黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 7

Interview

バンダイナムコ小山順一朗氏(中)アーケードゲーム開発の苦楽

バンダイナムコ小山順一朗氏(中)アーケードゲーム開発の苦楽

株式会社ソニー 久夛良木健 部長の来訪

『アルペンレーサー』と同じくらいの時期に家庭用で初代プレイステーションが出て、『リッジレーサー』が新しい時代のバーチャル・リアリティーの幕開けみたいに言われたんですよね。

小山 そうです、そうです。初代の『リッジレーサー』はテクスチャーマッピングが貼られた初めての作品だったので業界みんなが驚いたんです。そういえば『アルペンレーサー』を作ってたときに久夛良木健さんが来ましたよ。当時は部長でしたね。

久夛良木部長でしたか!

小山 開発室にやってきて、「ナムコさん、すごいんですねえ」みたいな感じだったです。多分、まだ任天堂とソニーが一緒にやってた時期です。ソニーが自分たちだけでプレイステーションを立ち上げる2年くらい前でしたね。

その時代ですか。プレイステーションが出てきたときはどう思われましたか?

小山 もう体感ゲームは終わるなって思いましたね。もう自分たちの技術とか言ってたらヤバいぞと。

家庭用ハードがここまできたということに、業務用のエンジニアとして、すごい危機感を感じたわけですね?

小山 そうです。レポートも書いて出しましたからね。もう無理だ、止めたほうがいいみたいな。もう堅いものも柔らかいものも全部表現されちゃうぞーと。すぐに『バーチャファイター』も出てきましたし。思いっきり危機を感じましたね。アーケードの『リッジレーサー』チームも家庭用のチームに全然協力しなかったですし。

そうだったんですか?

小山 そうです。家庭用の『リッジレーサー』は、今、『アイドルマスター』のプロデューサーをやっている坂上陽三君が3人くらいで作っていました。

当時のセガはプロジェクトが終わるとメンバーをドラスティックにバラして、もう1回作り直すみたい感じだったんですけど、ナムコさんもやっぱりそんな感じだったんですか?

小山 チーム的なものが始まったのは『鉄拳』くらいからだったと思います。『鉄拳』と『ソウルキャリバー』……『ソウルエッジ』からですね。それまではそういうチーム的なものはなくて、終わったら分解して、また次っていう感じでした。

ナムコ VR研究のルーツは『バーチャリティ2000』から

一方で92年くらいから『バーチャリティ2000』(注21)を研究されていたとインタビューなどで語られていますが。

小山 入社した頃、3次元(3D)コンピュータグラフィックス・ポリゴン技術というのは『ウイニングラン』くらいしかなくて、3D空間の中で自由自在にカメラを変えられるってことに、「すげえ、すげえ」ってなってたんです。そこに、その空間の中を歩き回れる技術がイギリスにあるっていうのを聞いてビックリしまして。そのとき自分はまだ入社2年目くらいで、多分輸入してきたのは澤野(注22)さんだったと思うのですが、これをゲームセンターに置いて実験してみようとなったわけですね。

注21:90年代にイギリスで開発されたVRマシンで、ヘッドマウントディスプレイやデータグローブを着けての操作が可能になっていた。
注22:『ギャラクシアン』、『ポールポジション』などの開発を手がけた澤野和則氏のこと。

御社なりのカスタマイズを何かされたのでしょうか。

小山 いや、まったくしていないです。自分が最初にやったのはデータグローブとヘッドマウントディスプレイを着けて、部屋の中で紙飛行機を投げて飛ばすとか、空中のものをつかんでみるとかいったものですが、イメージとしては「なんじゃ、こりゃ?」でした。振り向いたら画像が追従してこないし、映像もテクスチャーを貼っていないので市松模様みたいですし。

ポリゴンの解像度もすごく荒くて、動きもカッ、カッ、カッって感じで。頭の中で「(ハリアーが)飛んでるんだあ~」って思い込まないとダメで、概念はすごいけど、これはモノになるのかなあと思いましたね。コインオペレーション(注・ゲームセンター仕様)用に改造して、大阪の千日前に4台くらい設置してテストしましたが、やっぱり評判は悪かったです。「500円でこれかよ」とか、よく言われました。

近未来的だけど、やってみると全然近未来的ではないと。

小山 はい。ですから、セガさんがジョイボリスで「VR-1」(注23)とかやったときにはすごいなと思いましたね。

確かにあの頃のセガはそういう研究がすごく進んでいて、けっこういろんなトライをしましたよね。『R-360』(注24)もそうですし、あの頃はナムコとセガが切磋琢磨していたところがあったと思います。

小山 確かにそうでしたよね。

注23:ヘッドマウントディスプレイを装着して8人乗りのライドに乗り込み、出現する敵を撃ち落としていくセガのVRアトラクション。1994年より横浜ジョイポリスにて稼働開始となった。
注24:筐体が前後左右360度に回転するセガの体感シューティングゲーム。

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