黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 7

Interview

バンダイナムコ小山順一朗氏(中)アーケードゲーム開発の苦楽

バンダイナムコ小山順一朗氏(中)アーケードゲーム開発の苦楽

「バーチャル・リアリティーの呪われた時代」を経て

そのあとはバーチャルのことはあまり意識せず、『アイドルマスター』の仕事に移られたのでしょうか?

小山 いやいや、「バーチャル・リアリティー」っていう言葉はもう独り歩きしていて、3Dでポリゴン使っていて箱庭世界なら「バーチャル」って感じで、仮想現実を拡大解釈するものになっていました。セガさんもタイトルに「バーチャ」と付くものを出しまくっていましたよね。

そうでしたね。

小山 つまり、馬に乗ってレースができるものも、スキーをやるものも全部「バーチャルもの」だったんです。そう定義付けされてましたね。

小山さんがよく言われている、「バーチャル・リアリティーの呪われた時代」ですね。

小山 そうですね。ヘッドマウントディスプレイが再登場してくるまでは「バーチャル~?」みたいな。

ちょっと怪しげなものという感じでしたね。

小山 それで、ここからですが、急に『アイマス』に行ったわけではなくてですね。途中で企画マンに転向させられるわけです。「もうメカ止めて、企画にならない?」と。それで、31歳のときゲーム全体を指揮する企画マンになったんですけど、「TOPの人」が「今年中に利益を出せ!」とか言うわけです。

うわあ。

小山 クリエイターの人たちもクリエイターの人たちで、あれこれ言うんです。ドームスクリーンを初めて開発した菊池君(注25)たちも「小山さん、まだこの技術が世の中に出るのは~」みたいな。でも、2000年にはアーケード部門に危機が迫っていたんです。

注25:ドーム型体感ゲーム機『O.R.B.S』開発の中心メンバーのひとりだった菊池徹氏のこと。

アーケードゲーム冬の時代の迷走と多種量産のツケ

確かに当時はアーケード不況みたいなものがありました。

小山 セガさんは『ダービーオーナーズクラブ』で抜けていましたし、コナミさんも『DDR(ダンスダンスレボリューション)』や『ビートマニア』といった音ゲーを出して波に乗っていたんですけど、当時のナムコはそういうのがなかったですからね。家庭用はプレイステーション2が出て、どんどん伸びているのに、アーケードは10年前の実績まで落ちちゃっていたんです。このままいったら、もうゲームセンターはダメになっちゃうんじゃないか。2015年頃には完全に町から消えてなくなるんじゃないかって。

いっとき本当にそんな気配がありましたよね。

小山 そんなときにソフトチームが全員、神奈川新町のビルに移って、いなくなっちゃったんですよ。それで、残った人たちで何かやってやろうってことになってアイディア募集が始まったんですけど……地獄です。もう、売れないものばかりが次々と(モニターにこの時期のナムコのアーケードマシンが表示される)。

アハハハハハ。

小山 このときはちょうど企画に転向した瞬間だったんですね。だから、自分も思い切り加担してます。見て下さい、『つっこみ養成ギプス ナイス★ツッコミ』。知ってますか? ツッコミ用の人形に「なんでやねん!」とか言って突っ込むゲームです。アメリカザリガニさんとか実際の芸人さんたちにタダ同然でご協力いただきました。

音ゲーが流行ってたからといって音ゲーばっかり、いっぺんに作ったり。『ウンジャマ・ラミー』(注26)とか『クエストフォーフェイム』(注27)とか。あと、『ミリオンヒッツ』。これはカラオケシステムの日光堂と組んで、毎月新しい曲を配信するというヤツでして、これが曲の権利関係のビジネスの元になりました。そういう点ではよかったですけど、まあどれも売れなかったですな。

『ゴルゴ13』のゲームとかも作りましたよ。これは売れた方かな~。1発しか撃てないシューティングです。主人公がゴルゴ13なのでターゲットを外したらおしまいという。

注26:『パラッパラッパー』の続編として発売されたプレイステーションの音ゲーのアーケード版。
注27:エアロスミスの曲を演奏できるリズムギターゲーム。こちらもプレイステーション、PCからの移植。

そういうゲームなんですか、面白そうですけど。

小山 一応、さいとう・たかを先生に気に入っていただいて、原作のマンガにも出てきます。あと、『バイオハザード』のガンシューティングをやらせてってカプコンに言いに行ったりとか。「いいよ」って三並達也さん(注28)が言ってくれたんで、「じゃあやりましょう、やりましょう」って作ったのが『ガンサバイバー2 バイオハザード CODE:Veronica』ですが、これも売れなかった(笑)。

こんなのは知ってます? 『ホンネ発見キ』。ウソ発見器の逆で、PHSとかケータイを繋いで奥さんと電話して質問に答えると「浮気してますね」とか判定が出るんです。ちゃんとイスラエルで軍事用に開発された音声認識技術を使っているんですよ。あと『トラック狂走曲』。デコトラのレースゲームで冠二郎さんとコラボしたりしました。でも、どれもこれも売れなくてね~。

注28:『ロックマン』、『バイオハザード』、『Devil May Cry』など数多くのカプコンの名作の開発に携わったことで知られるゲームクリエイター。

すごい! これだけの企画がよく通りましたね。

小山 ソフトチームのプロデューサーのような企画全体を見て判断する人がいなくなって、メカエンジニアと電気エンジニアと筐体のデザイナーしかいない組織でしたからね。クレーンゲームと簡単なメダルゲームしか作ったことのない人たちですから、四季報のア行からいろんな会社に電話して、「アトリエ〇〇さん、ゲーム作りませんか~?」みたいなね。とにかく、組めるところとどんどん組んでやっていました。

< 1 2 3 4 5 6 >
vol.6
vol.7
vol.8