Interview

澤野弘之、ボーカル・プロジェクト“SawanoHiroyuki[nZk]の新作が唯一無二の存在を証明する!

澤野弘之、ボーカル・プロジェクト“SawanoHiroyuki[nZk]の新作が唯一無二の存在を証明する!

アニメ、ドラマ、映画などの劇伴を数多く手がけ、いまや現代の音楽シーンを代表する作曲家となった澤野弘之によるボーカル・プロジェクト“SawanoHiroyuki[nZk]”。TVアニメ「Re:CREATORS」第1クールオープニングテーマ「gravityWall」、「機動戦士ガンダムユニコーンRE:0096」オープニングテーマ「into the sky」などを含む2ndフルアルバム「2V-ALK」は、緻密に構築されたサウンドメイク、卓越した技術を持ったプレイヤー/ボーカリストの高いパフォーマンス性、そして、作曲家・澤野弘之の核である優れたメロディセンスが刺激的なバランスで融合した作品に仕上がっている。
今回エンタメステーションでは、澤野の単独インタビューを実施。アルバム「2V-WALK」の制作を軸にしながら、このプロジェクトのコンセプト、作曲家としてのスタンスなどについても語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

自分はボーカリストではなく作曲家だから、歌うのが大変なメロディを作りがちなんです

SawanoHiroyuki[nZk]のニューアルバム「2V-ALK」が完成しました。フルアルバムは「o1」(2015年9月リリース)に続き2作目ですが、このプロジェクトのスタイルが確立できたという実感はありますか?

確立できたとは思っていませんが、レコーディングにしてもライブにしても、自分がやりたい形で進められているなという手応えはありますね。もともと僕は劇伴の作曲家で、サントラのなかに歌モノの曲を取り入れていたわけですが、「ボーカルの楽曲に特化した自分名義のプロジェクトをやってみたい」という思いがずっとあって。実際に始まったのは2014年ですが、劇伴とは違う、もうひとつの音楽活動が出来ているのはすごく嬉しいし、やりがいも感じています。

今回のアルバムに関しても、軸になっているのは歌のメロディですからね。Tielleさん、Gemieさん、mizukiさん、Yoshさん、Aimerさんなどが参加していますが、曲が先にあって「これを誰に歌ってもらおうか?」という順序なんですか?

基本的にはそうですね。曲が先行して、「どのボーカリストに歌ってもらうのがいちばんいいだろう?」ということなので。「絶対にこの人でなければ困る」という感じよりも、あくまでも僕が作る曲を歌ってもらうことが前提で、「どんなふうに歌ってくれるのかな」と楽しみにしている感覚なんですよ。もちろん、ボーカリストたちがいないとこのプロジェクトは成り立たないということも実感してますけどね。

簡単に歌える曲はひとつもないですからね。

そうですね(笑)。自分はボーカリストではなくて作曲家だから、歌うのが大変なメロディを作りがちなんですよ。そこを彼・彼女たちの技術と声で助けてもらっているというか。作るときは自分で鼻歌を歌ってたりするし、人が歌うことを前提に作ってるんですけど…。

ブレスの位置とかも考慮しながら?

あ、そこまでは考えてないかもしれないです。「ここでブレスを入れる」みたいなことを意識しはじめると、メロディに対するアプローチが違ってきてしまうので。さすがに「これだと息継ぎできなくて死んじゃうな」というものは作らないですけど(笑)、あくまでもメロディ優先ですね。そこをおもしろがってもらえてるんだろうなという気持ちもあるし。

優れたボーカリストたちによって、メロディメイカーとしての澤野さんの素晴らしさを味わえるのが[nZk]の醍醐味ですからね。アルバムにはアニメ、ゲームなどのタイアップ曲も収録されていますが、作品全体のトータリティについてはどんなふうに捉えてますか?

前作もそうだったんですが、タイアップ曲、デジタルシングルなどを作っていくなかで「そろそろアルバムにしたいですね」という話になったんですよね。それを踏まえてバリエーションやバランスを考えながら新規の曲を作り、さらに劇伴として作ったものを[nZk]バージョンとして作り直した楽曲を入れて。新しい楽曲に関しては、最近、僕が影響されている海外のポップスの要素も入ってますね。

現在の洋楽ともリンクしている、と。

そういう意識もありました。ここ数年の海外のポップスって、EDMだったりシンセのサウンドを融合しているじゃないですか。もともとカントリーの色が強かったテイラー・スウィフトが「1989」でデジタルポップになりましたけど、僕はそっちのほうがエンターテインメント性があって好きなんですよね。ヒップホップ、R&Bが中心だった時期はそうでもなかったんですけど、最近はアメリカのチャートもチェックしているので。

音楽自体は「日本の人たちに楽しんでもらいたい」と思って作っている

数年前からヒップホップとエレクトロも接近してますからね。

そうですね。アレンジやトラックによってメロディがさらにエモーショナルに聴こえることもけっこうあるし。どうしても歌詞や歌にスポットが当たりがちですけど、僕は「アレンジも同じくらい重要だ」と思ってるんですよ。[nZk]の楽曲の歌詞にもちゃんと意味は持たせているんですが、どちらかというとサウンド中心に聴いてもらいたいんですよね。
英語の歌詞も多いので「何を歌ってるのかわからないけど、いい曲だな」と思ってほしいなと。

[nZk]の楽曲は、アレンジ、サウンドの質感も大きなポイントですからね。J-POPは歌詞を重視する傾向がありますが、また違ったアプローチが施されていて。

確かに歌謡曲、J-POPは“歌詞ありき”というところもありますからね。僕は子供の頃から歌詞をあまり気にしてなくて(笑)、メロディ、声、アレンジで「この曲はいいな」と思ってたんですよ。歌詞をないがしろにしているわけではなくて、歌詞と心情を重ねて「いいな」と思うことも素晴らしいと思うんですけど、それよりもアレンジだったり、グルーヴを意識しているところはありますね。

アレンジの構築もさらに高度になっていて。

今はギターのリフやベースラインなども自分で作ってるんですよ。最初の頃はミュージシャンが弾いてくれたフレーズに対して「それ、いいですね」という感じで作っていたんですけど、あるときから「自分が思い描いているグルーヴを形にしたい」と思うようになって。ギターのカッティングのミュートの位置だったり、ドラムのタムのアクセントまで指定しているんです、いまは。「弾きづらいな」と思われることもあるだろうけど(笑)、そこは「お願いします」という感じで。基本的には洋楽のグルーヴに近づけたいんですよね。デモを作るときも、洋楽っぽく聴こえるかどうかを意識していて。

海外のリスナーにもアプローチしているということですか?

いや、実はそれはまったくないんですよ(笑)。洋楽のグルーヴが好きだし、そういうアレンジを意識しているんですけど、音楽自体は「日本の人たちに楽しんでもらいたい」と思って作っているので。もちろん海外の人が聴いて「おもしろいな」と思ってもらえたら嬉しいですけど。

アルバムにはピアノ曲「pian0s0l0」も収録されています。これは澤野さんのピアニストとしての側面を提示するための…。

いやいや、自分のことをピアニストだなんて思ってないですから。クラシックのピアノを学んでいるわけでもないし、あくまでも作曲家がピアノを弾いてるということなので。このピアノ曲に関しても、自分の曲だから弾いてもいいかな、というノリなんですよ。

ピアノの表現も素晴らしいと思いますよ。本当に良い曲だし。

ありがとうございます。先ほども言いましたけど、僕は劇伴の作曲家なので、インストの曲も入れておきたかったんですよね。それが1曲目のイントロダクション(「1ntr0duct10n」)と「pian0s0l0」ということですね。なので「どうだ、俺のピアノを聴け!」とはまったく思ってないです(笑)。

まわりの状況を感じながら、自分のペースで行きたい場所に向かうのがいちばんいい

「2V-ALK」というアルバムのタイトルについては?

このタイトルは今年の1月か2月、アルバムの制作に入る時期には決めていたんです。前作が「o1」だったから、「o2」「o3」という感じで続けていけばいいかなって安易に考えてたんですけど(笑)、「別の案はないですか?」と言われて。2ndアルバムだから“2”は付けたいと思ったのと、あとは僕が尊敬しているアーティストの影響もありますね。僕はCHAGE and ASKAがすごく好きで、特にASKAさんの音楽に助けられてきたんですよ。
チャゲアスに「WALK」という曲があるんですけど、その曲を作る頃にASKAさんは「時代に寄せた音楽ではなく、本当に自分たちがやりたい音楽を追求しよう」と思ったそうなんです。リリースしたときは凄くヒットしたわけではなかったんですけど、3年後に再発したときにすごく売れて。自分の音楽を信じて続けていれば、評価されるときが来る――自分とASKAさんでは月とスッポン以上の差がありますけど、「WALK」を聴くと励みになるんですよ。自分が信じる音楽を突き詰めるべきだなって。

「2V-ALK」というタイトルには、澤野さんの個人的な思いが込められているわけですね。

そうですね。「夢に向かって進む」というと“Run”“走る”という言葉を想像しがちですけど、僕はそういうタイプではなくて“歩く”ほうが合ってると思うんです。歩いていれば、景色も見られるじゃないですか。音楽活動を続けていくなかで、まわりの状況を感じながら、自分のペースで行きたい場所に向かうのがいちばんいいのかなって。そういう気持ちも込められてますね、このタイトルには。

澤野さんの仕事ぶりを見ていると“突っ走ってる”という印象もありますけどね。手がけている劇伴の数もすごいし、スキマスイッチ、Do As Infinityとのコラボレーションなど、活動の幅も広がっていて。

いやいや、ふだんの生活を見たら「こいつ、ぜんぜん仕事しないな」って思われるかも(笑)。実際、音楽に向かっている時間って、それほど長くないんです。大体1日に1曲くらいのペースがいちばんモチベーション保てるので。あとは映画観たり、ごはん食べたりしてます(笑)。

最後にライブについても聞かせてください。2018年2月にはアルバム「2V-ALK」を中心にした公演も予定されていますが、澤野さんにとってライブの魅力とはどんなところにあるんですか?

まず、音源とは違うことができるおもしろさですよね。(原曲には)ピアノが入ってない曲でもライブでは弾くことがあるし、1回1回違ったりもするんですよ。参加してくれるミュージシャンもレコーディングとは違うフレーズを弾くことがあるし、それはライブならではだなって思います。
あと、お客さんの反応を直に感じられるのはやっぱりいいですよね。このプロジェクトを始める前は自分の部屋で曲を作ってるか、レコーディングしてるかで、ひとりの時間が長かったんです。SNSなどで作品に対する反応を見ることもできますけど、ライブは「この人たちが自分の音楽を聴いてくれてるんだな」と実感できるし、それが次の作品を作るモチベーションにつながるんですよ。

もちろん、リスナーに喜んでもらいたいという気持ちも?

ありますね。よく言われることですが、音楽は人に聴いてもらうからこそより意味を持つと思うんですよ。自己満足のために曲を作ることがあってもいいけど、誰かに「いいね」って思ってもらいたいので。人の為にやってるということではなくて、聴いてくれた人の反応が自分の励みになるということですけどね。

ライブ情報

“SawanoHiroyuki[nZk] LIVE 「2V-ALK」”
【日程】

DAY.1 walk the A line 2018年2月5日(月)18:00開場/19:00開演
DAY.2 walk the B line 2018年2月6日(火)18:00開場/19:00開演

【会場】

Zepp DiverCity(TOKYO)

SawanoHiroyuki[nZk]

ドラマ・アニメ・映画など映像の音楽“劇伴”を中心に活動する澤野弘之による新プロジェクト。
劇伴にボーカル楽曲を積極的に取り入れてきた澤野弘之が、よりボーカル楽曲に重点を置く形で展開する。

2014年、プロジェクト第一弾として「機動戦士ガンダムUC」にて楽曲提供及びプロデュースをしたシンガー”Aimer”とともに、機動戦士ガンダムUC episode 7公開記念スペシャルライブ ”UnChild”を東京・大阪で実施。SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義でアルバム「UnChild」をリリースし、オリコンCDアルバム週間ランキングにてTOP10入りを果たす。

続いて自身が劇伴を担当するTVアニメ「アルドノア・ゼロ」にて、SawanoHiroyuki[nZk]として1stシーズンエンディングテーマと2ndシーズンオープニングテーマを担当。2015年9月9日には1st album「o1」をリリース。オリコン週間TOP10入りおよびiTunesアルバムチャート2位を記録。

2016年、4月3日より2クールにわたって放送中のTVアニメ「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」(毎週日曜あさ7:00~・テレビ朝日系列全国ネット)のオープニングテーマとエンディングテーマを担当。最新作「Into the Sky EP」はオリコン週間6位を記録し、iTunesではシングル・アルバム共に1位を記録。

2017年6月28日には、自身が劇伴音楽を手掛けるTVアニメ「Re:CREATORS」のオープニングテーマ「gravityWall」を収録した通算5枚目となる両A面シングル「gravityWall/sh0ut」をリリース。9月20日には2nd album「2V-ALK」をリリースする。
オフィシャルサイトhttp://www.sh-nzk.net/