黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 7

Interview

バンダイナムコ小山順一朗氏(中)アーケードゲーム開発の苦楽

バンダイナムコ小山順一朗氏(中)アーケードゲーム開発の苦楽

毎日が苦痛だった新人時代を振り返る

(入社直後「毎日が苦痛」、「毎日叱られる日々」というスライドを見て)当時はこんな感じだったんですか?

小山 大学で勉強していなかったんで図面も書けなかったんです。ただね、やっぱり1個任せてもらうと、どんどんできるようになるわけです。そのとき最初に作ったのが『スティールガンナー』で、次が『シュータウェイII』。クレー射撃のゲームで、当時は入社2年目のぺーぺーだったんですが、その心臓部を任せてもらいました。しかも、中村雅哉の直命です。そのゲームの原型自体は15年前の商品なんですよね。それを、その当時の1991年の力で作れってことになって。しかも開発は半年でやれって。

半年とは厳しいですね。

小山 そのとき、自分の大恩師である大杉さんというメカのプロフェッショナルに手取り足取り教えてもらって、それで仕事が楽しくなったんです。ホント、あれがターニングポイントでしたね。

でも、自分で全部作るっていうのはプレッシャーもあったんじゃないんですか?

小山 プレッシャーを感じる余裕もなかったですね。3日連続徹夜とかしてましたから。今だったらブラック企業ですよね(笑)。

今はなかなかできないですよね。そこで任せてもらったことで、小山さんののびしろが広がった感じですか?

小山 そうですね。図面を書いて、それがすぐモノになる。電気のエンジニアとふたりで組んで、どんどん作っていくっていうのがすっごい楽しくて。しかも、当時はCADもなくて、みんな手で計算して書くので、ひとつひとつ全部自分で作ったっていう実感がすごいありました。

筐体の中で本当に走っている『エースドライバー』の心臓部

いい時代ですけど大変だったでしょうね。

小山 大変でしたねえ。でも、そういうモノづくりの本質みたいなものに、そこで触れたおかげで、体感ゲームの心臓部を任されるようになったんですね。『エースドライバー』っていうレースゲームも自分が作りました。あれの心臓部はすごくてですね。簡単に説明すると「本当に走って」いるんです。

「本当に走っている」とは、どういうことでしょうか?

小山 はい、中で鉄のドラムにタイヤをつけてグルングルン回して、ハンドルを切るとそのタイヤも曲がるようにしたんです。だから、本っ当に走ってるんですよ。そのとき、初めてアメリカ出張をしまして、当時のAMOAショウ(注18)でアワードを獲ったんですけど、外国人の人から「これはなんなんだ、Gフォースを感じるぞ?」と言われて、「重力を制御してるんです」なんて答えてました(笑)。

注18:アメリカで開催されているアミューズメント、音楽、ファミリーエンタテインメント機器等の展示会。正式名称はAmusement and Music Operators Association show。

本当に中で動かしていることによって、そのように感じるわけですね。

小山 そうですね。アナログレコードの音はCDより本物の音に近いなって思い込んでしまうようなものです。細かな制御を自分たちであれこれ考えて組まなくても、人間はナマのままだとナマで感じるんだっていうのがありますね。

なるほど、すごい(感心)。

小山 そのあとも『アルペンレーサー』や『アクアジェット』を作ったりとか、いろいろやりましたね、うん。いっぱい作りました。

リメイク・リブートの本質と効率化のせめぎ合い

『シュータウェイ』の話に戻るんですけど、それってちょっと今に通じるところがありませんか? 例えば、『プロップサイクル』(注19)のリブートが今あるとか。横井軍平さんもそれに近いことを言っていますが、過去の作品を今風にリブートとかリメイクするというのは、当時のご自身が体感されたものだったのでしょうか。

注19:自転車型の筐体に乗って、ペダルをこぐことで人力飛行機「ラペロプター」を飛ばすナムコの体感ゲーム。

小山 『プロップサイクル』を『ハネチャリ』にしたっていうのとはまた違っていて。『シュータウェイ』はオリジナル版の構造が本当にすごかったんです。コンピューターを一切使っていないのに、ちゃんと制御するんですね。カムが何重構造にもなっていて、それを単純化するっていうことについての、その効率の追求みたいなことをいち早くやっていたんです。

ただ、これはあんまりいうとアレなんですけど、ナムコってメカエンジニアも昔の先輩の技術やテクノロジーを受け継いで、それを工夫してモノを作らなきゃダメだっていう風潮があって。世の中にある最新のデバイスとかを使って、それと似たようなことを表現したらアカン、みたいな感じがあったんです。

いわゆる旧ナムコイズムみたいなものがあったんですかね。

小山 あったんです。引き出しのレールを使って、夏休みの工作的に『コズモギャングズ』(注20)を作ったりとか。今あるテクノロジーで効率よく作ろうっていう、横井さんの「枯れた技術の水平思考」的なことをすでにやってたんですね。「あんなことしなくても、これでできるじゃん」みたいな。

でも、自分は逆のタイプだったんですね。自分の設計に基づいて、商社とかに心臓部の制作を発注して。「こういうのできない? うまくいったら500台、最終的には2500台までいくかもしれないですよ~」とか言って、安く作ってもらったりしたんですが、上司にえらい怒られまして。「なんで自分でやらないんだ!」みたいな。ズルしてるとか、楽をしてる的なことをよく言われましたけど、自分的には「楽じゃないよー」と(笑)。本当にどうしようもないところは自分たちでやらなきゃいけないですけど、プロがいるなら任せられられるところは任したほうがいいじゃんって思ってました。

注20:次々に迫りくるモンスターたちを光線銃で撃っていくエレメカタイプのガンシューティングゲーム。

< 1 2 3 4 5 6 >
vol.6
vol.7
vol.8