黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 7

Interview

バンダイナムコ小山順一朗氏(中)アーケードゲーム開発の苦楽

バンダイナムコ小山順一朗氏(中)アーケードゲーム開発の苦楽

「これがおまえの作ったゲームが壊れる音だ!」

この頃ですか、小山さんの作ったアーケードゲームの在庫を燃やすぞと言われたというのは。

小山 そーーです、そーーです! 本当に燃やされましたからね。恐ろしいでしょう? 除却処分している場所から電話がかかってきて「もしもし……小山かぁ。これがお前のゲーム筐体がバリバリ壊れる音だ」って。在庫を処分するってことは、どれだけ大変なのかってことをここで勉強させていただきました。

それまでは、モノづくりだけを考えていたけど、ここでプロデューサー感覚といいますか、ビジネスのことも考えられるようになったと。

小山 さらにですね、当時のナムコは構造改革という名のもとに、いわゆる普通の会社組織を止めて文鎮のような組織にしましょうとなりまして。役職を全部撤廃して、役員以下全員平社員にするという制度が始まったんですよ。

ホントにそんなことやったんですか?

小山 そうですよ? 「部長」って呼んでた人を次の日から「さん」づけで呼ぶように。で、希望退職です。

失礼な言い方ですが、先ほどのことがあったのによく残れましたね。それはやっぱり、モノづくりということに対して会社が評価してくれていたわけですか?

小山 う~ん、なんだかんだいって売れているものもありましたからね。もちろん、ダメなものもいっぱい出していたわけで、こうなった片棒を担いだと言えるかもしれません。けど、「やる」っていうエンジンを持っていたのは大きかったかもしれませんね。

文鎮型の組織改革と意識改革

やっぱり、そこは残したんですね。

小山 はい。それで、残った人たちで、「こんなに出しちゃダメだよ」とか、「レースゲームの売れているデザインはこうだよ」とか、残念な結果に終わったゲームを一生懸命分析して。「なんのために、誰のためにモノを創っていたんだ」ということを考え直したんです。

なるほど、大事なことですよね。

小山 そうすると、やっぱりね。お客様のニーズを考えるというより、「ユニークなアイディアでお客さんをトリコにしたーい」とか、「最新の技術を使いたーい」とか、「名声を得たーい」とか。そういう人たちはいなくなっていったんですね。こう思っている人たちが多くなると、こういう状態になっちゃうんだと。

そういえば、ナムコさんは職場の環境がいいという話をよく聞きました

小山 甘さはありましたよね。これは当時の求職者向けの広告ですけど、こんな感じでしたもん。「大学8年生に届いた採用通知」とか「集まれ前科者」とか。

(モニターに表示された当時のナムコの求人広告を見て)すごいなあ、こうなっていましたか。

小山 「Cが多くてもいいじゃないか」とかねえ。普通じゃない人集まってこーい、みたいな感じだったので。Cが多くても、なにか光ったモノがあればいいという意味だったと思うのですが。いつしか、わがまま集団な部分が強く残ってしまった。でも、これではやっていけないとなり、お客様の方を向いていこうと。

ということで、お客様の「わがままニーズ」を取り入れた商品とそうでない商品を分けて分析して。2002年くらいのことでしたね。

つまり、アーケードチームの考え方を変えたということですか。

小山 変えましたねえ、ガラリと。

でも、これほどドラスティックに変わるものですか。

小山 やっぱり役職をなくしたことは大きかったです。「誰に従うか」がなくなりましたから。自分で考えて、利益を出さない人はいなくなってくださいっていう組織になったので、誰も守ってくれなくなったんですね。

すごいショック療法ですね。

小山 成功報酬としてのインセンティブ制度も大きく働いたと思います。利益の一定比率をプロジェクトに還元するみたいな感じになっていて、ミニボーナス的なもので配分されるという。ただ、商品が出なければ配分されないので、開発に3年かけたらその間は一切なしという。


続きは第3回インタビュー
9月20日(水)公開予定

著者プロフィール:黒川文雄【インタビュー取材】

くろかわ・ふみお
1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDEにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHN Japan(現LINE・NHN PlayArt)にてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。株式会社ジェミニエンタテインメント代表。DMMオンラインサロンにて「オンラインサロン黒川塾」を展開中。
黒川塾主宰。ゲームコンテンツ、映像コンテンツなどプロデュース作多数。

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