ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“進化の夏”  vol. 3

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もっと高く!傷ついた「烏」たちが再び飛ぶ―ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“進化の夏”ゲネプロレポート

もっと高く!傷ついた「烏」たちが再び飛ぶ―ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“進化の夏”ゲネプロレポート

いよいよ幕を開けたハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“進化の夏”。これまでのダイナミックな試合の連続から一転、高校生たちの「日常」に主眼を置いた本作は、今までの「ハイキュー!!」よりさらにポップに、さらに親しみやすく“進化”。それでいて変わらない熱い感動を観客に届けている。そんな最新作の全貌をここでレポート。初めての人には入りやすい、おなじみの人にはまた新鮮な本作の魅力をぜひ多くの人に知ってほしい。

もっと高く飛ぶために。傷ついた「烏」たちが再び走り出す

演劇「ハイキュー!!」の中で象徴的に使われるのが「飛べ」という言葉。烏野高校の応援旗にも力強く記されたこのフレーズには、頂を目指す彼らの想いが凝縮されている。しかし、より高く飛ぶには、時に大きくしゃがみこむことも必要。たとえ一瞬、その視界が低くなったとしても。

この“進化の夏”は、もっと高く飛ぶために、それぞれが自分に足りないものを模索する助走期間。いつもの「ハイキュー!!」と比べると試合数も減り、序盤は別の作品を観ているよう。だからこそ、敗北の傷から立ち上がる彼らの葛藤が一層色濃く、練習試合は一層爽やかに、観る者の心に風を起こすはずだ。

とにかく今回は冒頭からいつも以上にポップで賑やか。コートの上ではまっすぐな瞳をしている彼らの、高校生活が元気いっぱいに描写される。

赤点をとったら合宿に参加できないと知った影山飛雄(影山達也)が、ショックのあまり失神し、心臓マッサージをされる姿なんて、試合では絶対見られないプレミアもの。クールな影山の人間らしい一面により愛着が増す。

また、今回からマネージャーの清水潔子(長尾寧音)が登場したことで、男子陣のリアクションもますます個性豊かに。潔子に熱を上げる西谷 夕(渕野右登)と田中龍之介(塩田康平)など原作でもおなじみの光景が目の前で展開され、思わず嬉しくなる。

もちろんスポーツドラマとしての共感度も十分。特に、それぞれが今の自分を超えるためにもがく姿は、爽やかで、いとおしく、きゅっと胸を締めつける。彼らの葛藤を、演劇らしく『ハムレット』の名台詞「進むべきか、とどまるべきか」になぞらえ描いた点はナイスアレンジ。進化をするためには、変化をしなければならない。だけど、変化をすれば、一時的に停滞・低迷せざるを得ない。それでも人は進むべきか、とどまるべきか。日向翔陽(須賀健太)が、影山が、東峰 旭(冨森ジャスティン)が、西谷が、人知れず汗を流し、時には対立しながら、“進化”を求めるさまに、「ハイキュー!!」の美学がにじみ出る。

どうしてそんなに頑張るの? その問いに、日向が出したシンプルな答え

ただ、そんな少年漫画らしい一本気なキャラクターだけでなく、そうなれない人間の視点もきちんと取り入れているところが、「ハイキュー!!」の魅力。だからこそ「ハイキュー!!」は普遍的な青春ドラマとして万人の胸を打つのだ。今回、その役割を担っているのが、新たにマネージャーとして入部した谷地仁花(斎藤亜美)と、唯一冷めた目で仲間たちを見ている月島 蛍(小坂涼太郎)だ。

バレー部の見学に来た谷地は、猛然と練習に励む部員たちに圧倒され、つい日向に「どうしてそんなに頑張れるのかな」と質問する。一方、月島も遅くまで自主練に取り組む部員たちを見て「たかが部活」と割り切り、「どうしてそんなに必死にやるんですか」と一線を引いていた。ふたりの疑問は、しごくもっともだ。みんながみんなプロになれるわけじゃない。部活を頑張っても将来に直結するわけじゃない。月島の言葉通り、履歴書に「学生時代、部活を頑張りました」と書ける程度の価値しかないのかもしれない。

だけど、何かに夢中になることは、理屈を看破する。強くなりたいという純粋な欲求の前では、どんな正論もただの単語の羅列だ。「頑張る」ことが、「精神主義」「青臭い」と眉をしかめられる時代に、それでも一途に頑張る彼らの存在に人は心を動かされるのだろう。胸が熱くなるのだろう。

その証明となるのが、合宿最後の梟谷学園との練習試合。それこそ、たかが練習試合だ。これに勝っても負けても記録には何も残らない。なのに、みんなガムシャラだ。そして何より楽しそうだ。再演〝頂の景色〞を含む計5作、様々な試合シーンが描かれてきたが、こんなにもバレーをすることが純粋に楽しそうな烏野高校は見たことがない気がした。それはきっとそれぞれがもっと強くなるために枷を負い、悔しさやもどかしさを味わったプロセスがあったから。一度低くしゃがんだことで、今まで以上に高く飛べた彼らの肩越しに、観客もまた新しい景色を見ることができたのだ。

ライバル校ながら、迷う月島にアドバイスを送る黒尾鉄朗(近藤頌利)。底抜けの明るさで月島の悩みを吹き飛ばす木兎光太郎(吉本恒生)など、出てくる登場人物みんなが名キャラクター。敵も味方も愛すべき人たちばかりだから、ますます「ハイキュー!!」の世界がいとおしくなる。そして、そのセンターにいる日向の輝きは目が眩むほど。5度目の日向役となる須賀は、ごく普通に呼吸をしている姿さえ、もう日向にしか見えない。そのシンクロぶりに驚かされる。影山と激しく衝突しながらも、一途に強さを追い求める日向。その手を高く伸ばした先に見たものとは。ひと回り大きく成長した日向の心に、観客の心が寄り重なったとき、劇場に熱い感動の渦が突き上がるはずだ。

奇跡のキャスト・スタッフを配し、演劇「ハイキュー!!」が全国を駆け抜ける!

夏合宿の終わりは、総勢30名のキャストが舞台総出で夏のひとコマを演じる。このシーンがまた素晴らしい。普通、これだけの登場人物が出てくれば、中にはエキストラがいてもおかしくないはず。けれど、30名の俳優は、みんなその場でちゃんと生きている。台本に台詞が書かれていなくても、ト書きにアクションが指示されていなくても、その場でそれぞれのキャラクターとして、いかにもらしい動きを見せる。その多幸感いっぱいの光景に、なぜか感謝の気持ちが満ちあふれてきた。この30人の俳優が、生まれて、俳優という道を選んで、「ハイキュー!!」という作品と出会って、この瞬間に舞台上で生きている。そんな奇跡のようなめぐり合わせに、「ありがとう」と言いたい気持ちでいっぱいになったのだ。

もちろん「ハイキュー!!」の目玉であるアクロバットは今回も盛りだくさん。バク転、バク宙はお手のもの。開脚した状態で後方に宙返りするクロスアウトや、空中でスクリューするように身体を回転させるバタフライツイストなど驚きの美技が連発。これだけ高い身体能力を有したキャストがよくここまで集まったと、俳優たちの努力と製作陣のこだわりに頭の下がる想いだ。試合シーンで繰り出されるダンサンブルなステップも、これぞ「ハイキュー!!」というカッコよさ。スパイクのたびに、キャストが跳躍すると、その到達点の高さに思わず目を見張ってしまう。空中でしっかりスパイクの姿勢を決めるなどボディコントロールもバッチリ。魅せる力も、公演を重ねるごとに確実に“進化”を遂げている。若き俳優たちの圧倒的なパフォーマンスは、これから日本中の観客を魅了していくことだろう。

ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“進化の夏”は、東京、大阪、兵庫、宮城、福岡と各地をめぐり、10月20日からTOKYO DOME CITY HALLで東京凱旋公演を決行。10月29日の千秋楽にはライブビューイングも実施予定だ。まだチケット未入手の方はぜひ当日券を確保すべし。本作を観ずして2017年の夏を終えることはできないと、胸を張って宣言したい。

取材・文・撮影 / 横川良明

フォトギャラリー

ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“進化の夏”

【東京公演】2017年9月8日(金)~10日(日) TOKYO DOME CITY HALL
【大阪公演】2017年9月15日(金)~18日(月・祝) 大阪メルパルクホール
【兵庫公演】2017年9月22日(金)~24(日) あましんアルカイックホール
【宮城公演】2017年9月29日(金)~10月1日(日) 多賀城市民会館 大ホール
【福岡公演】2017年10月14日(土)・15日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【東京凱旋公演】2017年10月20日(金)~29日(日) TOKYO DOME CITY HALL

【原作】古舘春一「ハイキュー!!」(集英社「週刊少年ジャンプ」連載中)
【演出・脚本】ウォーリー木下

【キャスト】
■烏野高校
日向翔陽:須賀健太/
影山飛雄:影山達也/
月島 蛍:小坂涼太郎
山口 忠:三浦海里
田中龍之介:塩田康平
西谷 夕:渕野右登
縁下 力:川原一馬
澤村大地:秋沢健太朗
菅原孝支:猪野広樹
東峰 旭:冨森ジャスティン/

■音駒高校
孤爪研磨:永田崇人
黒尾鉄朗:近藤頌利
海 信行:武子直輝
夜久衛輔:後藤健流
山本猛虎:川隅美慎
福永招平:梶原 颯
灰羽リエーフ:石倉ノア/

■梟谷学園高校
木兎光太郎:吉本恒生
赤葦京治:結木滉星
木葉秋紀:東 拓海
鷲尾辰生:三宅 潤
猿杙大和:松波優輝
小見春樹:高根正樹/

■烏野高校 OB・OG
嶋田 誠:山口賢人/
田中冴子:佐達ももこ
月島明光:山川宗一郎/

■烏野高校 マネージャー
清水潔子:長尾寧音
谷地仁花:斎藤亜美/

■烏野高校 顧問・コーチ
武田一鉄:内田 滋
烏養繋心:林 剛史

幼い頃に見た “小さな巨人” に魅せられ、バレーボールを始めた少年・日向翔陽。しかし憧れの烏野高校排球部に入部した彼を待ち受けていたのは、中学最初で最後の試合で惨敗した天才プレイヤー・影山飛雄の姿だった。最初は反目し合っていた二人だったが、様々な困難を前に少しずつ互いを認め合っていく。インターハイ宮城県予選で青葉城西高校に接戦の末に敗北した烏野高校は春高予選に向けて再び動き始める。そして次なる舞台は夏に行われる音駒高校、梟谷学園高校との東京合宿! 強豪校たちとの戦いの中で烏野高校はいかに成長を遂げるのか!? 今、進化の時を迎える!!

©古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会

原作コミック 「ハイキュー!!」

ハイキュー!! 9巻

著者:古舘春一
集英社「週刊少年ジャンプ」

青葉城西に負けた悔しさをバネに、新たな目標を掲げ歩み始めた烏野。東京遠征も決まり沸き立つ中、待ち受けるは期末テスト!? 赤点を取ると遠征には行けない…赤点寸前の日向・影山・田中・西谷の運命は!?

©古舘春一/集英社

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vol.3