Interview

GLIM SPANKYが、サイケデリック・ロックを昇華させた新作の圧倒的説得力

GLIM SPANKYが、サイケデリック・ロックを昇華させた新作の圧倒的説得力

『BIZARRE CARNIVAL』とは、奇怪なカーニバルという意味。もともとGLIM SPANKYが志向していたサイケデリックな要素の強い曲が、アルバムのあちこちでその存在を主張している。アコースティックなサイケもあれば、エレクトリックなサイケ、パーカッシブなサイケもある。
そうしたサウンド面ばかりでなく、収録曲のリリックには暗喩を秘めた不思議な言葉がちりばめられ、半世紀も前に人間性の回復を訴えたビート二クスたちの精神が受け継がれていて、GLIM SPANKYのサイケデリックがファッションではないことがわかる。それがアルバムの全面に出ているということは、いよいよ彼らがロックユニットとして本格化したことを物語っている。
こうしたシリアスなメッセージは現代では煙たがられることが多いが、GLIM SPANKYが多くの人たちの共感を得ているのは、メッセージの伝え方に絶妙なポップ感覚がミックスされているからだ。そんなバランスの良さと、鮮烈なメッセージの本質について、松尾レミと亀本寛貴が熱く語ってくれた。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 森崎純子

大好きなサイケを、現代の王道ロックとして出そうというのがコンセプト

『BIZARRE CARNIVAL』は、本格的なロック・アルバムですね。聴いていて、往年のアナログ盤のように、“A面とB面”を感じました。

松尾レミ 前作の3枚目のミニアルバム『I STAND ALONE』とつながるようなものを作ろうっていうのが、私たち共通の認識としてあって。もともと大好きなサイケデリック・ロックを、いろんな解釈をして、私たちなりに現代の王道ロックとして出そうっていうのがコンセプトだったんですよ。もちろんサイケの中にもいろんなものがあって、うるさいサイケとか、逆に静かで幻想的なものだとか。それもこれもすべて含めてのサイケデリックって意味合いとして、いろんな表現ができるなと思ったので、それに挑戦してみました。

その意味でいうと、『I STAND ALONE』はGLIM SPANKYにとって重要な作品だったんですね。

松尾 はい。タイトル曲の「アイスタンドアローン」が「これだ!」ってピーンときた曲だったから、それにつながる曲を書いていこうっていう感じで今回のアルバムの制作が始まりました。そこから、もっと深いところに行こうっていうことで曲を書き足していったっていう感じです。そうは言っても、そういうロックが自分の趣味として大好きなものだったんで、曲が自然に生まれてきましたね。『BIZARRE CARNIVAL』というアルバムは、すごくナチュラルに出来た感じがします。

今まで“サイケ好き”を隠してきたのかな?(笑)

松尾 いや(笑)、タイミングっていうか、1枚目と2枚目は私たちの自己紹介盤で、シンプルなロックをまずは見せたいっていうのがあった。やっと3枚目で、計画的にサイケをやれるなっていう感じです。

亀本くんにとって、今回のアルバム制作はどんな感じだったの?

亀本寛貴 僕もサイケは好きです。サイケな「BIZARRE CARNIVAL」、「The Trip」、「白昼夢」は、レミさんが弾き語りで作ってきた曲なんですよ。で、僕がこういう曲やりたいんだけどって出したのが、「THE WALL」、「吹き抜く風のように」、「END ROLL」だった。それってアルバムの中ではどちらかというと、そんなにサイケな曲ではない。去年作ったアルバムからの流れで、ガチっとタイトなビートがある曲をやりたいっていう前提が僕にはあった。ドラムがバツっと真ん中にしっかりあって、曲の骨組みになる。踊れたり、ノレる要素が中心にある楽曲っていうものを僕が作って、レミさんの楽曲とのバランスを取ろうと思ったんです。

そのバランスがすごくうまくいってるね。

亀本 そうですね。僕はリスナーとして、60’s後半ぐらいのビートルズだったり、バーズだったり、そういうサイケな感じが好きで。でも僕から「やろう!」って感じじゃなかった。レミさんがやりたいなら一緒にやるぜって感じではありました。

亀本くんが持ってきた1曲目の「THE WALL」は?

松尾 最初にイントロのギターリフがあって、そこから別々の作業に入って、私は違う部屋で弾き語りで歌を作っていった。亀(本)はバックを煮詰めていって、合わせたらこうなったみたいな感じです。いつもそうやって作ってます。

ライブのオープニングでいつもかかる曲に、雰囲気が似ているね。

亀本 はい。この曲は、最初からアルバムの1曲目にするつもりで作ってました。

亀本くんが作ったイントロが、アルバムを聴くリスナーの耳に最初に届く音になる。

亀本 そうなんです。そういうふうになるって想像して、最初から作りました。

後半でアルバムはダークな世界に入っていくので、この曲で始まるのは非常にバランスがいいね。

亀本 ありがとうございます。

そして2曲目がアルバムタイトル曲の「BIZARRE CARNIVAL」。このタイトルの由来も含めて話しを聞かせてください。

松尾 この曲はもともと題名がなかった。というか迷ってた。で、アルバムタイトルの言葉が先に出てきたんです。
私はこの2曲目の曲が、今まで作ってきた中でも3本指に入るくらい大好きなので、どうしてもこの曲に意味があるってことをアピールしたかった。だけど、リード曲にする曲ではないって思ってたので、じゃあ、ここに意味があるって思わせながらリスナーの人に聴かせようっていうことで、アルバムのタイトルをそのままこの曲に付けたっていう。

けっこう、乱暴(笑)

亀本 いやいや、今までも僕らはリード曲じゃない曲のタイトルをアルバムタイトルにしてるんですよ。前回の『Next One』も、その前のミニアルバムに入ってた収録曲で、それがアルバムタイトルになってる。僕らのやり方としては普通にありえるし、しかも商業的にこの曲をリード曲にしなきゃいけないっていうのとは違って、この曲はアルバムで重要なんじゃないかって思わせるやり方として、僕らの中では常套手段なんです(笑)。どうしてもこのご時世、みんな、リード曲だけとりあえず聴いて認識しとくみたいな感じがあるから。

試聴サイトにいっても、みんな、1曲目とアルバムタイトル曲を聴いて判断するみたいなところはあるよね。

亀本 そうなんです。アルバムタイトル曲が2曲目にあると、なんかこれに注目しなきゃいけないのかなって気にさせるって感じで。

松尾 それを狙ってこのタイトルを付けました(笑)。

あはは、確信犯!“BIZARRE CARNIVAL=ビザール・カーニバル”って、奇怪なカーニバルって意味だけど、この言葉はどこから?

松尾 昔、“ハーパース・ビザール”っていうグループがあって、それを父親が聴いてたので、ビザールって言葉は知ってました。ただ私はそのバンドには特に興味も持たずにいたんです。だからビザールって言葉は幼いときから知ってたんですけど、バンドをやり出したら“ビザールギター”が目についてくるわけですよ。

亀本 レミさんはジャック・ホワイトとかベックとか、みんな変な形のギターを使ってるのを見て、「私もああいうのがいいんだけど」って言うから、「ああいうのはビザールギターっていうんだよ」って。

松尾 「ああ、これがビザールか」って。なので、どっかから引用してきたっていうより、今回はストレートにこの言葉が出てきたって感じですね。

“カーニバル”は、サーカスに近い部分があるよね。

松尾 そうなんです。フリークショーみたいな、摩訶不思議な怪しい奴がやって来るみたいな感じのタイトルにしたかった。そういう世界観が好きだし、いろんな曲があって、それがごちゃごちゃに詰め込まれてる。「カーニバルがやって来る!」って感じのアルバムタイトルにしたかったんです。

結果、本当にいろんな曲が入ってるね。多種多様なサイケがあったり、フォーキーな曲があったり。それにしてもレミさんの趣味が全開。「趣味に走り過ぎだろう」って言われるかもしれないよ(笑)。

松尾 でも、誰にも何も言われないんで(笑)。

(笑)誰も止めてくれない。