりだったので、「サビはじ」でした(笑)。

頭上に空が広がっている気持ちよさが感じ取れるところはどこか「ミスターカイト」と共通するところがあると感じました。

常田 見晴らしのいいところに行きたかったっていうのはあるかもしれないですね。見渡していたい。そうすると自分のいる位置も分かりやすくなりますし。「前向きな曲をお願いします」って言われたんですが、この曲に関しては2人で悩みどころがないまま、ノンストップで最後まで書けました。とてもリラックスして作った曲ですね。『re:Action』の時は常に緊張感を持ってやっていたので、その反動もあったかもしれないです。

大橋 「転職したことないけど、こういう時にはこう思うかもね」って2人で話ながら、作った曲でもありますね。以前はタイアップをいただいくと、寄り添いすぎないように意識しながら作ることもあったんですが、最近はうまく寄り添って、楽しみながら作れるようになってきました。「転職ってこうかな?」って、いただいたテーマを自分たちなりに膨らませて、楽しみながらやらせてもらっています。

4曲目の「ココロシティ」はメ~テレ開局55周年テーマソングでもあります。ノスタルジックな部分もありつつ、今も思い出になるという視点も素晴らしい曲です。「さよならエスケープ」にはスカイツリーが出てきますが、この曲にはテレビ塔が出てきます。空とか、高いところがたくさん登場するシングルです。

常田 出てきちゃいましたね(笑)。名古屋市をテーマにした曲を依頼されて作った曲なんですが、何を見て育ったかなって思い浮かべつつだったので、今を書いているのに、なぜか原点を見ているようなところもありました。歌詞にあるように、名古屋って見上げるものが多いんですよ。地下街も発達してますが、テレビ塔、ツインタワーなど、見上げさせる大きな建物をいっぱい作っている。名古屋城なんかもその最たるものだと思いますけど、そういう感じも歌の中に入れられないかなってことは思っていました。

大橋 僕らは愛知県出身だってことを一生懸命言ってきたつもりなんですが、あまり浸透してないところもあって、やっと公式的に名古屋の曲を書く機会をいただいたので、しっかりアピールしたいなと(笑)。愛知県を離れて、東京での暮らしのほうが長くなったんですが、愛知に住んでいたころのことだけでなく、地元を離れたからこそ、見えてくる名古屋も含めて、描けたらと思っていました。地元が大好きなので、そこに焦点を絞っていくと、名古屋でしかない曲になりそうだったんですが、2人で広げていって、名古屋だけじゃなくて、故郷を離れて暮らしている人すべてに当てはまる歌にしたかったんですよ。この曲を聴いて、これは自分の街だって思ってもらえたら、うれしいですね。

4曲それぞれ、存在感があって、個性的ですし、新しい景色を見せてくれるシングルと言えそうですね。

常田 14、5年の活動を経たスキマスイッチが今こういうのを作ってますよっていうものをちゃんと盛り込められたんじゃないかと思います。今、デモをいくつか作っているんですが、また新しい部分が見え隠れしているので、僕たちも楽しみなんですよ。これからも「この曲、おもしろくない?」というマインドを持って、作り続けていきたいと思っています。

大橋 自分たちが今やりたいことを全部詰め込んだ4曲ではありますが、やりたいことをやれば、それでいいってことではなくて、聴いてくれる人がどんな反応をしてくれるだろうって常に考えているし、その前提の上に成り立っているのがポップスだと思うんですよ。聴いた人はどんな顔で聴いてくれるのか、それがとても楽しみですね。

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スキマスイッチ

大橋卓弥、常田真太郎のソングライター2人からなるユニット。
2003年「view」でデビュー。
大橋の温かく包み込むような独特の歌声、それを支える常田の卓越したサウンドクリエイトで「奏(かなで)」「全力少年」 など、ヒット曲を次々と生み出す。
2013年7月9日にはデビュー満10周年を迎え、8月21日に初のオールタイム・ベストアルバム『POPMAN’S WORLD~All Time Best 2003-2013~』をリリース。
2017年2月15日、彼らが敬愛する12組のアーティストをプロデューサーに迎え制作された、リアレンジ・リプロデュースアルバム『re:Action』をリリースし、4月30日からは同企画に参加したアーティストとの対バンツアー「スキマスイッチ TOUR 2017“re:Action”」を敢行。9月13日に、約2年ぶり待望の24thシングル「ミスターカイト /  リチェルカ」リリース。

オフィシャルサイトhttp://www.office-augusta.com/sukimaswitch/